ニュース

「実世界データ演習」データ提供から得られた知見とアイデア

5.課題に取り組んだ「チームB」の分析結果

チームB
◆使用したデータ:「プロバイダ」に関する調査の2016年のデータと、全体のデータを使って分析

<庄司ボイス>プロバイダのデータは、地域によってサービス事業者が異なるため、チームAが採用したネット銀行のデータと異なる結果が出るかもしれないなと思いました。


<提供した課題解決に向けて行った分析と結果>

◆その1.総合満足度得点の信頼性を高めるため、パーソナリティが総合満足度へ与える影響を分析

サービスについて、「良い印象を持つパーソナリティ」と「悪い印象を持つパーソナリティ」に分類して見ていくと…

【結論】プロバイダのデータにおいては、「良い印象を持つパーソナリティ」は、総合満足度と正の相関があり、「悪い印象を持つパーソナリティ」は、総合満足度と相関関係が見られなかった。

「チームB」の発表資料より

「チームB」の発表資料より

<庄司ボイス>ここで言うパーソナリティの分類は、簡単に言えば、「良いクチコミをするか、しないか」での分類です。オリコン顧客満足度調査のデータの中には、該当のサービスについて、たとえば「友人・知人に利用中のサービスについて良い話をするか」ということも聴取しています。この情報から分類し、総合満足度との相関関係を見ています。こうした形でユーザーを分類してみるという視点がこれまでなかったため、新しい示唆となりました。

◆その2.信頼性や有用性を示すため、総合満足度の特徴を捉える
顧客満足概念の構成要素を、「本質機能=マストな機能」と「表層機能=あれば嬉しい機能」と分類し、どちらが総合満足度に寄与するかを分析したところ…

【結論】プロバイダのデータにおいては、総合満足度には「表層機能」がより大きく寄与している。また、総合満足度の向上には「本質機能の充実」が重要だという傾向が見られた。

「チームB」の発表資料より

「チームB」の発表資料より

<庄司ボイス>いきなりお題を与えられて、「本質機能」と「表層機能」に分けて考えようという発想をされていたことに驚きました。同時にそうした切り口で分析をしてみたことがなかったなと、わが身を反省しています。簡単に説明すると、「本質機能」とはサービスとして当たり前になければならない要素で、「表層機能」とは差別化要因となる要素です。この検証の中では、チームBの方々が独自に振り分けていました。サービス展開をしようと思うと、つい表層機能に目を向けてしまいがちですが、本質機能が最低水準に達しているか否かが、重要だという示唆になりました。

6.「オリコン顧客満足度調査」をより良くしていくためのアイデア

「チームA」のみなさんは、弊社から提供したデータをフルに活用して、対する「チームB」のみなさんは、仮説を立てて考察しながら分析してくださり、チームによって異なるアプローチが見られた点が非常に興味深かったです。

 今回、実世界データ演習に参加した受講生からは、「講義などを受けているだけでは、各種ツールや統計的な思考が実世界でどのように活かしていけるのか見えてこなかったのですが、実際に実世界のデータを解析していくことで『あ、あの時学んだことが、こうやって役に立つんだ』と実感できて、非常に面白かったです」「私は大学院生ですが、通常の授業でデータを扱う時とは、向き合うプロセスが異なることを実感しました。実世界のデータは何が問題なのかという“What's the problem?”の部分が非自明なので、そこの部分を考えることが非常に重要だと思いました」といった感想が。

 また、みなさんからは、オリコン顧客満足度調査をより良くしていくためのアドバイスとして、「SDGsに関する設問があると、その企業の貢献度が“第三者視点”で見えるので、データの有用性が高まるのではないかと思いました」「アンケートの質を担保するためにも、設問数をもう少し減らしても良いのではないかと思いました」「アンケートの回答時間をまとめていれば、極端に短い人は排除するなどデータ補正をする上で役立つのではないかと思いました」など、有意義なコメントをたくさんいただき、今回の取り組みは弊社としても大変、実りの多いものとなりました。

 名古屋大学では、今年も「実践データサイエンティスト育成プログラム」を実施。もちろん、「実世界データ演習」もメニューの中に組み込まれています。本年度からは、社会人は有償での受講となりますが、今後のビジネスを創造するために役立つ知識が、きっとそこで学べるはずです。

―インフォメーション―
「2020年度 実践データサイエンティスト育成プログラム」について
●5月7日(木)〜20日(水):出願受付
●5月下旬:書類審査
●5月28日(木)、29日(金):面接審査 ※ビデオ受講のみのコース希望の方は対象外
●6月3日(水):合格発表
●7月28日(火)18時〜:開校式・オリエンテーション・ovl説明(遠隔説明会)
●8月3日(月)〜2021年2月:受講

>「実践データサイエンティスト育成プログラム」ホームページ(外部リンク)
>「2020年度 実践データサイエンティスト育成プログラム」パンフレット(外部リンク)