キーワード解説

CS経営における“三大KPI”とは?「継続利用意向」の要点は理由にアリ

CS(顧客満足)担当者やマーケティング担当者が知っておきたい知識、キーワードをピックアップして紹介。それぞれの意味や仕組み、意義などについて、わかりやすく解説していきます。

今回のキーワード 「満足度」「他者推奨意向」「継続利用意向」
解説 日本能率協会コンサルティング(外部リンク)

1.顧客満足経営の狙いと指標の重要性

 顧客満足(Customer Satisfaction=CS/以下、CS)経営では、顧客の満足向上や不満削減といったことを課題に取り上げるわけですが、満足や不満足という評価を持っている人は、その企業やサービス等となんらかの接点を持ったことがある(=ここでは既存顧客と呼びます)と考えられます。その企業となんの接点も持ったことがない人は、満足も不満もなく、期待やイメージがあるだけです。したがって、CS経営の主な対象は既存顧客であり、狙いは既存顧客との関係強化が中心と考えられます。もちろん、CSは口コミやリコメンドといった「他者推奨」によって、新規顧客の獲得にも貢献します。しかし、その他者推奨も本人(=既存顧客)が満足していなければ起こりえません。こういったことから、既存顧客との関係を強化し、持続・安定成長を目指すのがCS経営の基本的な狙いといえます。

 CS経営の取り組みが失敗する1つの要因は、「指標管理をしないこと」です。「お客さまの満足度を高めよう!」という目的に対して、反対する人はほとんどいません。しかし、スローガンに留まり、精神論で終わってしまうと失敗します。

 古くから日本には、「顧客本位」や「お客さま第一主義」のような考え方がありました。企業でも、これらの言葉が企業理念や社是・社訓として語られているところが多く見られます。かつてCSの考え方が日本に持ち込まれた時、取り組みに失敗した企業に見られたのは、このスローガン、精神論で終わってしまい、顧客視点で自分たちを見つめ直すことをしなかったパターンです。「満足度の高い企業を目指す」と掲げながら、満足度を測定していない、という笑い話のようなこともしばしば見られました。

 お客さまを思うマインドは当然重要です。しかし、CSをスローガンや精神論で終わらせないために重要なことは、取り組み内容を具体化し、指標を設定してマネジメントすることなのです。

2.CS経営で見るべき重要指標は何か

 では、CS経営で見るべき重要な指標は何かというと、「満足度」、「継続利用意向」、「他者推奨意向」の3つが挙げられます。

 CSを経営の目標に掲げるのですから、「満足度」は最重要指標です。そして、持続・安定成長のためには、「継続利用意向」を押さえておく必要があります。たとえば、自社に対する満足度が変わらず高かったとしても、同じくらい満足度が高い競合が現れると、ブランドスイッチ(他社への乗り換え)される恐れがあります。したがって、満足度だけでなく、継続利用意向も重要な指標です。3つめは、「他者推奨意向」です。満足度の高い顧客が口コミやリコメンドの行動をとってくれると、新規顧客獲得が期待できます。NPS(R)(ネットプロモータースコア)は、この「他者推奨意向」を把握する指標です。

「満足度」、「継続利用意向」、「他者推奨意向」の3つが重要な指標ですが、一般的にこの3つの指標には相関関係が見られます。満足度という結果指標が高ければ、継続利用や他者推奨という顧客行動が期待できると考えられます。

3.「満足度」指標のポイント

 満足度には、「総合満足度」と「要素別満足度」の2つがあります。総合満足度は、何もかもひっくるめた総合的な満足度です。要素別満足度は、総合満足度を構成する要素の満足度です。レストランであれば、「味」、「接客」、「価格」、「提供時間」、「清潔さ」といったことが要素となります。

 理想としてはすべての要素で満点の満足度をとる、ということになりますが、現実問題として満足度を高めるには、ヒト・モノ・カネといった経営のリソースがかかります。そうなると、どの要素の満足度を高めるのか、選択することと集中させることが一般的です。そして、その重点化された要素に関する満足度が、重視すべき満足度指標となります。

満足度を重点化して高める考え方には、大きく2つあります。
【1】総合満足度と相関の高い要素満足度を高める
【2】自社の勝負どころの要素満足度を高める

【1】は統計的な分析、【2】は自社の意思です。どちらにしても重要なことは、すべての要素が平均点で、可もなく不可もない「特長のない企業」にしないということです。競合が多いと、没個性の企業は、誰にとってもそこそこ良いけれど、結局誰からも一番目に選ばれない、ということになりがちです。そういう意味では、CS向上の取り組みは、文字通り満足度を高めることであり、不満を削減して終わりということでは、競争力の源泉にはなりません。

 高い満足度を獲得するためにはターゲット顧客の選定も重要です。価値の多様化と言われる昨今では、ターゲット顧客を決めなければニーズに応えきれず、高い満足度を獲得することは難しくなっているからです。したがって、満足度評価もターゲット顧客の評価を重視しましょう。たとえば、低価格とスピードで勝負しようとしているのに、接客や清潔さを重視する価値観の顧客評価に振り回されないようにすることも意識してください。

 いずれにしても、満足度調査などで結果に一喜一憂するのではなく、自社が高い満足度を獲得すると決めた要素が目標値に達しているのか?を中心に、指標管理することがポイントです。満足度が最も低い、前回調査より下がった、他社より劣っている……といった視点での課題出しだけではなく、自社の目指す姿からの課題設定を重視していきましょう。

4.「継続利用意向」指標のポイント

「継続利用意向」で重要なことは、明確な評価や意思を伴った意向かどうか、ということです。「他社でも良いが、この企業でも良い」、「他社に切り替えるのが面倒だから、この企業との取り引きを続ける」といった、弱い関係では、強い競合が現れれば、すぐに離反されるリスクがあります。そのため、継続利用意向は「○○(競合他社)が隣に出店してきても当社を利用し続けるか」といった、より厳しい条件で確認することもできます。

 また、継続利用意向を妨げるのは、お客さま自身に理由があることも考えられます。満足度調査などでは、継続利用意向を確認するだけでなく、理由を確認することが重要です。

5.「他者推奨意向」指標のポイント

「他者推奨意向」はビジネスのジャンルによって、発生しやすかったり、逆に発生しづらかったりします。BtoCのサービス業のような、お客さま同士で話題になりやすいものは、他者推奨も起こりやすいでしょう。逆にBtoBのビジネスであれば、あまりそういう機会はないかもしれません。

 また、実際に顧客が推奨行動をとるかどうかは、いろいろなことが影響します。「(友人や恋人など)相手の価値観がわからないから薦めづらい」、「おせっかいだと思われたくない」、「(その商品や店舗、サービス等が)あまり有名になってほしくない」など、さまざまな心理が働きます。これらのことから、たとえ意向を問われたとしても、低めに回答してしまうことも考えられます。したがって、推奨意向の度合いだけでなく、推奨理由が自社の狙いに合っているかどうかの確認は重要です。

 CSの取り組みを精神論で終わらせず、目標のないまま船出する航海にしないためには、指標を設定し、マネジメントすることで成果を出していきましょう。一方で、会社として「CSの取り組み=指標で管理すること」だけにならないように注意してください。CSは管理主義ではうまくいきません。言うまでもなく、CSに関連する指標をいかに高めるか、その取り組みこそが重要なのです。そして、CSの推進部門は、その取り組みを管理ではなく支援しましょう。

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※NPS(R)は、ベイン・アンド・カンパニー、フレッド・ライクヘルド、サトメトリックス・システムズの登録商標です。