消費者ベネフィット=来店意向の明確化でブランド戦略を再構築
かつての丸亀製麺は、季節ごとの従来商品のフェアに頼ったマーケティングが中心で、5年前からTVCMでの訴求を開始し2年前まではそれで約10%ほど売上を伸ばしていたものの徐々に低下し、ついにはマイナスに陥った。それだけでは客数獲得が不十分であり、中長期的にブランドを育てる戦略にも欠けていた。そこから前述のようなマーケティング戦略を用いたトリドールメソッドの導入により、16ヶ月連続でマイナスだった客数を回復させている。
具体的にそこで行われたブランド戦略の1つは、消費者ベネフィット=来店意向の明確化と最大化だ。消費者が丸亀製麺を選ぶ理由を「すべての店で粉から麺を作っている」という事実と、そこから生まれる「もちもち」した丸亀食感に定め、その新ブランド戦略に経営資源を投下。その結果、コンセプト調査では消費者の来店意向が1.7倍に上がったという。
そうしたこれまでの取り組みを総括して南雲氏は、「五感(感性)マーケティング」「数学マーケティング」「顧客体験」を掛け合わせた、右脳と左脳を駆使する新たなマーケティングにより、ブランドが選ばれる理由を解き明かして、ブランド戦略を再構築。そして、その選ばれる確率を上げるドライバーへ経営資源を集中投下させることで、業績回復のエンジンとしてきたと語る。
withコロナ時代のブランド戦略の見直し「いかに信頼を得ていくか」
今年は丸亀製麺にとって創業20年目の記念イヤーだが、世の中は新型コロナウイルス感染症の流行という非常事態を迎えている。講演会で南雲氏は、コロナ禍による戦略の見直しにも言及した。今までは「いかに強みを打ち出していくか」というマーケティングだったが、withコロナの時代においては「いかに信頼を得ていくか」に転換している。
そこで設定するのは次の4つ。
1.(相対的な)安心認知をいち早く獲得
2.テイクアウトへの参入
3.「すべての店舗で粉からつくる」のさらなる認知拡大
4.徹底的に丸亀体験の強化
コロナ禍において、消費者の意識の上位に安全、安心というキーワードが上がってくるなか、他社に先駆けてテレビCMで安心感をアピール。外食市場の多くの店のなかで丸亀製麺は新型コロナウイルス対策をちゃんと実施していて相対的に安心であるという認知の獲得に動いた。また、ブランドの味を損なわない専用容器を使ったテイクアウトもスタート。その認知も想定より早いペースで上がっている。その結果、主力のロードサイド店舗では、すでに前年同程度にまで売上が回復しているという。
先の見えないwithコロナの時代を生き抜くために、同社では社会情勢によって「通常」「ポジティブ」「ネガティブ」「自粛要請(短期)」「自粛要請(長期)」を想定して、常にあらゆる事態に対応できるようにしている。消費者の安心と信頼を得るための努力を惜しまず、次なる時代におけるさらなる丸亀製麺の拡大を見据えている。
(文/武井保之)