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昭和、平成、令和でこんなに違う! 異なる「価値観」のすり合わせ術

2.「若手」は若手でも、それぞれが異なる背景を持っている

――なるほど。ですが、「若手に対して、なんでこっちがそこまで気をつかわなきゃいけないんだ!」という反発も、根強くありそうですが。
石井 私もそちら寄りの管理職でしたので、気持ちはわかります(苦笑)。自分自身の失敗経験からも思うことですが、こちらがどんなに聞いてもらいたいと思っても、相手が内心で拒否していたら、それは聞いていない、ということでしかありません。まずは、お互いの価値観の差異を受け入れ、認め合う。そこから、やがて双方にリスペクトや感謝の気持ちが生まれてくるのだと思います。

 今の現役トップ・マネジメント周辺には、懸命に働けば成果などのフィードバックがあり、組織にも認めてもらえたという方が多い。それに該当するのが昭和からバブル世代で、結果重視タイプ。現在、40代前後の就職氷河期の世代は、何通履歴書を送っても落とされたり、やっと仕事を始めてもリーマンショックがあったりで、結果なんてそうそう出せないという状態が続きました。だから、「結果だけでなくプロセスでも評価を」という、プロセス重視タイプが多い。

 その後がゆとり世代で、競争することにあまり慣れておらず、いわば「みんな違ってみんな良い」という多様性を受け入れる教育で育ってきた人たちです。彼らは存在そのものを認めて欲しいというタイプ。デジタルネイティブでもあり、「お茶の間」に対するイメージも全然違う。家族がそろってテレビを観るなんてことはまったく生活習慣としてなかった、という人たちも多いので、会社という疑似家族における、お茶の間的な装置たる“飲みニケーション”の概念も、ほとんど価値がわからないわけです。

最近は、会社の“飲み会”には参加したくない…という若者も多い

最近は、会社の“飲み会”には参加したくない…という若者も多い

――大事にしたい、と考えるポイントがまず違うわけですね。
石井 “ゆとり”の彼らから見ても、今の20代前半の新人たちは「その生態がわからん」ということになります。若手とひとくくりにしても、その中でそれぞれが異なる背景を持っていますし、もちろん個人差もあります。それをどちらかに強引に寄せようと試みると、ハラスメントなどのトラブルが生まれやすいということです。さすがに近年は、最初はお互いに嫌だったけれど、歩み寄らざるを得ない、という状況になりつつありますよね。気に入らないこともあるけれど、「まあ許せる」というレベルであっても、互いの理解は進みつつある。

 たとえば、ゆとり以降の方々には、昭和世代には不人気のいわゆるグループディスカッションやプレゼンがさほど苦もなく、むしろ得意としている方々も多いです。英語圏をはじめ、外国人と会話をする際に腰が引けてしまうような恐怖感も少ない。そうした秀でている部分をいったん認めると、補完し合ってうまくいくシーンがたくさん生まれてきます。違いを認めて尊重し合うことが、組織を活性化する近道だという認識は、広がりつつあると思います。