ビジネス感度を高めるブックレビューコーナー。顧客満足、従業員満足、働き方の向上や、それぞれの知識・理解を深める作品を中心に、考え方や明日の行動を刺激する1冊を紹介していきます。
今回の「推しの1冊」
<本書のキーワード>
#顧客満足の基礎 #CS初心者にオススメ #顧客満足の仕組みがわかりやすい
◆顧客が価値を得るメカニズムをわかりやすく解説
顧客満足(Customer Satisfaction=CS)について知識を深めたい人に、まず最初に読むことをオススメしたい本です。弊社の「オリコン顧客満足度」の事業に新たに参画したメンバーには、いつもこの本を薦めています。
著者の小野譲司さんは、サービスマネジメントや顧客ロイヤルティについて、第一線で活躍されている方で、公益財団法人 日本生産性本部のサービス産業生産性協議会が発表している、「JCSI(日本版顧客満足度指数:Japanese Customer Satisfaction Index)」のアカデミックアドバイザリーグループの主査を務めています。
CSに関する本は、学術的なリサーチ手法であったり、ある特定企業にフォーカスした事例であったりすることが多々あります。前者は一般の方が読むには、1つひとつの言葉やロジックがわかりにくく、後者は「なるほど」とわかった気にはなるものの、人が「満足度を得る」という本質的なメカニズムの説明がないため、自分の会社に応用しようとしても、どこをどう参考にしたものか、再現性の問題に突き当たります。
本書は、顧客が価値を得るメカニズムを解説している本です。新書判で手に取りやすく、学術的な知識がなくてもスラスラと読み進められるよう、わかりやすい文章でページ数もコンパクトにまとめられています。
たとえば、私が新入社員にCSの基礎を伝えるときは、以下のフレーズが一番わかりやすいと思っていて、繰り返し引用させていただいています。
「商品やサービスに対する顧客の満足・不満足は、顧客がその商品・サービスから得られると事前に期待した水準(期待水準)と、実際に体験を通して感じた知覚水準、そして、これらの期待水準と知覚水準が一致している度合いによって決まる、と考えられています」(小野譲司 著(2010年)『顧客満足[CS]の知識』/日本経済新聞出版社/80Pより)
これさえ感覚としてわかってしまえば、不良がお年寄りに席を譲ったときに「あ、この子は実は誠実で良い奴なんだ」と高く評価される事象があることも、このメカニズムで説明できてしまいますね。一方で、普段から真面目に見える人が同じことをしても、印象はあまり変わらないと思います。
また、この本の中で説明されている、人の知覚に影響してロイヤルティに作用する三因子(最低因子・満足因子・感動因子)については、昨今多くの企業でも採用されているNPS(R)(ネット・プロモーター・スコア)の批判者・中立者・推奨者のラベリングにも通じますので、十分に応用が利きます。
これから顧客満足について勉強したいという方は、ぜひ手に取ってみてください。