総合人材サービス・パーソルグループのパーソル総合研究所は4月17日、全国の就業者2万5769人を対象に実施した「新型コロナウイルス対策によるテレワークへの影響に関する緊急調査」の第2回の結果を発表した。調査期間は、7都府県で緊急事態宣言が発令された後の4月10日〜12日の3日間。正社員のテレワーク実施率は全国平均27.9%となり、3月9日〜15日に実施した第1回調査時の13.2%から2倍以上増加した。国勢調査に基づく簡易推計では、約760万人がテレワークを実施していることになる。
テレワーク実施、最多は東京 導入進む一方で実施しにくい業種も
3月と4月のテレワーク実施率の変化
エリア別に実施率を見ると、緊急事態宣言が発令された7都府県で平均38.8%(東京:49.1%、神奈川:42.7%、千葉:38.0%、埼玉:34.2%、大阪:29.1%、兵庫:25.2%、福岡:23.8%)、それ以外の地域では平均13.8%となり、7都府県はそれ以外の地域に比べ実施率が高い。最多は東京で、正社員の約半数がテレワークに移行している。
職種としては、【Webクリエイティブ職(Webデザイナー、プランナーなど)】(64.1%)や【 コンサルタント】(61.4%)、【企画・マーケティング】(60.4%)、【 IT系技術職】(53.0%)、【広報・宣伝・編集】(52.1%)が上位で、比較的以前からインフラが整っていたり、業務内容とスタイルが伴っていたりする業種でテレワークが進んでいる。
一方、物理的に難しい【福祉系専門職(介護士・ヘルパーなど)】(2.2%)や【ドライバー】(3.2%)、【軽作業(梱包・検品・仕分/搬出・搬入など)】(3.9%)は、5%以下の実施率。【教育関連】(20.0%)や【営業職(個人向け営業)】(25.5%)など、直接的に人と交わる機会が多い職種では、2割程度の実施率にとどまった。社内制度の整備が進むなどして実施率が高まる傍ら、業務の特性上テレワークを実施しにくい職種も浮き彫りになってきている。
コミュニケーション不足や、仕事への意欲低下を感じる人も
なお、現在テレワークを行っている人のうち、現在の会社で初めて体験しているという人は約7割(68.7%)おり、ほとんどの人が不馴れな環境下で働いている様子がうかがえる。テレワークを行っている人の「不安」をランキング化すると、上位から【相手の気持ちがわかりにくい】(1位:37.4%)、【仕事をさぼっていると思われないか】(2位:28.4%)、【出社する同僚の業務負担の増加】(3位:26.4%)という結果に。
3月と4月の“初めて”のテレワーク実施率
テレワークの不安
「課題」については、約7割(73.6%)もの回答を集めた【運動不足】が一番に挙げられたほか、【テレワークでできない仕事がある】(60.2%)、【(プリンターなど)必要機器がない】(47.8%)ことに対して、なんらかの見直しを求める正社員が多かった。
テレワークの課題
また、テレワーク実施の前後の「変化」についての問いでは、【上司とのやりとりが減った】(45.2%)、【同僚とのやりとりが減った】(50.0%)というように、コミュニケーション不足を感じる正社員が散見されたほか、約3割から【組織の一体感が低くなった】(36.4%)、【仕事への意欲・やる気が減った】という声も聞かれ、組織としての課題が生じる結果となった。
テレワーク実施前後の変化
政府が要請する出社7割減には程遠い現状が明らかとなった今回の結果を受け、パーソル総合研究所の主任研究員・小林祐児氏は、急速にテレワークを広めていくためには「(人命などに対する)危機感の底上げ」と「企業間や個人間にある、テレワークの足かせを断ち切ること」が重要ではないかと解説。また、「多くの人が集中力の欠如や運動不足、仕事意欲の低下などを感じている。人命を守るため、そして労働生産性の観点からもテレワークは進められるべきだが、急激な変化がもたらす課題にも同時に対処していかなければならない」と、長期化に備えた対策の検討も示唆している。
【調査概要】
●調査名称:パーソル総合研究所 「新型コロナウイルス対策によるテレワークへの影響に関する緊急調査」第2回調査
●調査期間&対象者
【第1回】対象者:全国、正社員、20〜59歳男女、勤務先従業員人数10人以上/n数=2万1448/期間:2020年3月9日〜15日
【第2回】対象者:全国の就業者 20〜59歳男女、勤務先従業員人数10人以上/n数=2万5769/期間:2020年4月10日〜12日
※第1回、第2回を比較するため、主に正規雇用の従業員の数値を用いて分析
※調査結果の数値は平成27年国勢調査のデータより正規の職員・従業員 性年代(5歳刻み)の構成比に合わせてウェイトバック処理
●手法:調査会社モニターを用いたインターネット定量調査