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ストレスと賢く付き合おう!心がけておくべきポイントを解説【メンタルヘルスを守るセルフケア その1】

3.人は誰でも「レジリエンス(=回復力)」を持っている

元気な女性

――どんな人でも、実はさまざまなストレスを抱えているということですね。その前提で、先ほどの「(3)ストレス耐性を高め、回復する力を強化していく」という対処の方向性について教えてください。
石井 強いストレスを伴う逆境やトラブルに直面した際に、自ら適応し再起する能力や潜在力のことを一般に「レジリエンス」と呼びます。言葉で表現するとやや抽象的かもしれませんが、レジリエンスの高い人や組織の特徴は3つ。

 1つ目は「予想外のショックやストレスに、弾力性を持って堪えることができる弾力性」、2つ目は「予期せぬ変化に抵抗せず、受け入れて合理的に対応できる適応力」、そして、3つ目は「困難に直面してもすぐに元の状態に戻ることができる回復力」があることです。かかってきたストレスを、次のアクションへのエネルギーに変換できる状態ともいえます。

――常にフレキシビリティを維持し、不測の事態に備えながら、飛躍のチャンスをうかがえる状態ということですね。しかし、正直なところ、そうした高いレジリエンスを備えた組織や個人というのは、かなり少数派のような気がします…。
石井 今となっては、組織も個人も余裕がないということかもしれません。かつての高度成長期の日本企業では、多少の失敗やルールを逸脱する個性などを含め、どこかで「まぁ、あのくらいはね」と黙認される寛容な空気や余裕がありました。

 ですが、現在では、そうしたマイナス点は、寄ってたかって過剰にバッシングされてしまいかねない。もちろん、パワハラやセクハラなどあらゆるハラスメントは厳しく相互に認識を高め、戒めていくのが望ましいのですが。どこかで失敗そのものを許さないといいますか、窮屈な社会的な空気は、ことレジリエンスについては、阻害要因の1つになっているのかもしれません。

――とはいえ、誰もがメンタル不調に陥る可能性があるのと同じように、そこから回復するためのレジリエンスも、基本的には誰もが備えていると。
石井 どんなに大切に扱っている食器もいつか割れてしまうことだってありますし、どんなに自分ではタフだと思い込んでいる自律神経も、急に乱れてしまうことだってよくある。でも、過剰にその可能性を気にしたりせず、そうなったらそうなったで自分の努力で変えることができないのであればまず現実を受け止めること。その上で、まぁどうにかリカバリーできるよね、という大きな気持ちをキープできるかどうかも「レジリエンス」につながるのではないでしょうか。

【連載|今こそ知りたい「メンタルヘルス・ケア」の効能】
>#1|メンタルヘルスはなぜ大事? 心の不調を見抜くポイントと“コロナうつ”への対処法
【今ココ→】#2|ストレスと賢く付き合おう!心がけておくべきポイントを解説【メンタルヘルスを守るセルフケア その1】
>#3|職場で“今できる”メンタルヘルス対策、4つの重要な方策とは【メンタルヘルスを守るセルフケア その2】

【今回のチェックシート】「認知のクセを知る」セルフチェック

「認知のクセ」を知るセルフチェック

自覚している傾向や、周囲から指摘されたことがある項目を選んでください。「当てはまるものが多い(=アウト)」、「少ない(=セーフ)」という性質のものではありません。自身の認知の傾向を改めて客観化し、把握しておくための目安としてご活用ください。

□ 「こうであるべき」という意識が強く、他者にも要求。ずれると怒りが湧く(べき思考)

□ 他人や自分ができていないところばかりが気になる(減点思考)

□ 起きてもいない未来を憂い、心配しすぎる(悲観思考)

□ どうせ自分には無理、ダメだとすぐあきらめる(無力思考)

□ すぐに謝る、失敗の原因は自分だと思いがち(自責思考・自己関連づけ)

□ うまくいかない理由を「他人のせい」と批判しがち(他責思考)

□ トラブルが起きても我関せず。無関心、無気力(無責思考)

□ 自分の価値観・基準ですべてを決めつけがち(レッテル貼り)

□ あいまいな状態に我慢できず、極端な2つの考え方に傾きがち(全か無か思考)

□ 1つの事例だけですべてそうだと思い込む(過剰な一般化)

□ 1つの結果をほかのことにも強引に当てはめがち(結論の飛躍)

□ 否定的予測を立てて自分の行動を制限し、失敗しがち(セルフ実現する予言)

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