特集

ガンバ大阪、“ファン化”を加速する「デジタル戦略」の裏側

顧客の本質的ニーズを見つめ直し、5つの年間シリーズイベントを展開

昨年の『GAMBA EXPO 2019』では、木梨憲武がデザインした記念ユニフォームを配布した

昨年の『GAMBA EXPO 2019』では、木梨憲武がデザインした記念ユニフォームを配布した

 次にもう1つの取り組みである「顧客ニーズの把握」について。スポーツ業界では「チームが勝たないとお客さんは来ない」ということが、まことしやかに言われてきた。竹井氏も半信半疑ながら、実際にそのように感じることもあったという。しかし、JリーグIDを活用したマーケティングに注力するようになってからは、本質的ニーズは「家族や友だちなどの大切な人と楽しい時間を過ごすこと」にあるのでは?という考えに至り、レジャー感覚で楽しんでもらえるような5つの年間シリーズイベントを組んだ。

 もちろん、ここでも顧客データを活用。シーズン序盤は全顧客に向けて。レジャーシーズンであるゴールデンウィークから夏にかけては、新規〜ライト層を中心に。秋口の終盤戦は、ミドル・コア層を中心にしながら新規顧客のリピート化を促進するような取り組みを。単に何か楽しいことをやっていれば良いだろうということではなく、意図を持ってイベントを配置した。

 昨年5月4日のFC東京戦では、「働くクルマ大集合」と銘打って高所作業車や消防車に無料で乗ることができるイベントを催したところ、集客目標3万人に対し3万4000人を動員。来場者全員に無料でユニフォームを配布するシーズン終盤の企画『GAMBA EXPO』は、17年から3年連続でチケットが完売した。

「『GAMBA EXPO』は、今でこそミドル・コア層に向けて自信を持って行っているイベントですが、実はスタート当初は新規来場者を増やすための施策としてスタートしているんです(苦笑)。データ分析をしてみると、ファミリー向けのイベントでは、たしかに新規・ライト層のお客さまが多かったんですが、『GAMBA EXPO』に関してはミドル層がものすごく多かった。後々、冷静になって考えてみると、そもそもガンバのファンでもない人がユニフォームを欲しいとは思わないよな…と」(竹井氏)

 イベントごとに傾向を捉えられるようになったことで、告知や広告方法も変化。正しい施策を打つことは、費用対効果やコンバージョンの向上につながっているという。ガンバ大阪の成功事例は、数字(顧客)を見える化し分析すること、そして“思い込み”を排除することの重要性を再確認させてくれる。

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