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調査設計の仕事|“正解”のない調査票作り、担当者に求められるのは「正確性」と「決断力」

 企画が固まったら、実際に調査を行っていきます。今回ご紹介する「調査設計の仕事」は、大枠の流れとしては、前回までお伝えしてきた「企画の仕事」の次の工程となりますが、厳密に言うとランキングのテーマがある程度固まってきた段階で、対象者にどんな質問をするか?、どういった順番で聞いていくか?など、企画の担当者と共に同時進行で進めていきます。では、そんな調査部分の業務プロセスについて解説します。

1.正確さ&わかりやすさが肝心「調査票の作成」

 調査設計の仕事は、「あなたは〇〇したことがありますか?」など、アンケートの質問内容を考えたり、回収したりすることです。とくに大部分を占めるのが、みなさんが答えるアンケート表(用紙)の作成。このアンケート表のことを「調査票」と私たちは呼んでいます。調査票は、その内容によって結果が大きく異なってくるので、サービスを提供する事業者とサービスを利用するユーザー、双方から信頼を寄せてもらえるランキングとなるよう、細心の注意を払いながら作成しています。

 では、具体的に調査票作りについてご紹介していきましょう。作成する調査票は1つですが、中身は大きく2つのパートに分けられます。

【1】スクリーニング調査
 オリコン顧客満足度ランキングは、テーマごとに対象企業や回答者の条件が細かく決まっています。それらの条件に該当する回答者を抽出するために行う調査のことを、スクリーニング調査と言います。企画担当が決めてくれた条件(「カフェランキング」でいうと、月に1回以上カフェを利用しドリンクまたはフードの注文をしている人。ただし、テイクアウト利用者は対象外)を満たす回答者を集めるため、まずサービスの利用の有無などを聴取し、その人が各顧客満足度ランキングの回答者として合致しているかどうかを選別するための質問を作ります。

【2】本調査
 本調査とは、オリコン顧客満足度調査でいうと、【1】のスクリーニング調査で抽出した回答者に対して、実際に利用したサービス・商品についてその満足度を聞いていく調査になります。

 精度の高い回答を得るためには、言葉の使い方や選び方を配慮し、誤った回答をなくすための工夫が大切。それが、調査票づくりのポイントの1つと言えます。前述した「カフェランキング」を例に、具体的に考えてみましょう。

◎ 良い例)
あなたが最近1ヶ月以内に行ったカフェをすべてお答えください。
→具体的な期間を明記することで、回答者がみんな同じ期間をイメージできます。

? 悪い例)
あなたが最近行ったカフェをすべてお答えください。
→「最近」と聞いて、具体的にイメージする期間が回答者によって異なります。

 このように「期間」や「時期」を明確にすることで、制度の高いデータを得ることができます。

 心がけていることとしては、ランキングを構成する「評価項目」(カフェランキングの場合、「店内の快適さ」「メニューの充実さ」「提供スピード」などのこと)の名称づけも同様。「誰が見ても理解できる」ことを意識します。また、弊社では事業者に対してこれら調査データの提供も行っているので、さらなるサービス・商品の向上や改善につながるといった「事業者が求めるデータ」を収集できるよう、試行錯誤しながら作成しています。

2.調査票の確定に重要な「調査票ミーティング(調査設計編)」

 調査票の完成が近づくと、企画担当と営業担当を含めて認識合わせを行います。企画の仕事Part2でご紹介した内容や、ランキングに必要な質問が入っているか?、企画担当が事業者などへのヒアリングから得た内容を反映できているか?など、認識を合わせるためにとても大事なミーティングです。その場で出た意見を反映し、調査票が完成すると、企画担当と共に事業部内で上長にプレゼンテーションを行う承認会議に挑みます。無事に承認が下りると、いよいよアンケート調査に入ります!

3.「アンケート調査」はインターネットリサーチ

 アンケートは、対象となる回答者にインターネットを通し、Web上で回答してもらうインターネット調査という手法で行います。ここで少し、私たちオリコングループの話をしましょう。私たちのグループでは、「オリコン・モニターリサーチ」という自社のアンケートモニターを持ち、エンターテインメント系の話題に関するインターネット調査を行っています。たとえば、総合エンターテインメントメディア・ORICON NEWSで公開している「好きなアナウンサーランキング」や「ブレイク俳優・女優ランキング」などの調査は、オリコン・モニターリサーチ会員が回答しています。

 オリコン顧客満足度ランキングも、オリコン・モニターリサーチ会員を対象に行われているかというと、そうではありません。オリコン顧客満足度ランキングは、ランキングごとの条件を満たす回答者から回答を得るため、外部の調査会社にインターネット調査の委託を行っているのです。

 どのように進めていくかと言うと、まず信頼性のある委託調査会社へ調査票を渡します。そして、私たちが作成した調査票を実際にみなさんが答えるWebのアンケートページの作成から、回収までを担当してもらいます。アンケートページが出来上がったら、実際に私たちがアンケートに回答してみて、条件を満たしていない人が調査に進めるようになってはいないか?、作った調査票と言葉の間に相違点はないか?など、細かく確認していきます。

オリコン顧客満足度調査の調査票サンプル

オリコン顧客満足度調査の調査票サンプル

4.回答者属性のバランス感などにも注意「アンケートの回収」

 アンケートの回収の際には、対象サービス(事業者)ごとの回収数や回答者の年代のバランス感なども確認して、人口構成比(居住地域を含め)に気を配りながら回収を行っています。無事にアンケートの回収が終わったら、調査会社からデータを納品してもらい、データを次の工程となる集計チームに渡します。ここまでで調査設計の仕事は終了です。

 調査設計の仕事で特に重要な位置を占める「調査票」作りは、前提として「正解」がありません。10人が同じテーマで調査票を作成した場合、10通りの調査票が出来ます。正解がないぶん、作成者が営業担当や企画担当の意見を聞きつつ、現時点での最適解だと最終判断をする「決断力」が重要となります。

 調査設計チームが作るアンケートの内容、回収次第で結果に影響を及ぼす可能性があるため、とても気を使う作業だと思います。だからこそ、ランキングが発表された後、消費者のみなさまにサービスを選ぶ際の参考にしてもらったり、ランクインしている企業の方々から「調査データをサービス向上・改善などの参考にしています!」などと声をかけてもらったりすると、とても嬉しく、モチベーションも上がります。

【次の工程】
>集計の仕事|細かい作業を「丁寧&正確に」が鉄則、信頼性を担保するランキング作り