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メンタルヘルスはなぜ大事? 心の不調を見抜くポイントと“コロナうつ”への対処法

3.“コロナうつ”とは? メンタル不調を見抜くポイント

憂うつな気分を抱えている人

――メディアなどで、“コロナうつ”という言葉にもよく接するようになりました。
石井 いわゆる“コロナうつ”は、正式な医学用語ではありません。「うつ」「抑うつ」を含む気分障害、または抑うつ障害群の1つ。うつっぽい気分になってしまう時は誰にでもありますが、多くの場合、趣味や好きなことなどに没頭していたら、いつの間にか払拭されていたりしますよね。それが先に述べた「憂うつな気分」です。

――自分なりのストレス発散で済んでいるうちは、まあ大丈夫ということでしょうか。
石井 そうしたストレス発散ではさっぱり解消されず、楽しかったことがそもそもできない、といった気分が持続する状態には、要注意です。何をやっても楽しめない、気力が枯れてベッドから出られない、仕事にも学校にも行けない。2週間以上、そうした心身の状態が続く場合、治療が必要な「うつ病」の可能性が疑われるとされています。

――コロナ禍の現在は、平時とはやはり違って、さらにメンタル不調の判別が難しくなっているのではないかとも思えます。
石井 新型コロナの特徴は、局地的な災害などではなく、人類全体がさらされている危機であること。未だ変異や挙動がわからないことの多い未知のウイルスであり、最適化された治療薬が未開発であるという不安もあります。さらに意地悪なのは、人から人への感染症だからこそ、直接的に人とつながることを邪魔する、他者との関係を破壊してしまいかねない性質。

 人間の弱い部分というか、もう我慢できないから少しくらいは良いよね、と思って短時間でも交流してしまうと、その場からも感染が広がってしまう可能性があります。いつもなら気軽に実践可能なはずのストレス発散が、うまくできない状態がずっと続いていますよね。

マスク

――仲間との食事、スポーツ観戦、ライブ、お芝居、映画、全部が基本的にダメですよ、といわれてしまい、どこか日々の楽しさ、喜びが色あせてしまっています。マスク着用と乾燥で、肌荒れも気になります。
石井 どうしても気分は落ちこみがちになるでしょうし、イライラもする。お肌もそうですが、気持ちが荒れてしまうんです。そもそも、近年は平常時であっても、社会に対する閉塞感が指摘されていましたから、新型コロナ感染が騒がれ始めた直後よりも、メンタル的に弱ってきている人も、少しずつ増えてきている印象はあります。

4.気持ちが沈んでしまった時は意識してみよう、“コロナうつ”への対処法

生活リズムの見直しをしている人

――では具体的には、“コロナうつ”的な状態について、どのように対処すればいいのでしょうか。
石井 それこそ、先が見えない漠然とした不安を抱えて、なかなか眠れない、寝つきが悪くなったという方もいると思います。リモート環境もあり、家に居てもうまくON/OFFのスイッチが切れない。だから、就寝前に自分を癒やす儀式をワンクッション入れようと、ついついスマホのチェックや簡単なPCゲームなどに依存しがちなケースなども、年齢に関係なくよく耳にします。

 ですが、脳への入力・刺激が多すぎることで、逆にまた眠れない状態にも陥りがち。人間、質の良い睡眠がとれないと、免疫力も確実に落ちてしまいます。スマホなどの情報デバイスとは、意識して離れる時間を自分で決め、ルーティン化することも1つの手段だと思います。

――お風呂でリラックスしたり、猫と遊んだりするだけでなく、気持ちをリセットするために、しっかりPCの電源を落とし、スマホを枕の下に封印するといった儀式を決め、実行するということですか?
石井 あえて自分で意識し、日常のリズムを設定するということ。年末年始でいえば、今年は通常とはまったく違う時間を過ごせる、とポジティブに捉えてもいいのではないかと思います。コロナ禍での非常に特別なこの1年ほどを過ごしていながら、何事もなかったかのように「はい、じゃあ今年はここまで。来年の目標はですね…」なんて誰もできるわけがない。

 年末年始は、思い切り自分のことを内省し、振り返る時間としても貴重です。今回は、「できたこと」「できなかったこと」を改めて考え、コロナ禍が去ったらどうしたいかを自身に問う。自分が今どんな状況にあって、何を大切だと思い、何を不満に感じているのか、実はあまり真剣に考えることって意外に少ないと思います。いつもなら、忘年会だ新年会だと、周囲の雰囲気や流れに紛れ、忘れてしまいがちかもしれません。ですが、これから必ず訪れるはずの「afterコロナ」の暮らしでも、もし本格的な内省を実行できていれば、それは必ずや有益なものになるはずです。

“コロナうつ”への対処ポイント
●お風呂など、リラックスできる時間や存在をつくる
●心の健康を保つには、「質の良い睡眠」が大切
●就寝前は、なるべくスマホ等の情報デバイスから離れる
●リモートワークをしている人は、「ON/OFF」を意識した生活を
●コロナ禍の生活を“特別な経験”とポジティブに捉える

――自分自身と向き合って、現時点でどんな危険なストレスがあり、どんな喜びがあるのかを改めて整理しておく。まず自分の中で「見える」ようにしておく、客観化・対象化の作業が大事、ということでしょうか。
石井 ただし、メンタルヘルスにとって、ストレスがすべて「悪いもの」だとは限りません。あくまでも程度の問題で、適度なストレスによる負荷は人生のスパイスになったり、仕事のモチベーション向上にもつながるものです。

――ええぇ!そうなんですか!?
石井 では次回、ストレスとレジリエンス、ストレス・コーピングなどについて、詳しく話していきますね。

【連載|今こそ知りたい「メンタルヘルス・ケア」の効能】
【今ココ→】#1|メンタルヘルスはなぜ大事? 心の不調を見抜くポイントと“コロナうつ”への対処法>#2|ストレスと賢く付き合おう!心がけておくべきポイントを解説【メンタルヘルスを守るセルフケア その1】
>#3|職場で“今できる”メンタルヘルス対策、4つの重要な方策とは【メンタルヘルスを守るセルフケア その2】

【今回のチェックシート】「いつもと違う」に気づけるセルフチェック

ここ1ヶ月ほどで自覚されたり、周囲に指摘されたりした項目を選んでください。当てはまる項目が多いほど、メンタルが弱っている可能性が高まります。チェック項目はあくまでも基礎的な目安です。心の健康状態が気になる方は、専門家への早めの相談を強く推奨します。(各種文献・資料より、編集部作成)

行動面
□ 食欲がない
□ 遅刻が増えた
□ ぼんやりしている
□ 眠れない
□ 酒量が増えている
□ 集中力がない
□ 決断できない
□ 約束を忘れる
□ 日にちを間違える
□ 会議を忘れる
□ 忘れ物・落とし物をする
□ 机が片付けられなくなる・書類をなくす
□ メールの誤送信をする
□ 1人になりたくなる
□ 突然涙が出る

感情面
□ 何をしても楽しくない
□ 怒りっぽくなる
□ 小さなことにもイライラする
□ 小さなことにもおどおどする
□ いろいろなことが怖くなる
□ 笑わなくなる
□ 意欲が湧かない
□ 落ち着かない
□ 力が湧かない

身体面
□ 食欲がない、体重減少
□ 寝つきが悪い、熟睡できない、すぐに目が覚める
□ 体がだるい、疲れがとれない
□ 性欲がない
□ 頭痛、肩こり
□ 胃の不快感
□ 動悸・めまい・息苦しさを感じる

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