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CS推進に必要な体制とは? 多企業が採用する「3つの体制」を紹介【CS推進 一年生 #3】

連載「CS推進 一年生」 第3回「体制づくり」

CS(顧客満足)推進のプロセス・考え方をイチから解説する連載コラム「CS推進 一年生」。40年にわたり日本産業の成長を支援する総合コンサルティングファーム・日本能率協会コンサルティングに在籍するコンサルタントが、全15回にわたって顧客満足向上に向けた基礎を紹介します。“CS初心者=一年生”はもちろん、「改めてベースから振り返ろう」という方にも適していますので、ぜひご活用ください!
>連載「CS推進 一年生」記事まとめ

第3回目のテーマ
体制づくり
講師
日本能率協会コンサルティング(外部リンク)


 連載3回目の今回は、「体制」について解説します。

 第1回(「CS経営って何? 取り組む意味と考え方のポイント」参照)で、「CS経営に必要な機能」は以下の5つであると紹介しました。

(1)事業戦略と直結しビジョンを示す機能
(2)顧客の声を組織に取り込む機能
(3)満足を実現し再利用・紹介につなげる機能
(4)CS実現人材を育成する機能
(5)取り組みを支える機能

 今回はそのなかの(1)(3)(4)(5)を機能させるために必要な体制について解説していきたいと思います。((2)については、顧客満足度調査やその他の方法について、同連載の中で今後説明していきます)

1.CS経営を推進するため、多くの企業が取り入れる「3つの体制」

 CS経営を推進するためには、前述の通り5つの機能を発揮していく必要があります。そのためにはどのような体制が必要でしょうか? 多くの企業では、以下のように3つの体制を取り入れています。

CS経営を推進するため、多くの企業が取り入れる「3つの体制」

(1)委員会…企業のトップによる意思決定と支援のための体制

企業トップのイメージイラスト

 まず考えるべきは、「企業のトップ参画による意思決定の場」です。一般的には、「CS向上委員会」や「CSステアリングコミッティ」といった名称の会議体(以降、「委員会」とします)が作られています。多くの場合、社長もしくは役員が責任者を担い、事業部門や機能部門の責任者が参画する体制で、毎月か隔月といったスパンで実施されることが多い会議体です。

 CS向上への取り組みは、「顧客に言われたことをやる」「要望に応える」という、受け身だけの取り組みではありません。自社が競争に打ち勝ち、安定的な成長を続けるために「誰にどのような価値を提供すべきか」を明確にする必要があります。

 そのためには、「トップに決めてもらわないと困る」わけです。トップが「顧客はすべて大事だ」と言うならばそれも1つの答えですが、やはり戦略である以上「選択と集中」は必要不可欠です。わが社はどういう顧客を大事にしていくのか、どういう顧客を増やしたいのか、そのために何で勝負するのか。そういった方向性を、トップには示していただく必要があるのです。

「委員会」では、CS向上のための課題や対策の議論、進捗確認なども行う必要があります。また、各部門や担当者だけでは大胆なリソース配分や意思決定がしにくい面があり、こういった「委員会」での支援は必要不可欠なのです。企業によっては「委員会は半年に1回」というケースがありますが、顧客も競合も社会もまさに「激変続き」の昨今、半年に1度の意思決定・軌道修正ではいかにもスピード感がありません。最低でも2ヶ月に1回程度の開催が必要だと考えます。

(2)事務局…全体を管理・調整し取り組みを推進する体制

事務局のイメージイラスト

 次に必要なのは、一般的に「CS推進事務局」(以降、「事務局」とします)と呼ばれる体制です。CS推進部といった組織ユニットとして構成されるケースがほとんどですが、まれに複数部門からプロジェクト的に招集・編制されるチームの場合もあります。後者も実務的で良い面がありますが、やはり各自の定常業務・本来業務として位置づけるほうが着実に役割発揮できるものと考えます。

 事務局の主な役割は前回第2回目の「CS推進担当の主な活動スケジュールとは? 事例とともに紹介」で解説をしていますので詳細はそちらを参照してください。

 事務局が役割発揮をするためには、やはり自社・事業の全体を理解している人が責任者を担うことが重要です。CS推進は事業にとって付加的な活動ではなく、あくまでも事業活動そのものであり、事業活動を「顧客視点で変革する」ことにほかなりません。単に、顧客満足度調査を実施して、その結果を各部署に展開するといった役割ではないのです。

 従って、極めて現実的に自社の製品・サービスや顧客、市場や競合のことを理解している必要があります。逆に言えば、事業直結の活動であるからこそ「取り組んでいて面白い」とも言えるのではないでしょうか。

(3)テーマ別チーム…個々の課題・対策を実行する体制

語り合うビジネスマン

 3つ目の体制は、顧客に満足が提供できるよう、業務のあり方、人の行動、製品やサービスそのものを変革するチームです。多くの企業では、顧客満足度調査の結果の「受け皿」、すなわち問題認識 → 課題立案 → 対策実行は、組織図上の組織ユニット(本部、部、課など)に委ねられていることが多いです。

 しかしながら、常設の組織ユニットは原則として、企業都合で構成されています。一方で、CS上の問題は顧客都合で発生します。したがって、あくまで顧客期待を満たすための「テーマ別チーム」として編制する必要があるのです。

 具体的には、解決すべき問題、言い換えれば顧客期待に対して、そのテーマに必要なメンバーを各部門・部署から招集するべきだと考えます。最も思考停止的な編制は、「この顧客はA製品の利用者なので、A事業部に任せよう。そして、事業部内で顧客対応を担う営業が、具体的に検討して対応することにしよう。」という類いのやり方です。

 顧客接点すなわち顧客が体験する製品・サービスは、営業だけではなく開発・製造・業務部門・店舗などさまざまな組織ユニットが関係し合い、連鎖して機能発揮した結果、生み出されています。A事業部に任せるところまでは良いとしても、そのなかでさまざまな関係者が連携して取り組む必要があるのです。貴社ではどのような「チーム」が編制されているでしょうか? 改めて考えてみましょう。

2.各体制の主な役割と編制・活動上のポイント

体制

役割

ポイント

委員会

CS推進委員会など

●事業戦略における顧客と提供価値の明示。

●CS取り組み全体の方向付け

●課題・対策の承認やリソース配分を通じた支援。

●社長もしくは役員を責任者とし、事業・機能の責任者が参加すること。

●会議体としては、最低でも2ヶ月に一度開催すること。

●経営会議など、既存・常設会議体の1議題として計画的に位置づけることも可。

事務局

CS推進部など

●推進体制と仕組みづくり。

●委員会への議題、提案の立案・提起。

●テーマ別チームと連携した課題立案・対策実行、および支援。

●一般的には顧客満足度調査など、全社的な顧客理解の企画・推進。

●事務局長は自社の事業全体、機能・業務全体を理解していることと、社内的に広範囲なネットワークを持つことが理想。

●一般的には(年一度などの)顧客満足度調査がメインイベントになりやすいが、本来は下記の「テーマ別チーム」との連携を通じたCS向上推進の役割発揮が重要。

テーマ別チーム

必要部門から
招集されたメンバー

●顧客満足度調査や、その他の顧客理解からの問題発見。

●CS向上のための具体的な課題立案および対策の実行。

●円滑に課題や対策を決めるためには、部課長クラスの参加は必須。

●ただし、具体的な改革・改善を行うために実務精通者の参画も必要であり、固定的なメンバーと随時支援を求めるメンバーを分けて編制することが望ましい。

 次回、第4回目は、「顧客の声・評価の収集方法と使い分け」について解説します。

【次の記事】

>コミュニケーションを通してお客さまを知る!顧客の声・評価の収集方法と使い分け【CS推進 一年生 #4】

日本能率協会コンサルティングについて
 日本能率協会コンサルティングは、1942年に設立された社団法人 日本能率協会の中核として70年以上、企業が抱えるさまざまな課題解決の実行支援を行っている。1991年には日本で初めて「CS経営」を提唱、数百社以上のCS向上支援を行っている。現場主義のコンサルティングスタイルであり、一過性の流行に流されない真の顧客起点での課題立案・対策推進を支援している。
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