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「勉強しまっせ」徳井優の“再登場”も話題! サカイ引越センター、一貫したCM戦略とともに成長した50年/田島哲康社長インタビュー【後編】

「勉強しまっせ♪引越のサカイ」――。サカイ引越センターといえば、俳優・徳井優が漫才師や神主、パンチパーマ頭の美容師など、ユニークなキャラクターに扮して、リズムに合わせて社名を呼ぶというコミカルなCMを思い浮かべる人も多いのではないだろうか。同社は2020年11月に創業50周年を迎えたが、引越業界最大手となったその成長の裏には、一貫したストーリーに基づくCM戦略があった。【トップの理由】後編では、代表取締役社長・田島哲康氏にCMとともに歩んだ50年間を振り返ってもらった。

1.サービスはまず知ってもらうことが重要、あのコミカルなCMは“子どもウケ”を意識して作られた

サカイ引越センター、2021年1月4日公開の新CM「変わらぬモノ」篇より(「まごころパンダ」シリーズ 第4話)

サカイ引越センター、2021年1月4日公開の新CM「変わらぬモノ」篇より(「まごころパンダ」シリーズ 第4話)

――コテコテの関西弁とリズムに合わせて「勉強しまっせ♪引越のサカイ」を連呼するCMは強烈なインパクトを残し、サカイ引越センターの知名度を一気に押し上げました。今でも語り継がれる名CMはどのようにして生まれたのでしょうか?
田島さん 実は、これまでの数々のCMは、すべて創業者の会長(田島哲康氏の父・憲一郎氏)が1人で考えて決めていたんです。1人で広告代理店と打ち合わせをし、要望を伝えて絵コンテを作ってもらい、社内の意見を聞きつつも最終ジャッジはすべて会長。そもそもなぜテレビCM放送を始めたかというと、引越は利用してみないと良さがわからないものだから。まずは、弊社の名前を知ってもらおう、覚えてもらおう、と。認知度を上げるのが目的なので、何度も社名を伝えるCMに仕立ててもらいました。

――チョビ髭でメガネ姿の派手な漫才師が「勉強しまっせ」と歌ったり、「サカイ、安い、仕事きっちり」と繰り返したり。コントのようなユニークなCMは子ども心にも強烈で、強く印象に残っている人も多いです。
田島さん そうなんです、あのCMはお子さまがポイントなんです。CMが面白いと子どもさんがマネをするでしょう? 頭に残る印象的なメロディ、キャッチ―なフレーズ、コミカルな動き。この3点セットで、観ているお子さんたちにマネしてもらえたら大人も自然と覚えて下さるだろう、と。これが会長の戦略でした。

  • サカイ引越センターのトラックには、ブランドキャラクターの「まごころパンダ」が表示されている

    サカイ引越センターのトラックには、ブランドキャラクターの「まごころパンダ」が表示されている

 弊社のキャラクターがパンダ(現在の名称は「まごころパンダ」)なのも実はお子さんを意識しています。創業直後の1972年に東京の恩賜上野動物園にパンダのランランとカンカンが来園して人気を集めていたことから、パンダをキャラクターにしたら、お子さんが気に入ってくれるのでは、と。街で弊社のトラックを見かけて「パンダのトラック!」と喜んでくださるお子さんもいらっしゃいます。大人に訴求するよりも、子どもさんにインパクトを残したほうが大人も注目してくれるんです。

――フレーズも印象的ですが、「勉強しまっせ」は関西独自の商い用語ですよね?
田島さん 関西では「値引きして」という意味で「勉強してや〜」とよく言っていたんですよ。「勉強しまっせ」のフレーズは、広告代理店側のアイデアだったと記憶していますが、チョイスしたのは会長。サカイ引越センターという企業名をアピールしつつ、大阪の会社でもあり、安価でサービスを提供する会社だということもわかる。これらを短いCMの中で上手く表現できたと思います。「勉強しまっせ」は本当にウケがよくて、営業のメンバーは得意先で「もっと勉強してやー」と言われていたみたいです(笑)

2.CMを機にブレイクした徳井優は戦友、今もなお続く付き合い

サカイ引越センター・代表取締役社長の田島哲康さん

サカイ引越センター・代表取締役社長の田島哲康さん

――そして、サカイ引越センターのCMといえば、俳優の徳井優さんです。徳井さんは1998年から2005年まで一貫してCMキャラクターを務められました。関西人ならではの絶妙な間の取り方やノリが見事的中した形ですが、徳井さんを起用した理由は?
田島さん 企画がメインだったので、知名度如何ではなく、イメージに合う俳優さんにお願いしました。でも、このCMと共に、徳井さんがどんどん活躍されて、私たちもとても嬉しいですし、本当に感謝しています。

――徳井さんは、今では名バイプレイヤーとして、大河ドラマやNHKの朝ドラをはじめ、数々の作品に出演されていますよね。
田島さん 弊社は徳井さんのおかげで有名になり、お互いに成長できたことがうれしいですね。戦友みたいなものというか。徳井さんの舞台公演のときは、副会長が“楽屋のれん”を出させていただいたり、差し入れを持って行ったりさせていただいていました。

――そして、50周年を迎えるにあたり、今放送中のCMシリーズでは、徳井さんが16年ぶりに再び登場。最後の1シーンの出番だけでも(2020年11月時点)、SNSでは「あの徳井さんが!」と盛り上がりを見せていました。
田島さん 50周年の節目を迎えるにあたりサカイ引越センターの名を強く印象付けて下さった徳井さんはやはり外せないだろう、となりました復活を望む声も多く寄せられていましたし。創業者の会長・副会長(田島哲康氏の母・治子氏)共に今は亡くなっていますが、撮影現場では徳井さんからも「ご縁をいただき、お2人には感謝しています」とのお言葉をいただきました。

徳井優さんも登場! サカイ引越センター新CM「変わらぬモノ」篇

3.サカイCMの成功は関西芸人たちのおかげ? 一度目は失敗に終わった全国進出

――サカイ引越センターにとって、CMが果たした役割はかなり大きかったのでは?
田島さん もちろんです。サカイと書かれたエレベーターが開くと、徳井さんが夫婦漫才のようにエレベーターから登場してきて、「勉強しまっせ♪引越のサカイ」と歌うCMを流したのは1993年。CMデータバンクでCM好感度1位にも輝き、一気に弊社の知名度が上がりました。全国に支店を広げはじめた頃で、おかげさまで売上が一気に伸びました。

 でも実は、その前に全国にCM進出して一度失敗しているんです。コテコテの関西ノリのCMが、全国区では受け入れられずに総スカンを食らって(笑)。でもその後、関西の芸人さんたちが活躍の幅を関東に広げ、関西弁が東京でも受け入れられはじめると、会長が「よし、今ならやれる。もう一度、全国区で出すぞ!」と。CMに関しても、時流を読むセンスがありましたね。

4.カギは“会社のストーリー”を意識したCM戦略 「まごころ」を伝えるCMへの転換でも売上が再び急増

――2007年に東証一部上場。CMも2006年からガラリとテイストを変え、コミカルさを排除し、品質をうたう優等生的なCMに切り替わりました。この狙いは?
田島さん これも前会長の考えです。徳井さんのCMのおかげで認知度が上がり、新卒採用で「サカイ引越センターを知っていますか?」と尋ねると、「知っています」と。ところが、「サカイ引越センターに入社したいですか?」となると反応が悪かった。弊社は創業当時から「まごころ」をキーワードに、技術向上や安全輸送に取り組んできたのですが、その品質の高さを訴求できずにいた。だから、次はこのサカイ品質をアピールしていこうとなったのです。

――売り上げに変化はありましたか?
田島さん CM自体のインパクトは減りましたが、受注件数がグッと伸びましたね。徳井さんのコミカルなCMで伸び、品質を伝えるCMでまた伸びた。我々の成長はCMとともにあると言っても過言ではありません。2020年に50周年を迎え、今はストーリー仕立てのCMをオンエアしています。

 これまでのCMを振り返ると、まずは認知度を上げるために強烈なインパクトを持たせ、その後に品質を訴求する。そして、今はドラマ仕立ての興味を引くストーリーの中で「まごころこめておつきあい」という姿勢をアピールしています。CM展開も、最初にも申し上げましたが、形のないサービスだからこそ、より、何をどう伝えるべきかが大事だと考えています

  • 俳優の板橋駿谷が出演、新CM「変わらぬモノ」篇より

    俳優の板橋駿谷が出演、新CM「変わらぬモノ」篇より

  • 俳優の板橋駿谷が出演、新CM「変わらぬモノ」篇より

    俳優の板橋駿谷が出演、新CM「変わらぬモノ」篇より

――今は俳優の板橋駿谷さんと桃月なしこさんと「まごころパンダ」くんが、先輩・後輩として、引越作業を通じて成長していくドラマ仕立てになっています。徳井さんのように、“ブレイク前夜”の方をブッキングする傾向にありますね。
田島さん 嬉しいことに、お2人はこの1年でグッと露出が増えてこられています。板橋さんはNHK朝ドラ『なつぞら』で注目され、今年は大河ドラマへの出演も決まっています。桃月さんも数々の雑誌の表紙を飾ると共に、女優として活躍の幅を広げられています。実は、テレビCMを始めた頃から、広告宣伝費の額はほとんど変わっていません。当初は売上高の10%を超える厳しい時代もありましたが、今は3%を切っています。このペースで、最大限に効果のあるCMを送り出していきたいですね。

――50周年CMで、徳井さんがどう絡むのかも気になります。
田島さん 徳井さんの「仕事きっちり」というフレーズを初めて聞く方にはぜひ覚えていただきたいですし、かつてのCMをご存じの方には、なつかしみつつ、楽しんで見ていただけると嬉しいです。今後も、お客さまのご期待に添う「まごころ」こめたお引越でお客さまの支持をいただけるよう、また、株主さま、従業員のためにも役立てる「まごころ経営」を推進して参ります。

(インタビュー・文/若尾礼子)

【前編】
サカイ引越センター、成長の秘密は「まごころ経営」の実践にあり

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プロフィール

田島哲康(株式会社サカイ引越センター 代表取締役社長)
たじま・てつやす●1966年、大阪府生まれ。大阪府堺市で引越会社を立ち上げた創業者夫妻・田島憲一郎氏と治子氏の長男として生まれる。大学卒業後、1991年、サカイ引越センターに入社。1993年に取締役、2000年に常務取締役、2008年に取締役副社長を経て、2011年より現職。