トップの理由

サカイ引越センター、成長の秘密は「まごころ経営」の実践にあり

サカイ引越センター・代表取締役社長の田島哲康 氏

「オリコン顧客満足度調査」の各種ランキングで1位を獲得した企業のキーマンへのインタビュー企画【トップの理由】。今回は2回にわたって、2021年 引越し会社ランキングで1位に輝いた、サカイ引越センター・代表取締役社長の田島哲康氏にご登場いただく。13年ぶりに首位を奪還したサカイ引越センターは、売上高も取扱引越件数もトップをひた走る業界のリーディングカンパニーだ。前編では、その成長の秘訣や高い顧客満足度を実現できている理由について話を聞いた。

>引越し会社ランキングの詳細はこちら(外部リンク)

 サカイ引越センターは、引越専業としては唯一の東証一部上場企業だ。業績においても2020年3月期(2019年4月1日〜2020年3月31日)の(サカイ引越センター単体の)売上高898億円、取扱引越件数約78万件はともに業界1位。名実ともに引越業界をけん引している。

 同社の始まりは1971年、大阪府堺市で田島憲一郎氏と治子氏の夫妻が2台の中古トラックで始めた小さな運送会社だ。当時、堺市に開発された泉北ニュータウンの発展にヒントを得て、引越ビジネスをスタートさせ、急成長を遂げた。1993年に全国で放送されたエレベーターを舞台にした「べんきょうしまっせ、引越のサカイ」のCMを機に認知度は大きく向上し、1996年には大証二部上場。2006年には東証二部に、その翌年の2007年には東証・大証共に一部でも上場を果たした。

 2011年、田島哲康氏が社長に就任。2014年3月期に業界で売上高No.1を達成して以来、その座を守り続けている。その成長を支えているのは、先代から続く「まごころ」を大切にした経営方針だ。

1.「まごころ」ファーストの視点から、業界初のサービスが次々と登場

サカイ引越センターのトラック

 サカイ引越センターの成長の秘密、それは「まごころ」というキーワードに集約される。その言葉に込められた思いについて、田島氏はこう述懐する。

「会長(憲一郎氏)、副会長(治子氏)は、引越業は『運送業』でなく、『サービス業』だと常々言ってこられました。運ぶのは単なる『モノ』ではない。家具の1つひとつが、お客さまの思い出が詰まっている『宝物』なのだ、と。我々は、今もこうした先代の理念を第一に考えることで一貫しています」(田島氏)

 同社が生み出した業界初のサービスも「まごころこめて大切なご家財を運ぶ」という視点から生み出されたものだ。たとえば、家具を保護するためのキルティングの保護資材や荷造り用段ボールの無料提供は、業界では他社に先駆けてスタートさせた。

 安全輸送についても同様だ。現在、3000台を超える車両は、責任を持って管理するため、お客さまの“宝物”を安全に大切に運ぶため、細心の注意を払う。ドライバーが、いつ、どこで、どのような運転をしたかを記録する「セイフティレコーダ」や追突防止システム「モービルアイ」など、「安全のためには経費を惜しまない」といち早く全車両に搭載。

 さらに、自動車教習所さながらの実習コースも用意し、随時、ドライバーの運転技術の向上に取り組んでいるというから驚きだ。直接、消費者の目に触れない運搬にも最大限の注意を払うことで、結果的に従業員の意識を高め、それが消費者の評価へとつながっているのだろう。

 また、CS(顧客満足)活動の取り組みも早く、1984年には業界で初めて顧客にアンケートはがきを配布・回収し、サービスを改善する試みを行っている。現在はデータベース化され、全社で情報を共有している。「全社会議ではこうした情報に基づいて取り組みの改善を指示すると同時に、お客さまからいただいた要望を新たなサービスのヒントにしています」(田島氏)といい、先代から受け継ぐ「まごころ経営」を進化させながら成長を続けている。

2.マイスター制度、社内技術コンテスト… 引越のプロを育てる充実した研修制度

「本社および全国190超の全支社で品質マネジメントシステムの国際規格ISO9001を継続して取得。これは、日本全国どの支社をご利用いただいても、同じ品質のサービスを提供できるという証明です」と田島氏が話すように、同社の基盤は品質の高さにある。

 従業員の技術力を磨くための取り組みは抜かりなく、その1つに「マイスター制度」がある。マイスター試験を受けるためには、まず試験に合格して技術講師となり、講師として1年以上の指導経験が必要であり、その後はさらに試験に合格しなければならない。難度の高い資格で、同社のマイスターは現在わずか3人。

サカイ引越センターの「マイスター制度」

「先代がドイツを視察したときに職人の技術の高さに驚いたことがきっかけで作った制度で、梱包・運搬技術から応対マナーや知識まで、すべてにおいて最高の技術を持ち合わせたプロ中のプロのみを認定しています。こうした目指すべき目標があるからこそ、従業員も腕に磨きをかけていくのです」(田島氏)

 ほかにも、「専務杯」と称する引越サービスコンテストがあり、優勝賞金100万円をかけて、参加者は地区予選から全国大会へと駒を進め、引越技術と接客サービスを競い合っている。

 同社の社員教育は徹底しており、技術向上のために建てられた家、研修施設も全国5ヶ所に設置。法定上最も厳しい基準で建てられた研修棟には、法定基準ギリギリの狭い階段や180度ターンが必要な踊り場が用意され、過酷な条件のなかで従業員は日々研鑽を積んでいる。「我々の強さは現場があってこそ。お客さまの支持をなくした会社は続かない。こうした引越技術の高さがあるからこそ、お客さまから高く評価されていると感じています」(田島氏)

  • 本社研修センター

    本社研修センター

  • 研修中の様子

    研修中の様子

  • 研修棟には、法定基準ギリギリの狭い階段などを用意。

    研修棟には、法定基準ギリギリの狭い階段などを用意(写真は、越谷研修センター)

  • 過酷な条件のなかで従業員たちは日々研鑽を積んでいる(写真は、越谷研修センター)

    過酷な条件のなかで従業員たちは日々研鑽を積んでいる(写真は、越谷研修センター)

 一般的に3Kと思われがちな引越業界だが、従業員の満足度を高めるための企業努力も欠かさない。「たとえば、営業・現業スタッフにタブレットを配布して業務を効率化し、データと日報を送れば営業マンも直行直帰できるように整備。インセンティブ制度や、持ち株制度も導入しています」と田島氏。また、福利厚生制度の中には、配偶者誕生日祝金制度というものがあり、社員が頑張って働けるのは支えて下さるご家族があってこそという思いから配偶者の誕生日には祝金を贈っているという(独身者にも祝金あり)。

 その一方で、家族経営的な温かさも残る。創業者で会長の憲一郎氏は、繁忙期になるとカレーやおでんを作って炊き出しをしたという。「会長はお正月には毎日お餅を焼いて振る舞っていました。こうした家族的な温かさも大切にしていきたいですね」(田島氏)