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CS推進担当の主な活動スケジュールとは? 事例とともに紹介【CS推進 一年生 #2】

連載「CS推進 一年生」 第2回「担当者の活動スケジュール」

CS(顧客満足)推進のプロセス・考え方をイチから解説する連載コラム「CS推進 一年生」。40年にわたり日本産業の成長を支援する総合コンサルティングファーム・日本能率協会コンサルティングに在籍するコンサルタントが、全15回にわたって顧客満足向上に向けた基礎を紹介します。“CS初心者=一年生”はもちろん、「改めてベースから振り返ろう」という方にも適していますので、ぜひご活用ください!
>連載「CS推進 一年生」記事まとめ

第2回目のテーマ
担当者の活動スケジュール
講師
日本能率協会コンサルティング(外部リンク)

1.企業ごとに少々異なる「CS推進部」

会社で意見交換する社会人

 連載1回目となった前回は、CS(顧客満足)経営についてお話ししました(第1回「CS経営って何? 取り組む意味と考え方のポイント」参照)。第2回目では、CS推進の担当者となった方が担う役割や活動内容について具体的にご紹介します。

 多くの企業はCSに取り組むようになって推進部門をつくりました。代表的な名称はもちろん「CS推進部」です。そのほかにも、製造業であれば品質保証部やISO(国際標準化機構の名称)担当部署に所属していることもあります。品質保証部やISO担当部署は「CS調査」を実施していることが多く、その関係でCSを担当していることがあります。CS調査は第1回でお話しした5機能にかかわる重要な活動の1つであり、CS調査を担当する部署がCS推進を担当するというケースは多く見られます。

2.CS推進担当者の具体的な活動と事例

 では、CS推進担当者の役割とは、どのようなことでしょうか。文字通りCSを推進する役割を担うのですが、その主たる内容は第1回でお話ししたCS経営を実現するために必要な「5つの機能」にあります。今一度、5つの機能を振り返りながら、取り組むべき活動を事例とともに見ていきましょう。

(1)事業戦略と直結しビジョンを示す機能

ポイント1

 戦略やビジョンを示すのはトップの役割ですが、トップからメッセージを引き出し、社内で共有するために働きかけることがCS推進担当者に求められます。また、トップが戦略やビジョンを考え、振り返るためにお客さまの声や評価、顧客接点の実態などを報告していくことも重要です。

(1)の活動事例
ある企業は、トップがどんな取材を受けても「CS」というキーワードを織り込んで話すようにしました。これは、お客さま向けだけでなく、社員にも自社がCSを重視していることを伝えようとしたCS推進部門の企画でした。CSの啓蒙活動を重視していたと考えられます。


(2)顧客の声を組織に取り込む機能

ポイント2

 顧客の声を取り込むには、顧客接点部門の役割が大きいですが、「どのような顧客」の「どのような情報」を「どのように取り込むか」を企画するのはCS推進部門の仕事です。また、CS推進部門が中心となって企画・実施するものにCS調査があります。CS調査は目的や事業特性によって実施方法・内容はさまざまですが、CS調査がCS推進部門のコア活動の1つです。そして、収集した顧客の評価や声を社内で共有するのも重要な活動です。

(2)の活動事例
ある企業のCS推進担当者は、CS関連情報を共有するために、従業員用のエレベーターでの掲示、朝礼用に動画配信、部署別の報告会など、さまざまな方法をとっていました。「CS調査の結果やお客さまの声を社内のデータベースに掲載しても、見ている人が少ない」という悩みをよく耳にするので、このような工夫も求められます。


(3)満足を実現し再利用・紹介につなげる機能

ポイント3

 CS視点での改革・改善に取り組むために体制構築や部門間調整、進捗確認などの「事務局機能」を発揮していくことがCS推進部門の活動です。これはCS調査同様、CS推進部門の定常活動として重要なものの1つです。事務局として行うべき行動で言えば、トップからなるCS委員会や各部署でのCSミーティングの開催や参加、各部署の改善活動チームづくりの支援、各部署の活動のコア人材となるCS推進リーダーの任命、顧客視点での開発や再利用・紹介促進策の検討といったことがあります。CS推進部門(推進事務局)は一般的にトップ直轄のスタッフ部門です。CS活動の主となるライン部門との体制づくりを上手くすることが成功のポイントです(体制面については、第3回で詳しくお話しします)。

(3)の活動事例
ある企業では、各現場のCSミーティングに参加するために、部署ごとにCSミーティングの開催タイミングを固定しました。これによって重複がなくなり、多くのミーティングに参加することが可能になりました。また、参加することで議事録などの負担を減らしました。さらにミーティング内容に対して推進担当者からコメントをフィードバックしました。こういったちょっとした工夫も重要になります。


(4)CS実現人材を育成する機能

ポイント4

(3)でお話ししたCS推進リーダーの育成や、各種CSに必要な教育を企画・運営していくこともCS推進部門の活動です。かつては、「CS=マナー・身だしなみ・言葉遣い」といったように矮小化され、そういった研修程度しか実施しない企業も散見されました。それでは成果は出ません。CS向上の取り組みは、本質的な業務・サービス・製品改善となります。したがって、人材育成部門とも連携しながら、CS視点での育成をしていくことが重要です。

(4)の活動事例
 ある企業では、CSの取り組みが「本来業務+CS改善活動」というような位置づけになってしまい、「今、本来業務が忙しいので、ちょっとCS活動ができません」という雰囲気が蔓延していました。担当者はその現状を打開するため、CSの取り組みは本来業務であり、プラスアルファの活動と捉えられないように、改善・改革活動を、さまざまな部署の担当者やマネジャーを巻き込んで実践を促進していくことで立て直しを図りました。


(5)取り組みを支える機能

ポイント5

 CS推進部門には(1)でお話しした「トップの意思決定を引き出す」、(3)でお話しした「活動の場・プロセスを維持改善する」ということに加え、「給与・処遇・表彰等で報いる」という役割が求められます。

(5)の活動事例
 ある企業では、CS推進担当者が毎週売場をまわって販売員とコミュニケーションをとっていました。ここでビジョンを普及し、CSの重要性を伝え、CS向上の実感や課題を確認し、モチベーションを高めるといった活動をしていました。1年後には、「この会社はCSに本気だと思う」、「お客さまへの関心が高まり、仕事のやりがいも出てきた」という声が高まりました。こういった草の根活動も重要です。

 評価・表彰はさまざまな視点で企画してみましょう。CS評価が最も良かった部署、仲間から最もCSに熱心だと認められた社員、などいろいろありますよね。また、「サンクス・カード」と呼ばれるような取り組みをしている企業も多く見られます。助けてくれた仲間に「ありがとう!」の気持ちを伝えるカードです。「今日は○○でフォローしてくれてありがとう!助かりました!」といった内容です。このカードを最も受け取った、あるいは発行した社員といった表彰にもつながります。

3.担当者の一般的な活動スケジュール

スケジュールのイメージイラスト

 では、CS推進担当者の活動スケジュールの例を見てみましょう。

 まず、スケジュールのポイントとなるのは、CS調査です。例えば、会計年度が4月スタートの企業の場合、次年度計画を立案するのが12月〜1月あたりにかけて行われます。そのタイミングでCS調査結果を反映して計画立案するために、11月頃にCS調査結果を出す必要があります。そこから逆算して、調査企画をいつから始めるかをスケジューリングします。

 毎週・毎月・四半期・半年の各タイミングで実施する活動もあります。会議体は頻度と議題を決めて計画しておきましょう。その他、各部署の繁忙やCS推進部門の繁忙なども考慮しながら、各活動をスケジューリングしていきましょう。

CS推進担当者の年間スケジュール例

 これまで見てきたことがCS推進部門の代表的な活動、典型的なスケジュールです。しかし、現実にはCS推進部門が何人体制か、専任か兼任かといった「どの程度の時間を投入できるのか」ということが活動範囲やスケジュールを左右します。活動の優先順位をつけて取り組みましょう。

 CS推進部門は、「管理主義」ではなく、「支援主義」であることが重要です。現場から報告の類を求めることは最低限にし、現場が求めていることに応えていくようにしましょう。

 次回、第3回目は、CS推進に必要な「体制づくり」について解説します。

【次の記事】
>CS推進に必要な体制とは? 多企業が採用する「3つの体制」を紹介【CS推進 一年生 #3】

日本能率協会コンサルティングについて
 日本能率協会コンサルティングは、1942年に設立された社団法人 日本能率協会の中核として70年以上、企業が抱えるさまざまな課題解決の実行支援を行っている。1991年には日本で初めて「CS経営」を提唱、数百社以上のCS向上支援を行っている。現場主義のコンサルティングスタイルであり、一過性の流行に流されない真の顧客起点での課題立案・対策推進を支援している。
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