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「実世界データ演習」データ提供から得られた知見とアイデア

4.課題に取り組んだ「チームA」の分析結果

チームA
◆使用したデータ:「ネット銀行」に関する調査

<庄司ボイス>調査対象企業には上場企業が多く、情報取得が容易で、多くの数値が入手可能でした。かつネット上のサービスなので、どの地域のユーザーにも、いずれのサービスが利用可能。今回の課題に対して、検証がしやすいデータだというのは納得です。


<提供した課題解決に向けて行った分析と結果>

◆その1.総合満足度得点の信頼性を高めるために、総合満足度は企業要因だけで決まるものなのか?を分析

さまざまな満足度に関する変数を選択し、重回帰分析などを行った結果…

【結論1】ネット銀行のデータにおいては、都道府県によって、平均総合満足度に差がないとは言えないことがわかった(全体的に見て、宮崎県は高く、岩手県は低かった)。
【結論2】ネット銀行のデータにおいては、世代、結婚の有無など、アンケート回答者の特性と総合満足度との関係は薄かった。

「チームA」の発表資料より

「チームA」の発表資料より

<庄司ボイス>検証結果からは、なんとなく西と南側のほうが得点が高いのかなという印象なのですが、ネット銀行のサンプルからの検証では有意とは言えないという結果でした。ただ、岩手県は得点が低く、宮崎県は得点が高いということが「言えなくもない」ようです。ネット銀行以外の調査データでも、同様の結果が出れば傾向があると言えるかもしれません。

◆その2.総合満足度の決定要因が何かを探るため、総合満足度と項目別満足度の関連性を分析

多重共線性(重回帰分析において説明変数間に強い相関が見られること)の問題を解決しながら、重回帰分析を行った結果(目的変数を総合満足度、説明変数を項目別満足度として設定)…

【結論】ネット銀行のデータにおいては、商品(コンテンツ)そのものの良さやキャンペーンの充実性よりも、会社経営の信頼性やサイトのユーザビリティの高さのほうが、総合満足度に影響していることがわかった。

「チームA」の発表資料より

「チームA」の発表資料より

<庄司ボイス>オリコン顧客満足度調査では、サービスを直感的に10点満点で評価する「総合満足度」と、サービスの評価軸を細かく分解して評価する「評価項目」とを分けています。この評価項目は調査によっては30以上あります。今回の検証ではより特徴のあるエッセンスを抽出するため、次元削減を行っていました。(なお、実際にオリコン顧客満足度調査のランキングでは、会社の信頼性という項目を得点算出に用いていません)。満足度調査データの中には、利用者が利用前にどの項目を重視しているかということも聴取していますが、重視度と満足度は必ずしもリンクしないという証左にもなるかもしれません。

◆その3.オリコン顧客満足度調査の有益性の1つのエビデンスを示すため、総合満足度と企業数値の関連性を分析

企業の「総資産」「売上高」「一株配当」「時価総額」など、32個の指標を評価に使用し、見ていくと…

【結論】ネット銀行のデータにおいては、売上高約2500億円以上の企業には「負の相関」、2500億円未満の企業には「弱い正の相関」が見られた。

「チームA」の発表資料より

「チームA」の発表資料より

<庄司ボイス>この課題はかなりの難題だと思いつつ設定させてもらいました。顧客満足度と企業の収益の関係性は従来から研究されていますが、因果関係自体は証明されていません。さまざまな外部要因や内部要因が変数としてかかわるからです。チームAの検証では、総合満足度と企業の売上高の相関関係を見ていただいたのですが、これをやろうとした場合の障壁として、実際にこのサービスだけの売上がわからない点が挙げられます。セグメントごとの売上がわかれば、違った結果になったかもしれません。