コラム

【Book Review#2】定番化する顧客ロイヤルティ指標「NPS」の“教科書”/『ネット・プロモーター経営』

ビジネス感度を高めるブックレビューコーナー。顧客満足、従業員満足、働き方の向上や、それぞれの知識・理解を深める作品を中心に、考え方や明日の行動を刺激する1冊を紹介していきます。

今回の「推しの1冊」

紹介する本
『ネット・プロモーター経営 顧客ロイヤルティ指標NPSで「利益ある成長」を実現する』
著者:フレッド・ライクヘルド、ロブ・マーキー
発売日:2013年1月30日
出版社:プレジデント社

紹介する人
株式会社oricon ME CS事業本部 本部長
庄司 知

<本書のキーワード>
#NPS(R) #顧客ロイヤルティ指標 #NPS(R)の教科書

◆すっかり一般化、日本でも多くの企業が採用

 この数年、企業の利益と相関があるということで「NPS(R)(ネット・プロモーター・スコア)」をKPIにしている企業が増えています。顧客ロイヤルティに関わる指標としては、比較的新しいワード。ですが、本書の著者の1人であるフレッド・ライクヘルド氏の研究が米経営学誌の『ハーバード・ビジネス・レビュー』に掲載されたのが2003年。すでに日本においても多くの企業で採用されていて、ロイヤルティ指標としてかなり一般化しているなという感覚を個人的には持っています(ちなみに、NPS(R)は、ライクヘルド氏が所属するコンサルティング会社・ベイン&カンパニー社とのライセンス契約が必要なので、もしリサーチ会社に調査を依頼しようと考えている方がいたら、委託先企業がライセンス契約を結んでいるかどうか、しっかり確認しておきましょう)。

 本書でライクヘルド氏も触れていますが、この『ネット・プロモーター経営〜』はNPS(R)の教科書。このページをご覧いただいている方の中には、すでにこの本にたどり着いていらっしゃるという方も多いのではないでしょうか。それだけの名著ですから、単純にご紹介するだけではなく、私見も含めながらお伝えしたいと思います。

 そもそも、NPS(R)とは、ライクヘルド氏が提唱した指標で、企業の利益と相関するとされているロイヤルティを示すスコアです。考え方はとてもシンプルでわかりやすいです。NPS(R)については用語辞典にも掲載していますが、少し詳しく書きたいと思います。

 本書の原題は“The Ultimate Questions 2.0”です。2.0と言うからには1.0の本もあるのですが、そちらは日本語訳がなされていません。直訳するとわかりやすいのですが、つまり「究極の質問」を意味しています。

 究極の質問とは何か? 本書にはこうあります。

質問自体は単純なものだ。すなわち、「この会社を友人や同僚に薦める可能性はどのくらいありますか」というものである。(フレッド・ライクヘルド、ロブ・マーキー 著(2013年)『ネット・プロモーター経営 顧客ロイヤルティ指標NPSで「利益ある成長」を実現する』/プレジデント社/65Pより)

 この質問に対し、0〜10の11段階でユーザーに評価してもらいます。評価軸は三段階に分け、0〜6を「批判者」、7〜8を「中立者」、9〜10を「推奨者」とラベリング。スコアを算出する計算方法は実にシンプルで、「推奨者の割合(%)」−「批判者の割合(%)」で求められる数値がNPS(R)となります。

 なので、スコアがマイナスになりがちなのがNPS(R)の特徴でもあります。マイナスの数字に対しては、なんとなくネガティブな印象があるせいか、私は初めてNPS(R)の数値を見たときに「何かの間違いじゃないの!?」と思いました(定量データを見るときに肝心なのは「比較」です。業界全体、他社、自社の過去の数字など)。

◆組織全体で仕組化されてこそ、ロイヤルティは向上する

 さて、本の内容について具体的に触れていきましょう。本書が伝えているところでピックアップしたいのは、「クローズド・フィードバック・ループ」という考え方と、第5章に書かれているNPS(R)測定のための原則です。

 これらはNPS(R)だけに当てはまるものではないので、なんらかの課題があってリサーチをして改善していきたいという方は、しっかりと目を通しておくと、良い示唆が得られると思います。

 クローズド・フィードバック・ループとは、PDCAを回すために仕組み化されたサイクルと言えます。戦略を立てただけでは実行はなされないですし、現場だけの考えで改善策を実行してしまうとその場だけの取り組みになり、再現性がありません。つまり、こうした顧客ロイヤルティ指標は、経営と密接に連携していかなければ小手先だけのものになるので、組織として取り組みましょうね、ということです。

 もう1つ、本の中で「原則」として書かれていることは、定量調査の結果を指標とするための心構えとして、勉強になります。たとえばこちら。

原則三 自社調査(ボトムアップ)のスコアと外部調査(トップダウンやベンチマーク)のスコアを混同しない(フレッド・ライクヘルド、ロブ・マーキー 著(2013年)『ネット・プロモーター経営 顧客ロイヤルティ指標NPSで「利益ある成長」を実現する』/プレジデント社/145Pより)

 よく、「自社調査を行っているので外部調査のデータは必要ない」という方がいます。そうかもしれません。しかし、確認しなければいけないのは、その自社調査の内容です。なんらかの課題があって要因を特定しようとする調査であった場合、かなり具体的な設問設計になっていて、他社には当てはまらない内容になっている可能性があります。もし、客観的に他社と相対的な評価をしたいのであれば、外部調査会社に委託するなどして、どの企業にも当てはまる設問内容からスコアを見るべきで、使い分けが必要なんだ、ということを当該の部分より私は解釈しました。

 新しいKPIを経営指標あるいは事業指標にし、実行に移し、サイクルを回すということは、結局のところ、リーダーのコミットメントが一番重要だとも書かれています。CSなどのチームは、プロフィットを生み出さないコストセンター(しかも必要不可欠ではない)と思い込んでいる方もいますので、とても大切だと思います。ロイヤルティ向上の仕組みづくりは、担当者だけではなく、組織全体で仕組み化された状態でこそ力を発揮するということを再認識させられます。