コラム

企画段階で成否が決まる!有効活用するための「顧客満足度調査」進め方のコツ【CS推進 一年生 #5】

CS(顧客満足)推進のプロセス・考え方をイチから解説する連載コラム「CS推進 一年生」。40年にわたり日本産業の成長を支援する総合コンサルティングファーム・日本能率協会コンサルティングに在籍するコンサルタントが、全15回にわたって顧客満足向上に向けた基礎を紹介します。“CS初心者=一年生”はもちろん、「改めてベースから振り返ろう」という方にも適していますので、ぜひご活用ください!
>連載「CS推進 一年生」記事まとめ

第5回目のテーマ
お客さまの声収集の要「顧客満足度調査」
講師
日本能率協会コンサルティング(外部リンク)

 連載5回目は、「顧客満足度調査(CS調査)」について取り上げます。そのなかでも、今回はとくに「企画」に焦点を当てて解説します。なぜなら、CS調査の成否は「企画」段階で90%以上決まってしまうからです。

 なお、CS調査における、主に消費者向けのアンケート調査については、「キーワード解説|顧客満足度調査」にて紹介していますので併せて参考にしていただければ幸いです。

1.「活用」してこそ意味がある! CS調査の位置づけ

階段を登る人のイラスト

 改めて、CS調査の目的について考えてみましょう。よく、「CS調査は顧客からの通信簿だ」であるとか、「定期的な健康診断だ」と表現されます。しかし、通信簿も健康診断も、結果を見るだけでは学力も向上しませんし、健康も増進しません。つまり、CS調査は「活用」してこそ意味があるのです。具体的には下図のように、なんらかの変革を行うことで顧客への提供価値を向上させたり、新たな顧客価値を生み出したりすることが必要です。

CS調査の位置づけの解説図

 あなたの会社は、CS調査の結果から「何を変革した」でしょうか。各部門に結果をフィードバックして終わりといったケースや、各部門で「取り組んだ」ものの具体的に何が変わったかが曖昧だというケースも多いものです。こういった「もったいない」調査を防ぐには、どうすれば良いのでしょう。

2.有効利用するためには企画が肝心、CS調査の残念なパターンとは?

失敗して頭を抱えている人のイラスト

 CS調査に限った話ではありませんが、どのような調査も調査結果が出てきてから「さてどう使おうか」と考えるようでは良い調査とは言えません。とくにCS調査の場合は、「お客さまに時間を使って回答いただいた」ものですし、お客さまも「何かしてくれるだろう」と期待しているに違いないのです。その大事な調査結果を有効活用するためには「企画がすべて」だと考えましょう。

 コンサルタントとして多くの企業のCS取り組みを支援してきた経験のなかで、残念なパターンとして多いものは以下の通りです。

●初めてのCS調査なので、まずは各部門の要望を踏まえて設問を作り実施した。

●実施した結果を集計して各部門にフィードバックした。

●その後、なんらかの活用はされたと思うが、具体的には確認・共有・反省をしていない。

●CSは重要課題であり、調査も1回でやめるわけにもいかないので、2回目も実施した。

●何回かやるうちに「これでいいのか?」と見直したいと考えたが、「経年比較」も意味があると思いずるずると同じ調査項目で繰り返している。

 こういった状態にならないためには初回の企画が大事ですし、経年比較を重視して最適ではない調査を繰り返すよりは、「使える調査」にするために「ゼロから見直す」ことが必要です。つまり「活用から逆算」した企画が、CS調査の最も大切な点だと言えます。

CS調査を行う際のポイント

3.活用から逆算する企画の進め方のポイント

パソコンで計算している人のイラスト

 では、活用から逆算するためには、どのような点から企画を進める必要があるのでしょうか。

「企画段階」で意識すべきポイント

 さきほど、「まずは各部門の要望を踏まえて設問を作る」ことを、失敗事例として紹介しました。各部門にはCS向上に重要な役割を果たしてもらうわけですが、「調査のプロ」ではありません。従って「何を問うべきか」を各部門に委ねることは間違っています。

 まず、企画段階で考えるべきは、「活用するためには誰のどのような認識と行動を変える必要があるか?」ということです。調査結果はあくまで情報であり、情報の価値はその受け手の認識を変えることにあります。調査を通じて、トップ・部門長・マネジャー・担当者など、誰にどのような認識を持ってもらう必要があるのか。その点から考えることが重要です。

 また、認識を持つ・変えるためには、情報として「何が明らかにされる必要があるのか」を考えましょう。わが社への満足・不満といったレベルではなく、「営業実態についての評価」なのか「提案力について」なのか。または、「再購入意向」や「イメージ」も必要なのか。調査の目的(顧客満足向上による事業競争力強化)から見て「何を知ると変革できるのか」という観点で議論したり、書き出したりする必要があります(詳細な設計はまた別ですが)。

 そして、データ活用の体制について、企画段階で構築しておくことをオススメします。結果によって取り組みメンバーの顔ぶれは変わっても良いですが、トップ・事務局・各部門・横断チームなど、体制を組んでおき、調査後にすぐ動けるようにしておきましょう。

 これらが「活用」につながるための最低限の検討事項です。

企画の要点

「調査設計」で意識すべきポイント

 ここからさらに具体的な「調査設計」をしていくことになりますが、設計においても真っ先に考えるべきことは「調査項目」ではありません。まず考えるべきは、「誰が答えを持っているのか」です。

 BtoB事業であれば、経営者に問うのか、マネジャーに問うのか、実務担当者に問うのか。BtoC事業で言えば、購入する本人だけか、ご家族も含むのかなども焦点です。もしくは、「現在の顧客」に問うべきか、「離脱した顧客」にこそ問うべきなのか。いわゆるCS調査は「現在の顧客」を対象にするアプローチですが、極端な例で言えば、活用から逆算したら「実はCS調査ではなく潜在顧客にニーズサーベイ(需要の調査)をすべきだった」といったこともあるのです。

「調査方法」を見極めるポイント

 さて、誰に問うべきかが定まったら、次は「方法」です。

 一般的に思い浮かぶ方法はアンケート調査です。しかし、明らかにしたいことによっては少数の特徴的な顧客だけが対象のケースもあり、その場合はアンケートではなく「インタビュー」が適している場合もあります。

 探索的な内容について柔軟に把握したい場合はアンケートよりもインタビューが適しています。逆に100人前後以上の回答者に固定された設問を投げかけて、定量データを得ることが必要であれば、方法はほぼアンケートに限られます。そして、アンケートの場合も対象者に応じて、Webが良いか、紙への筆記式が良いか、時期はいつが良いか…なども検討事項です。

4.設問づくりの際に意識したい2つの重視ポイント

ポイントを話している人のイラスト

 これらが決まったら、いよいよ「設問」づくりです。設問づくりについてのポイントは大きく2つあります。

【ポイント1】お客さまの認識と一致する「かたまり」と「順番」で問う

 設問をつくる際も「自社が知りたいこと」は重要ですが、「どういう単位・要素でまとめるか」「それをどう表現するか」は、お客さま視点で考える必要があります。

 たとえば、「わが社の技術力は顧客の役に立っているだろうか」ということを、「わが社の技術力にご満足いただいていますか?」と問えば良いのでしょうか。お客さまが思い浮かべる「技術力」が、自社が言うところの「技術力」と同じであれば問題はありません。しかし、技術力や品質、提案力や対応力などは、人によって思い浮かべる内容が異なることが多い単語です。

 また、たとえばBtoBのケースの場合、自社が「金属を加工する切削技術」を問いたいと思っていても、お客さまは「要するに我々の製品づくりに役立つ対応力が大事であり、切削・研磨といった1つひとつの技術が大事な訳ではない」と思っているかもしれません。また「対応力」も、「日頃から適度に訪問してくれて用事を聞いてくれること」なのか「具体的な案件でレスポンスよくフィットした情報を提供する」ということなのか判然としません。

 このように、なんらかの「要素」や「場面」をまとめて問う場合は、お客さまがイメージしている「かたまり」を的確に捉えて、ズレがないように表現する必要があります。

 また「順番」も重要です。自社が一番知りたいことが「競合との比較」だからといって、真っ先に「他社と比べて…」と設問を持ってこられては、お客さまもいきなり抽象的で総合的な評価はしづらいものです(そういったことを敢えてやるアプローチもありますが、少々高度なやり方です)。

 順番について、一般的には「お客さまが体験する順」や「お客さまが思い出しやすい順」で配置することがオススメです。CS調査の場合は「現在ご利用中のお客さま」が前提ですので、設問は「日頃のご利用場面について」から入って、自社の製品やサービスの体験を思い起こしていただくといったやり方です。

 もしくは、「検討時」→「商談時」→「開発時」→「試用時」…など、全体の体験の順番で問うことも効果的です。この方法は、住宅や保険などでよく採用されています。このお客さまの体験の順番から考えるためには、「カスタマージャーニーマップ」など、顧客の行動を棚卸しする手法を活用してみましょう。下図は、一般的なカスタマージャーニーマップとは異なりますが、活用しやすいためオススメです。

【ポイント2】質問の「レベル」を工夫する

 もう1つ大事な点は、質問していることの「レベル」、言い換えれば「YESと答えていただくためのハードルの高さ」です。

 たとえば、「提案力」を問いたい場合に、
「弊社の営業担当者は、お客さまに積極的に提案を行っていますか」と問う場合と、「弊社の営業担当者は、他社にはない“ハッ”とする提案を行っていますか」と問う場合とでは、ずいぶん(YESと答える)難易度が異なります。

 自社の商品やサービスをお客さまに満足いただくためには、「どの程度のレベルで対応すべきか」を踏まえて設問のハードルも上げ下げをすることが重要なのです。コンサルタントとしてさまざまな企業のCS調査に向き合ってきましたが、なかには「満足度が高くて“高止まり”している。課題が見い出せない」というケースがあります。こういったケースは、ほとんどが「低いハードル」の設問を並べていることが多いものです。何も無理矢理に低い評価を引き出す必要はありませんが、目的から見て「事業競争力につながるレベルは何か」を考えて設問に表現することは必要不可欠なのです。

 このとき、参考にしていただきたいのが「顧客価値(カスタマーバリュー)」という視点です。顧客価値のレベルを踏まえて設問のハードルの高さを設定してみるとわかりやすいと考えます。

 今回はCS調査の「企画」に焦点を当て、企画のポイントとして必要不可欠な内容をご紹介しました。もちろん、実務的にはもっと広く細かい点で注意が必要ではありますが、まずは今回ご紹介した視点で自社のCS調査が「もったいない」状態になっていないか検証してみてはいかがでしょう。

※第6回目は、12月11日掲載予定です!

日本能率協会コンサルティングについて
 日本能率協会コンサルティングは、1942年に設立された社団法人 日本能率協会の中核として70年以上、企業が抱えるさまざまな課題解決の実行支援を行っている。1991年には日本で初めて「CS経営」を提唱、数百社以上のCS向上支援を行っている。現場主義のコンサルティングスタイルであり、一過性の流行に流されない真の顧客起点での課題立案・対策推進を支援している。
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