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「データサイエンス」が今後のビジネスの要となる理由

 企業が事業展開した結果で得られた膨大なデータ。これを社会に還元していく流れが増えつつあります。最近では新型コロナウイルスの感染拡大に伴い、有志企業がさまざまな情報を公開したり、データを可視化したりしたことが話題となりました。

 オリコン顧客満足度調査を展開するoricon MEでは、大学や公的研究機関を対象に「オリコン顧客満足度ランキング」作成のために集めた調査データの無償提供を2019年6月より開始しました。同年秋には、文部科学省の「超スマート社会の実現に向けたデータサイエンティスト育成事業」の一環として、名古屋大学等が実施した「実践データサイエンティスト育成プログラム(実世界データ演習)」に参画し、データと課題を提供。

 そして今年3月には、その課題に対する“分析結果”が受講者から発表されました。前編では、本取り組みと現代ビジネスの要となるデータ分析について、後編では、受講生によって解明された内容の一部をご紹介します。

1.ビジネスシーンで存在感を増すデータサイエンス 一方、日本では導入が出遅れ気味

 そもそも、「データサイエンス」とは、統計学や数学、計算機科学などと関連し、さまざまなデータから見解や法則、関連性を導き出そうとする研究分野のこと。そして、これらの研究者および技術者のことを、「データサイエンティスト」と呼びます。ビッグデータの時代と言われる今、ビジネスにおいてその存在感は年々大きなものに。

 なぜなら、ライフスタイルの変容等によって顧客ニーズが多様化するなか、膨大なデータの中に潜んでいる傾向を見極めていくデータサイエンティストは、商品やサービス改善、また業務改善など、あらゆる意思決定の局面で力を発揮することになるからです。それゆえに、統計学等の専門的な技術に加え、各市場の動向やトレンドなど、幅広い知識が求められます。

 このデータサイエンス、海外では、早いうちから積極的にビジネスに反映されていますが、ここ日本では、ビジネスへの導入も人材育成も海外に比べると、少々出遅れがちなんだとか。「日本でなかなかデータサイエンスが普及していかない要因の1つは、ビジネスにおける“オールドスタイル”が今なお通用してしまっていることだと思います」と語るのは、名古屋大学 数理・データ科学教育研究センター 産学連携教育部門の中岩浩巳さん。

名古屋大学 数理・データ科学教育研究センター 産学連携教育部門の中岩浩巳さん(C)oricon ME inc.

名古屋大学 数理・データ科学教育研究センター 産学連携教育部門の中岩浩巳さん(C)oricon ME inc.

「アメリカのように、そもそもこういった新しい技術を構築してきた国は別として、日本のように昔から発展している国というのは、“オールドスタイル”のビジネスにとらわれがちです。日本にはそれなりの市場規模があり、技術もあるため、国内だけでビジネスが成り立つ時代が長く続いているので無理もありません。しかし、現在は技術革新に加え、国内では少子高齢化が進み、すっかりグローバルビジネスの時代。

 中国や東南アジアなどの国々では、以前よりグローバルを意識して最先端の技術を学び、取り入れながらビジネスを展開してきたので、それが成長に反映されている。以前は日本が経済支援をしていた国が、実は技術的には圧倒的に進んでいる…という状況になりつつあるので、引き離されないためにもデータサイエンスやデータ活用について少しでも理解したり、人材育成する環境を作っていったりすることが大切です。

 よく、「AIが普及するとデータサイエンスの職業はなくなるんじゃない?」といった質問をされるのですが、むしろ逆。AIにまかせられる細かな部分はまかせて、我々は“思考”に専念する。技術をうまく活用しなければ、おそらく勝ち残っていくことはできないのではないかと思います」(中岩さん)