「オリコン顧客満足度調査」の各種ランキングで1位を獲得した企業のトップへのインタビュー企画【トップの理由】。今回は、2021年の不動産売買仲介のランキングで、マンションの売却と購入、戸建ての売却と、3つのランキングで総合1位を獲得された、住友林業ホームサービス・櫻井清史社長のご登場です。櫻井さんは、親会社である住友林業での職務経験を経て、2018年4月に代表取締役社長に着任。約3年半にわたり、同社の顧客満足向上に取り組まれてきました。前編では、サービス品質を高めるために欠かせない「人材育成」について、後編では、コロナ禍における不動産仲介業界の状況や、ポストコロナ時代に向けての展望などについて語っていただきました。
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昨年来の新型コロナウイルスのパンデミックは、人々のライフスタイルや働き方に大きな変化をもたらし、「住環境」についても価値観を広げる人が増えているようです。そのような意識・行動変容が起こるなか、こと不動産売買仲介の市場においては、どのような影響や変化があったのでしょうか。住友林業ホームサービス・櫻井清史社長に、コロナ禍の業界動向について伺うとともに、新たな時代へと移ろいつつある現状を受けての今後の展望について、語っていただきました。
1.不動産仲介のマッチングアプリ? 時代進化によって起こりうる変化
──新型コロナウイルス感染症の拡大は、不動産仲介業界にどのような影響を及ぼしていますか。
櫻井さん 昨年4〜5月にかけて、弊社では対面営業ができなくなったことによる大きな打撃がありました。その後は、感染防止対策をしながら徐々に通常の営業の形に戻り、また、非対面での相談をご希望されるお客さまへの対応も進めてきました。こうした試行錯誤はありましたが、巷間言われますように、人々の住環境の意識変化やリモートワーク推奨による新たな住宅需要の喚起から、中古不動産の取引は非常に活発に行われています。
都市部では新築マンションの供給が少なく、価格も高騰したことから、中古マンションがフォーカスされました。また、郊外・戸建てへの関心も高まっています。コロナ初期は苦戦したものの、おそらく現在は、どちらの不動産会社も好業績なのではないでしょうか。
──不動産契約の現場では多くの書面が行き交い、また、複数の立場の人々が関わります。もともと慣習になかった「非対面」でのご苦労も多かったのではないでしょうか。
櫻井さん 弊社では、緊急でモバイルPCを配備するなどしましたが、正直申しますとリモートワークではできないことが非常に多い業界ではあります。対面を望まれないお客さまにも対応できるよう、取引形態の選択肢も増やしましたが、最終的な契約や決済については相対して行う場面がたくさんあります。ただ、今後については、不動産契約の「完全電子化」も議論されています。そうした法整備の変化には、いち早く対応していきたいと考えています。
──不動産仲介は、「売主」と「買主」の両者がお客さまです。DX(デジタルトランスフォーメーション)の進展で、近年はさまざまなモノやサービスのCtoC取引が活発化しています。不動産売買については、そうした動きはありますか。
櫻井さん 不動産売買は複雑な専門知識を要する取引ですので、現状はとくに聞きません。ですが、いずれは「不動産売買のマッチングアプリ」などが登場する可能性は大いにあります。シンプルな取引ならそれでも十分かもしれません。ただ、不動産売買は、「売主」と「買主」の両者の思惑が合致しなければ成立しないもの。難しい案件については、将来的にもやはり宅建士をはじめとする専門家を介して解決を図っていくのではないでしょうか。
そうした意味でも、顧客満足度を追求していくことは、今後ますます重要になってくると思います。海外のように仲介業者のエージェント制が普及すると、消費者と宅建士のマッチングは進むのかもしれません。
2.公式サイト「すみなび」大幅リニューアルの狙い
──中古不動産の取引が活発化するなか、今年1月には公式ウェブサイト「すみなび」が大幅リニューアルされました。顧客満足度の観点からは、どのような改良がなされたのでしょうか。
櫻井さん わかりやすいところでは、モバイルでの視認性・操作性を改善しました。そして、もう1つ力を入れているのが、コラム記事の充実です。現状、「すみなび」の知名度はまだまだ低く、不動産売買をお考えの方が直接流入されるケースは決して多くはありません。そこで、まずは消費者の方々に広く“不動産情報ソース”として、「すみなび」を使っていただこうと考えました。
一般の方々が不動産に関して求められている情報を外部に委託しながら研究し、それを元にした記事を掲載することで役立つ情報を「すみなび」で見つけていただき、同時に弊社を知っていただこうという取り組みです。
──「すみなび」には、オリコン顧客満足度の商標ロゴも掲載していただいています。
櫻井さん アピールは臆さずにしていくべきだと思っています。弊社の認知を広げるのはもちろん、社員のモチベーションアップのためにもですね。今回はYouTube広告にも商標を活用させていただいたのですが、査定依頼の案件数もアップして、効果は上々のようです。
また、不動産売買もすぐに決まるケースばかりではなく、3ヶ月、半年と継続してお取引きさせていただくお客さまもいます。そうした方々の、不安や疑問に答えられるように、オリコン顧客満足度の商標ロゴを活用することで、お客さまに安心してお取引をしていただきたいなと思います。
3.ポストコロナ時代、不動産仲介業としてのSDGsとの向き合い方
──ポストコロナの時代に向けては、どのような取り組みをされていますか。
櫻井さん 不動産仲介業として、どのような形でSDGsに貢献できるか。ESG経営(環境、社会、企業統治を意識した経営を行うこと)は、これからの時代において重要なトピックです。その1つとして取り組んでいるのが、親会社である住友林業が参画している「スムストック」の流通です。スムストックとは、日本語の「住む」と英語の「ストック(蓄積)」を組み合わせた造語で、大手ハウスメーカー10社の協力で設立した「優良ストック住宅推進協議会」が認定する、(共通の基準を満たす)優良な中古住宅のことを指します。
──日本は諸外国に比べ、中古住宅の価値が低いと言われています。建物の価値は25年経つとゼロになり、そのため建てては壊すスクラップ&ビルドの考え方が主流でした。
櫻井さん 中古住宅の価値が低く査定されてきたのは、補修履歴がはっきりしなかったことも要因の1つでした。現在は、国の施策として補修履歴の紐付けが議論されており、それに先立って取り組んでいるのが「スムストック」です。
住宅メーカーであれば補修履歴を正確に把握できますし、それによって正しく価値を付けることができるわけです。木造住宅は、二酸化炭素の固定化につながるとも言われていますし、「住友林業の家」のスムストックをしっかりと流通させることは、脱炭素社会に向けた弊社の使命でもあると捉えています。
──「すみなび」には、スムストック住宅を売買された方のインタビューも掲載されていますね。
櫻井さん 中古住宅といっても、オーナーさまが愛着を持たれて希少価値の高い床材を使っていたりなどする住宅も多くあり、「中古の概念が変わった」とおっしゃる買主さまはたくさんいらっしゃいます。スムストックに認定された「住友林業の家」のオーナーさまや、あるいは相続された方の思いやこだわりをしっかりと次世代に受け継ぐことはもちろん、買主さまには今後、どこを修繕すればさらに長持ちするかなどをきちんとお伝えし、スムストック住宅の流通を活発化させていきたいですね。
──御社の経営理念「お客様第一主義」では、「お客様の生涯のパートナーであることを目指す」と謳っていらっしゃいますが、家の売買はその方の人生にとって大きな出来事です。
櫻井さん 注文住宅は人生で何度も建てることはないでしょうが、仲介の場合は、たとえば結婚を機にマンションを購入、お子さまが生まれて戸建てを検討、さらにお子さまが独立されたタイミングでまたマンションへ、と循環されるお客さまも多くいらっしゃいます。そうした方々の生涯にわたるパートナーとなれるよう、1つひとつの契約でしっかりと寄り添っていきたいですね。そのベースとなるのはやはり、顧客満足度の向上です。
──最後に、今後の抱負を聞かせていただけますか。
櫻井さん 弊社は、住宅メーカーが親会社ですので、オリコン顧客満足度さんの不動産売買仲介ランキングにおいて、「戸建て」の受賞は目標の1つでした。このたび、「売却 戸建て」を受賞できたことはとてもうれしいですし、「購入 戸建て」のほうもぜひ狙っていきたいと思っています。不動産の市況は目まぐるしく変化していますので、今後はさらにスピード感を持ってお客さまの利益を最大限に考えた提案に努めてまいります。
(インタビュー・文/児玉澄子)
【インタビュー前編】
>「いかに“仲介品質”を上げるか」住友林業ホームサービスの人材育成のセオリー
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プロフィール
櫻井清史(住友林業ホームサービス株式会社 代表取締役社長)
さくらい・きよし●愛知県出身。1987年、神奈川大学を卒業後、住友林業に入社。営業人財開発など、さまざまな職務にあたる。住宅事業本部埼玉支店長を経て、2018年4月1日に住友林業ホームサービス 代表取締役社長に就任。