「実世界データ演習」データ提供から得られた知見とアイデア

 前編では、ビジネスにおいてデータサイエンスを活用することが、満足度の高いサービス・商品づくりにつながること。そして、名古屋大学が行う「実践データサイエンティスト育成プログラム」について解説してきました。後編では、同プログラムの目玉である「実世界データ演習」に、オリコン顧客満足度調査がデータを提供させていただいた背景から、この取り組みに何を期待し、実際にどのような成果があったのかを、オリコン顧客満足度調査事業本部長の庄司知がご紹介します。

1.課題を指定し、短期間でアウトプットが得られる「実世界データ演習」

 前編の冒頭でも記したように、オリコンでは2019年6月より、国立情報学研究所(National Institute of Informatics=NII)を通して、顧客満足度のデータを学術利用目的で無償開放しています。権威ある機関のリポジトリ(データ等の保管場所)の中に含んでいただいたことは大変光栄に思っています。ただ、研究者が自ら研究したいテーマにとって該当するデータでなければ、私たちの顧客満足度データは、いわば数ある素材の1つにすぎません。一方で、昨秋にお声がけいただいた名古屋大学さまの「実世界データ演習」は、データを提供する企業が課題を指定することができ、受講者が提出期日までに成果物を出すというものになっていました。つまり、私たち企業側が常々考えていた仮説を検証してもらうことが可能だったのです。

 事業活動のなかで得られたデータを、データサイエンティスト教育の素材として組み込んでいただき、かつ自社にとっても短期間で示唆が得られそうな、またとない機会をいただいたので、ぜひにと名乗りを上げさせていただきました。もし、こうしたデータ関連のことで悩まれている方がいたら、参考にしていただけると幸いです。

2.社会人と大学院生“混合”のチームが、オリコンの課題に挑戦

 今回、オリコン顧客満足度調査からは、以下のデータと4つのテーマを課題として提供しました。これらの課題に対し、2つのチームに取り組んでいただき、その結果の報告会が3月に行われました(ここでは、【チームA】、【チームB】として紹介)。実際に2チームが課題に取り組む期間は約3ヶ月。「実世界データ演習」の受講生には学生もいらっしゃったのですが、社会人で仕事をしながら参加されている方も多く、正直「どのくらいのアウトプットがあるのだろう」と不安でした。ですが、報告会でプレゼンを受けて、「ここまで分析できるのか!」と驚きました。なお、今回提供したデータと課題は以下です。

3.オリコンから提供したデータと課題

【提供したデータ】
以下、オリコン顧客満足度調査の5カテゴリ8業種における、過去3年分(2016年〜2018年)の調査データ

●マネー:「ネット銀行」
●トラベル:「旅行比較サイト」
●通信:「格安SIM」、「プロバイダ」
●住宅:「ハウスメーカー」、「新築分譲マンション」、「賃貸情報店舗」
●生活:「レンタカー」

【提供した課題】
1)総合満足度得点の信頼性を高めるには、どんな補正が考えられるか
2)前年までのデータから、翌年の総合満足度を予測する
3)前年までのデータから、急上昇企業・ジャンルを見つける
4)満足度データ(CS、NPS(R)、ブランド認知、企業の信頼性などの回答も含む)と、企業の数値(株価、売上、利益など)との関係性を示せるか

 指定した課題の中でも、新たなヒントが得られたら嬉しいと考えたのが「補正」に関する課題です。過去に調査・発表したランキングの中で、大阪や九州を地盤とした企業が1位になることがありました。これについては個人的に、地域によって10点満点の得点の付け方が違うのではないか、という疑問を持っていました。行動経済学の分野でノーベル経済学賞を受賞したダニエル・カーネマン教授は、「回答者が用意された数値レベルを同じように使うとは限らない」と述べています。つまり、AさんとBさんが同じ「10点満点中8点」を付けたとしても、その価値は違う可能性があるというのです。このような仮説を、今回の取り組みで検証できないかどうかを期待して課題としました。

 次からは、その検証内容について、成果の一部とそれに対してのコメントを書かせていただきました。

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