コラム

カスタマーサポートは企業成長の重要なカギ CS HACK代表・藤本大輔氏が語る“CS強化のススメ”

 事業成長につながる重要な職種の1つとして、近年ますます注目度が高まっている「カスタマーサポート」。新型コロナウイルスの感染拡大に伴い、企業と顧客との接点が希薄になりがちな今、カスタマーサポートはより重要性を増していると言えるはずです。でもなぜ、カスタマーサポートを強化することで、事業が活性化していくのでしょうか? 日本で唯一カスタマーサポート エバンジェリストの肩書きを持ち、日本最大級のCS(カスタマーサポート)コミュニティ「CS HACK」を主催する藤本大輔氏に、カスタマーサポートの現状や意義について語っていただきました。

藤本大輔
ふじもと・だいすけ/日本で唯一の「カスタマーサポート エバンジェリスト」、キャッチコピーは“CSに狂っている男”。スタートアップの社員としてカスタマーサポートに取り組むかたわら、個人としても精力的に活動している。主催する「CS HACK」では、ほぼ毎月イベントを開催しており、参加人数は2700名以上(2020年5月時点)。同コミュニティを運営するプラットフォームconnpassにおいて、日本最大級のCSコミュニティへと成長している。

>「CS HACK」とは?(外部リンク)
>You Tubeチャンネル「CS HACK TV」※今後、随時アップ予定(外部リンク)

1.「親切」「丁寧さ」だけが素晴らしいサポートの方法ではない

 私が主催するコミュニティ「CS HACK」では、主に【1】カスタマーサポート、ほかに【2】UX(ユーザーエクスペリエンス)デザイナーと【3】マーケティング担当者を対象に、3年ほど前から毎月交流会を開催しています。この3つに絞ったのは、「企業とユーザーとのコミュニケーションに責任を負う仕事」として共通点が多いと考えているからです。私はこのコミュニティ運営を通じて、カスタマーサポートを“新卒が希望する職種No.1”にすることを目指しています。

  • 藤本氏が主催する「CS HACK」では、毎月交流会を開催している

    藤本氏が主催する「CS HACK」では、毎月交流会を開催している

  • 藤本氏が主催する「CS HACK」では、毎月交流会を開催している

    藤本氏が主催する「CS HACK」では、毎月交流会を開催している

「カスタマーサポート」は、企業が事業を成長させるにあたり、とても重要な存在です。こういった話をすると、「丁寧な対応」や「おもてなしの心」が重要ですよね、と言われることが多々あります。それは大切な考え方ではありますが、決して「親切」や「丁寧であること」だけが素晴らしいサポートの方法というわけではありません。

 そもそも、カスタマーサポートが多く活躍するのは、ユーザーになんらかの問題が発生しているとき。ユーザーにとってはカスタマーサポートが対応している時点ですでにマイナスであり、丁寧にケアするよりも最初から問題が発生しないほうが良いはずです。問題解決にしても、ユーザー自身で対応できるセルフサービスのニーズも高まっています。アメリカン・エキスプレスの調査では、アメリカの消費者のうち60%以上のユーザーが、簡単な問題解決にはデジタルセルフサービスツールを使っています。セルフサービスを徹底し、「問題解決に至るまで顧客がどれくらいの努力を必要としたか」を測るCES(カスタマーエフォートスコア)を導入する企業も増えてきています。

2.「ユーザーが求めていること」をいち早くキャッチできる

 また、「不親切」であることが期待を高めることもあります。たとえば、高級寿司屋では時価の寿司ネタが存在しますし、わかりやすいメニューがないことも多いものです。これらは、お客さまからすれば不親切な対応とも捉えられます。価格が明示され、写真付きのメニューがあり、さらにはクーポンもあればより親切でしょう。ただ、そうしたものを揃えすぎると、お客さまがこの店に求める「高級感」や「威厳」といったものは薄れてしまう可能性もあるのではないでしょうか。(こういった考え方は、山内裕 著『「闘争」としてのサービス 顧客インタラクションの研究』(中央経済社)が参考になります)

 カスタマーサポートが事業を伸ばすことができる仕事なのは、職種の特性上、「ユーザーが何を求めているのか?」を誰よりも早く掴めるから。そして、ユーザーとどのような関係性を築きたいのか、どんな体験を提供したいのかを考え、オペレーションに反映できるからです。

 こうした重要性の認識が広がり、最近ではカスタマーサポートに投資をする企業が増えているように思います。

3.カスタマーサポートに注力するメルカリ「雇用体系」充実化の理由

 たとえば、メルカリでは初期の段階からカスタマーサポートに多額の投資をしています。特に興味深いのは、雇用体系。メルカリではサービスがかなりの規模に成長するまで、カスタマーサポートのスタッフを正社員か契約社員のいずれかで採用していました。一般的にカスタマーサポートは、その多くがアルバイトに支えられています。数百人のアルバイトスタッフを、数人の正社員で監督することも珍しくありません。それは、コスト面や繁閑の調整から、そちらのほうがメリットがあると考える企業が多いからです。

 でもなぜ、メルカリはそうした投資を行っているのでしょうか。以前、カスタマーサポートの担当マネージャーへのインタビューで疑問をぶつけたことがありますが、雇用安定化による自社カルチャーの浸透を理由の1つに挙げていました。私の質問に対して、「短期で入れ替わることを前提とするのではなく、長期にわたって安定して働いてもらうからこそ自分たちのカルチャーが浸透するし、アイデアが生まれ、事業が成長する推進力になりえると考えている」と回答いただいたのが、今でも印象に残っています。今回の新型コロナウイルス対策においても顕著で、東京だけでなく地方のサポートセンターも原則在宅勤務にするなど、時代の変化に柔軟に対応しています。

4.追求することで「自社の強み」を育て、他社との差別化にもつながる

 カスタマーサポートのように、自社のビジネスモデルや事業計画を踏まえたうえで、ユーザーとさまざまなチャネルで毎日やりとりをする部署は、ほかにはありません。強いカスタマーサポート組織は、誰よりも早くニーズを掴み、課題を正しく見つけ、自社のリソースを駆使しながら商品やサービスの改善に結びつけることができます。それによって、仮に自分たちの組織を縮小する変化を伴うことになったとしても、そうして練り上げられた組織とオペレーションは、たとえサービスがコモディティ化(複数の類似商品・サービスが出てくることによって差異がなくなり、市場価値が低下すること)したとしても、自社を選んでもらう差別化にもつながります。

 カスタマーサポートをコストセンターと割り切ってしまうのは簡単です。しかし、取り組み方次第で、常にユーザーと接する「最前線の部署」であり「事業成長のエンジン」にすることもできるのです。こういった、極端な“ブレ幅”が生じているのが、カスタマーサポートという職種の置かれている現状であり、悩みであり、また面白いところでもあると言えるでしょう。