トップの理由

ソニー銀行、高い満足度の原動力は「総合力」で生まれるシナジーとソニーのDNA/南啓二社長インタビュー【前編】

ソニー銀行 代表取締役社長 南啓二氏

「オリコン顧客満足度調査」の各種ランキングで1位を獲得した企業のトップへのインタビュー企画【トップの理由】。今回は、「住宅ローン」ランキングで顧客満足度11年連続総合1位、「外貨預金」ランキングで2年連続総合1位をキープする、ソニー銀行・南啓二社長のご登場です。南さんは、この6月に社長に就任されたばかり。前編では、開業から20周年を迎えた「ソニーによる銀行」の独自の企業文化について。後編では、新型コロナへの対応や今後の展開イメージなどについて語っていただきました。
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 ソニー銀行は、oricon MEが発表した「2021年 オリコン顧客満足度調査 住宅ローン」ランキングにおいて、調査対象となる全国148の金融機関の中で、総合1位を獲得しました。2011年の同調査開始以来、同社による総合1位は11年連続。なお、11年という連続総合1位獲得年数は、オリコン顧客満足度調査の全ランキングにおいて最長記録です(21年8月現在)。

 ソニー銀行は、2001年の開業初年度より来店不要でインターネットと郵送で手続きが完結する住宅ローンを提供。また、近年はAIを活用したスピーディーな自動審査を導入するなど、顧客にとって利便性の高いサービスを次々に投入してきました。21年6月に代表取締役社長に就任された南啓二さんに、これまでの同行での取り組みや、今後のビジョンなど幅広いお話をうかがいました。

1.常に顧客視点を重要視、ソニーの遺伝子と精神性が息づいた「ソニーの銀行」

ソニー銀行 代表取締役社長・南啓二さん

ソニー銀行 代表取締役社長・南啓二さん

――2011年の調査開始から現在に至るまで、名だたる地銀やメガバンク系を抑えつつ11年連続で「住宅ローン」顧客満足度ランキング総合1位を獲得し続けておられます。これは当調査における最長記録になっていますが、まずは率直なご感想を。
南さん 本当にありがたいことだと感じています。お客さまの気持ちはこうだろう、ニーズはこういうものじゃないか、と真剣に考えて議論しながら作っているサービスがきちんと届き、高く評価されているという状況はありがたいことです。私たちはネット銀行ですから、いわゆるパワーセールス的なことは基本、一切できません。お客さまが選びたいものを選ぶ。当然、良いものでなければ選んでいただけません。音楽でたとえるなら、いくら「これは良い曲なんですよ」と押し付けても、聴いていただいて、さらに気に入っていただけなければそこまでということです。

 であれば、常にお客さまに寄り添った動きを意識しながら、商品やサービスを磨き続けるしかない。表層的な、たとえばツールやアプリの使い勝手が良ければ顧客満足度は上がるのかといえば、実はそうでもありません。それは必要条件の一部でしかない。良い商品とツールのブラッシュアップ、そこに社員のマインドが加わり、その「かけ算」が事業力ということになるのだろうと考えています。

――「社員のマインド」と言いますと、具体的にはどのようなことになるのでしょうか。
南さん これはいわば「ソニーの遺伝子」と呼んでも良いと思うのですが、常に顧客視点が重要視され、それが当たり前になっていることでしょうか。お客さまにとって最適な提案をする。どうやったらより多くのみなさんに選んでいただき、喜んでいただけるか真剣に考えることが出発点になっていて、それはハード機器なり音楽コンテンツなり金融なり、ソニーグループ(※1)の中で共通する価値観なんです。

 そうしたソニーのマインドがベースになっている金融機関がソニー銀行であり、結果として顧客満足度にも直結しているのだろうと思います。私は、「ソニーの銀行」の代表取締役になったのだと理解していますので。

※1 ソニーは21年4月、グループ本社機能にフォーカスした会社として、ソニーグループに名称変更。エレクトロニクス事業を担うソニーエレクトロニクスが「ソニー株式会社」の商号を継承した。

――都市銀行でキャリアを積まれた後に大手ITに移り、ソニー銀行に入行するという経歴をお持ちですが、やはりそれぞれに企業文化は異なるものなのでしょうか。
南さん 明らかに違いますよ。私はソニー銀行に入った後の一時期、ソニーペイメントサービス(旧・スマートリンクネットワーク)で仕事をしていましたが、システム障害などが発生すると、当然ですが怒られるという経験も何度かしています。その怒られ方が非常に特徴的でした。それは「こういうことじゃ困るじゃないか」というのは一緒でも、その理由が「これで何人のお客さまが困ったと思っているんだ!」というもの。

 監督官庁をはじめ上から叱られるなどという話ではなく、お客さまの期待するサービスが提供できないことで怒られる。当時は赤字の会社でもあったので、もちろん売上を伸ばすことが大事なのですが、そのためには何より「お客さまの期待に応えられる商品を用意すべし」という発想なんです。期待に応えられる商品を作れば売上は伸びていく。そういうマインドが出発点にあるグループであるというのは、とても素晴らしいと感じています。

2.至るところで生まれる相乗効果、ソニーグループであることの強み

ソニー銀行のオフィス

ソニー銀行のオフィス

――ソニーフィナンシャルホールディングス(ソニー生命、ソニー損保などを傘下に持つ金融持株会社/以下、SFH)の要の1つであり、当然ソニーグループの一員でもあります。グループ内でのやりとりや、そこから生まれる化学反応はどのようなものでしょうか。
南さん 20年9月にソニーグループ株式会社による完全子会社化が完了し、SFHは21年10月1日よりソニーフィナンシャルグループという名称に変更、ソニーグループ株式会社の下で、金融事業のグループ一体経営をさらに推進していこうという形になっています。たとえば、ソニー生命保険のライフプランナーに住宅ローンの取り扱いをしてもらうなど、さまざまな横串は現在でも展開しています。

 また、ソニーグループとの連携もより強化されてきています。アプリやUIのブラッシュアップといったデザイン性はもちろん、物事を整理したりコンセプトを固めたりという面でもソニーグループのクリエイティブセンターにアドバイスをもらうなど、至るところに「ソニーの考え方」が入ってきています。お客さまとの直接的な接点となるところはとくに丁寧にやろうということですね。

 少し趣旨は異なりますが、化学反応という意味では、当社とソニー・グローバルエデュケーション、ソニーデザインコンサルティングがタッグを組んだ「Kids“Power”Project」という小学生向けのオンライン型プロジェクト(社会で挑戦している人からリアルな学びを得ながら、自身でもアイデアを形作り発表することで学びを得るというもの)なども挙げられます。

今年5月に行われた、小学生向けオンライン型プロジェクト「Kids“Power”Project」の様子

今年5月に行われた、小学生向けオンライン型プロジェクト「Kids“Power”Project」の様子

3.「テクノロジー面」でのソニーグループ本体とのコミュニケーション

――単純な発想で恐縮ですが、やはりソニーといえば「テクノロジー」というイメージがあります。ソニーグループ本体とのテクノロジー面でのコミュニケーションはあるのでしょうか。

  • テレプレゼンスシステムを活用したリモート相談の模様。コロナ禍の状況を鑑みて、急遽トライアルをスタートさせた

    テレプレゼンスシステムを活用したリモート相談の模様。コロナ禍の状況を鑑みて、急遽トライアルをスタートさせた

南さん 当社では、住宅ローンのAI審査は2018年から稼働させていますし、書類をアップロード対応することで郵送の手間を省くほか、「電子契約」の仕組みも導入するなど、ペーパーレス化も進んでいます。

 ソニーグループとは、研究開発組織であるR&Dセンターが開発していた「テレプレゼンスシステム(※2)」を活用したリモート相談なども昨年来のコロナ禍で急遽、現場に投入、トライアルしたりもしています。また、ソニー製の映像制作支援ユニットを活用したオンラインセミナーの配信なども行っています。

テレプレゼンスシステムを活用したリモート相談の模様。コロナ禍の状況を鑑みて、急遽トライアルをスタートさせた

 ソニーフィナンシャルグループ内の交流に加え、ソニーグループ全体でより一体となっていこうという気運が高まっていますので、(ソニーグループに)相談すればレスポンスは早い。こんなことが実現できないか?と思ったときに、グループ内にかなりの確率でソリューションやその萌芽がすでに存在していたりする状況というのは、ソニーという企業グループの大きな強みの1つだと思います。

※2 4K超解像技術やテレプレゼンス環境に最適化した視認性制御技術、および4K映像の縦型配置に関するノウハウを活用することで、離れた場所同士であっても“同じ空間にいるような自然なコミュニケーション”を実現するシステム。

――まさに世界に冠たるソニーという、グローバルブランドの備えた底力ということですね。
南さん あくまでこれは私見になりますが、ソニーというのはグローバル企業ではあるものの、グローバル企業ほどドライすぎず、かと言って日本企業としてウェットでもない。特殊な立ち位置を維持していると思います。その特殊性のベースになるのが、先ほども申し上げたような「人の気持ちに忠実な商品を」というマインド。

 決して収益性が先に来ることはなく、儲けようと思って商品やサービスを作るわけでもないんですよ。売上や収益は後からついてくるもの、という考え方は、他のグローバル企業などからは、なかなか不思議なやり方に見えるのではないかと思います。 (インタビュー・文/及川望)

【インタビュー後編】
>住宅ローン残高が昨対比20%超え コロナ禍でも好調のソニー銀行の姿勢
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プロフィール

南啓二(ソニー銀行株式会社 代表取締役社長)

南啓二(ソニー銀行株式会社 代表取締役社長)
みなみ・けいじ●徳島県出身。1990年、早稲田大学大学院を修了、三和銀行(現・三菱UFJ銀行)入行。2008年よりヤフー株式会社へ。10年、ソニー銀行株式会社へ入社。マーケティング部長を経て株式会社スマートリンクネットワーク(現・ソニーペイメントサービス株式会社)取締役執行役員常務、取締役専務執行役員。19年よりソニー銀行で執行役員・執行役員常務を歴任、21年6月より代表取締役社長に就任。趣味はランニングで、フルマラソン経験もある。