キーワード解説

従業員満足度とは? 向上させるメリットと有効な2つの取り組み視点【キーワード解説#1】

CS(顧客満足)担当者やマーケティング担当者が知っておきたい知識、キーワードをピックアップして紹介。それぞれの意味や仕組み、意義などについて、わかりやすく解説していきます。

今回のキーワード 従業員満足度
解説 日本能率協会コンサルティング(外部リンク)

1.従業員満足度とは?

「従業員満足度(Employee Satisfaction=ES)」とは、従業員が所属する組織・企業に対する満足の程度を表します。従業員個々人が組織に対する期待と実際に組織が提供している内容(実績)との関係で、期待よりもその内容が上回っていれば「満足」、期待と内容が同等であれば「普通」、期待より内容が下回れば「不満」となります。

 従業員満足という概念は、アメリカの管理学者ロバート・ホポック氏が1935年に発表した『Job Satisfaction』という本で言及したのが始まりと言われていますが、アメリカの臨床心理学者フレデリック・ハーズバーグ氏による動機づけ理論など、これまで従業員満足度につながるさまざまな理論が提唱されてきました。特に企業には、さまざまなステークホルダーが存在し、顧客満足度だけではなく、従業員満足度の重要性が広く喧伝されるようになってきたという経緯があります。

 従業員満足度は、従業員個々人の意識状態であるため、アンケート等によって測定。ES調査、社員意識調査、組織文化診断などの呼称で実施している企業が多数あります。従業員満足は、一般的に最終的な結果指標である「総合満足」とそれに影響を与える「会社・経営満足」、「職場満足」、「仕事満足」といった要素に分解されます(要素別満足は、図1のような要素で構成されます)。

2.従業員満足度は、なぜ重要なのか

 従業員満足度の構成要素から見ても、会社組織全体が良好な状態にないと満足度は向上しないということがわかります。従業員満足度は、会社組織全体の「健全度」を表す指標という意味で重要なものです。会社組織は「人」で構成されていますから、従業員1人ひとりの満足度が低い状態では、結果として会社のパフォーマンスが上がらないのは自明の理です。

 昨今、従業員満足と関連した考え方で「従業員体験(Employee Experience=EX)」の重要性が問われています。実際に、従業員体験における価値が高い組織は会社のパフォーマンスが高いという研究結果もあり、一段と注目されています。従業員体験とは、従業員が仕事を進めるうえでどのような体験価値を得られるのかに着目した概念で、一般的には、入社してからなるべく早く組織になじみ、組織の一員となってもらうためのプロセス、成長・キャリアアップ支援、柔軟な働き方環境づくりがポイントと言われています。従業員満足度は、期待と提供内容との関係に左右されることからも、従業員体験に焦点を当てた取り組みが有効と考えられます。

3.「従業員満足度」と「顧客満足度」との関係性は

顧客満足度と従業員満足度には密接な関係が。お客さまへの貢献実感があると従業員満足が高まり、同時に商品やサービスの質が向上していく

顧客満足度と従業員満足度には密接な関係が。お客さまへの貢献実感があると従業員満足が高まり、同時に商品やサービスの質が向上していく

 顧客満足度(Customer Satisfaction=CS)を向上させることは、企業の持続的な成長にとって重要なポイントですが、顧客満足と従業員満足には密接な関係があります。

 大きくは2つあって、1つは従業員満足度が低いと顧客満足度の向上ができないという関係です。「毎日の仕事がつらい」「何をやるにも余裕がない」というような不満だらけの状態では、お客さまに対して最高のサービスや商品を提供することは難しいという側面です。

 もう1つは、お客さまから「感謝された」「お褒めをいただいた」など、お客さまへの貢献実感があると従業員満足度が向上するという側面です。実際に、お客さまへの貢献実感の高い企業は従業員満足度が高く、顧客満足度も高いという調査結果もあります。また、従業員体験の考え方でも、従業員の体験価値が高ければ、お客さまに対してもより良い体験をしていただきたいという意欲が高まり、顧客満足度の向上につながると言われています。

 こうした顧客満足度と従業員満足度とが相互に良い影響を与える状態は、サティスファクション・ミラーと呼ばれています。

 このように、顧客満足度の向上のためには、従業員の企業に対する不満解消とお客さまへの貢献を実感できる状態を目指すことが必要です。

4.従業員満足度を向上させるためには、どんな取り組みが必要か

職場での良好なコミュニケーション、労働環境づくりなど、従業員満足度を高めていくポイントはさまざま(photoBさんによる写真ACからの写真 )

職場での良好なコミュニケーション、労働環境づくりなど、従業員満足度を高めていくポイントはさまざま(photoBさんによる写真ACからの写真 )

 従業員満足度の向上を目指す場合には、大きくは以下のような視点からの取り組みが有効です。

1.従業員の不満解消に向けた取り組み
「従業員満足度が低い=不満が多い」場合には、その不満を解消させることから取り組む必要があります。不満にはさまざまな要因がありますが、以下の点は外せないと考えられます。

【1】業務の負担感
 業務改革の取り組みでは、従業員の業務量を測定し、業務量が多い順に改革することが定石と言われています。しかしながら、従業員満足度は個々人の主観的な実感であるがゆえ、あえて「負担感」に着目した改革がポイント。たとえ、1日10分しか従事していない仕事だったとしでも、担当者の負担感があまりに強いのであれば改革する必要があるでしょう。

【2】公正感
 人事評価や処遇において、「他者と比べて正当に評価されていない」「なぜあの人が昇格するのか」などの不公正感があると不満につながります。

【3】労働条件・環境
 給与水準や職場の環境が悪いことも不満につながります。

【4】職場メンバーとの関係性
 職場のコミュニケーションが悪い、メンバー同士の人間関係がギスギスしているなどの状態は不満につながります。

 不満解消への取り組みは、いわゆる衛生要因。たとえ不満が解消されたとしても、満足度の向上にはなりにくいため、早急に対策をとり、従業員の満足度向上に取り組むための「土台」をつくることが重要です。

2.従業員の満足度向上に向けた取り組み
 不満解消だけでは「普通」にしかならないため、満足度の向上に向けた取り組みが必要です。そのためには、以下のような視点からの検討が有効です。

【1】職場メンバーとの関係性の向上
 職場のメンバーとの関係性は、不満の要因になる一方で、良い関係値が築ければ満足度の向上につながります。上司・部下・同僚間などのコミュニケーション、メンバー間の相互刺激、会議での職位や立場を超えた建設的なディスカッションなどが挙げられます。

【2】貢献実感が得られる環境づくり
 従業員満足度と顧客満足度との関係でも述べたように、お客さまへの貢献実感は従業員満足度の向上につながります。直接的にお客さまとの接点がない職場でも、自職場または他職場での他者への貢献実感も同様です。他者への貢献実感は、自分1人では実感しにくいことも多いため、お客さまからのお褒めの言葉などを伝えたり、メンバー間で賞賛し合ったりといったフィードバックを行うことがポイントです。

【3】職場への信頼感を高める
 会社の理念・ビジョン・価値観の共有、トップのメッセージ発信のあり方、戦略や経営計画への納得感・共感度の向上など、従業員が良い会社に所属していると思える状態をつくることがポイントです。

【4】成長・キャリアアップ実感を与える
 自分自身が成長できる(できている)、将来のキャリアアップにつながる実感が持てると、従業員満足度は向上します。会社・職場・業務で身につく能力がわかるか、成長支援が行われているか、将来の働く姿がイメージできるかなどがポイントです。

5.「経営層」と「従業員」がそれぞれ意識すべきことは

 経営層は、従業員満足度の向上が自社の発展・成長の原動力であることを十分に認識しましょう。従業員による意識調査の結果は、良くも悪くも会社の実態を表しているので、真摯に向き合うことが必要です。悪い結果が出ても、「寝た子を起こしたくない」「経営への批判が多いからオープンにはしない」ではなく、経営層・従業員と共有し、一緒に改革に取り組む姿勢が求められます。一方、従業員は、満足は会社や経営層が与えてくれるものと考えるだけではなく、自ら満足できる会社・職場・自分に変えていくという姿勢が重要です。“満足させてくれない症候群”に陥るのではなく、経営層と従業員が一丸となって向上に取り組むことが必要です。