コラム

CS推進部門を立ち上げるとき、必要な準備・取り組みって何?【武田哲男のCSお悩み相談室 #2】

CS(顧客満足)やES(従業員満足)に関する疑問・お悩みを解決していく連載コラム「武田哲男のCSお悩み相談室」。著書100冊以上、40年以上にわたり現場重視のCS(顧客満足)経営コンサルティングを手がけてきた武田哲男氏が、みなさんから寄せられた質問に答えていきます。

※第3回目は、11月20日掲載予定!
 こちらの応募フォームより、ぜひ疑問・お悩みをお寄せください!

第2回目のお悩み
新しくCS推進部門を作りたいと考えていますが、どんな体制を作り、取り組みを行ったら良いかわかりません。

投稿者データ

年齢

40代

業種

不動産業・デベロッパー

職場での立場

係長

主な仕事内容

商業施設(ショッピングセンター)の管理・運営

職場のおおよその人数

15名

改めて「管理」の意味を確認し、CSの本質を理解しましょう

 こんにちは、武田哲男です。さて今回は、不動産・デベロッパー業の方からのCSスタートの具体的な取り組みステップに関するご相談です。不動産・デベロッパーをお仕事とするその中核にあるのは、あくまでも顧客満足(CS)・顧客の幸せ創造です。では、その顧客とは誰のことを意味するのでしょうか?

 まず、貴社の直接的な顧客は、商業施設(ショッピングセンター)運営企業であり、そこに関連するステークホルダー(最終消費者、生活者、ユーザー・ビジネスの取引先、地域社会、行政、株主)と、そこで働く社員・従業員(含・非正規社員、派遣社員など)となります。こうした総体的な面に関する「管理・運営」を担っているのが御社なのです。

 さてこの場合、間違えてならないのは「管理」の意味です。

 右肩上がりの経済成長時は、黙っていても経済環境が業績を押し上げてくれていました。ミスや失敗さえしなければ結果として業績好調であったため、当時は「ミスを犯さない」「失敗しない」ためのチェック・ミスの発見が上司たちの「管理」の主流となっていました。しかし、その後の経済環境は振るわず、低成長ないしは下降線をたどるに従い、「定点に留まる」「現状維持」「ミスを犯さない」管理では、業績が下がってしまう状況に至ったのです。

 管理職で言えば、部下やスタッフに対する上から目線のチェック・ミスの発見、アラ捜し型の「管理=作業(事務的・処理型・機械的)」がこれまでは主流でした。しかし、こういった管理方式では付加価値は生まれず、定点に留まる取り組みでは業績低下を招き、スタッフのやる気を削いでしまいます。そのため、だんだんと「管理=仕事(付加価値創造)」による業績向上、事業の成長・発展を目指し顧客満足・幸せ創造に注力する取り組みへと変化しました。

 つまり、組織内においては、スタッフのアシスト・サポート・アドバイスに力を注ぎ、企業の業績向上に貢献する能力を有する人が「管理職にふさわしい人財」へと変化。一方で、経済成長時のような上意下達の指示・命令方式、ミスを犯さないための管理ではかえって業績を落としてしまうために、「管理職としては失格」となったのです。

 これは建物の管理においても同様。従って、貴社デベロッパーの管理・運営の任務は、地域社会を含むステークホルダーの満足・幸せ創造による商業施設の発展、成長、業績向上のためのアシスト・サポート。貴社がCS推進部門を設けた際のメンバーたちの具体的な仕事内容は、日頃からマイナス要素を生まないプラス志向の点検や施設メンテナンスを行うこと、顧客の要望・困っていること・不満を調べ事前に課題解決を行うこと、またコストダウンにも前向きに取り組み貢献することなどになります。

企業上位の従来型組織図

企業上位の従来型組織図

アシスト型組織図・独楽型組織・逆さまのピラミッド

真のCS、CSM(顧客マネジメント)を全社で理解し身につけるため、まずは勉強会の開催を

 企業活動は、トップはもちろんのこと「トップ層」「管理職」「社員」が、こうした基本的な考え方・価値観を共有することが大切です。とくに企業経営は、上位者が熱心でなければならない道理ですから、改めて真のCS、CSM(顧客マネジメント)を理解する勉強会の開催がスタートです。

 全社で企業理念・経営理念・経営哲学を共有し、主旨を理解することで価値観ブレのない実活動が進み、業績向上に貢献するのです。つまりCSとは、ビジネス社会の表現であり、ビジネスの目的は顧客満足による業績向上と企業発展にあります。

 強引に売りつける、ごまかす、だますなどによる売上向上(その瞬間は売上目標を達成しても、その後、購入した人たちは懲りて継続購入しないばかりかマイナスの口コミを広げ、次第に売った分だけ顧客を失い、業績を落とし続けるのが常です)ではなく、「顧客との良質で永いご縁の創造」「業績=顧客の支持率達成」が重要な本質なのです。

 ここで四国の香川県・高松に本社を構える穴吹興産(設立1964年)の事例をご紹介しましょう。

 不動産関連事業を手掛ける同社は、業種が異なる連結関連会社30数社間で構成されています。約20年前は百数十人だった従業員数は、本社単体で449人、連結では3257人(2020年6月30日現在)。常に右肩上がりの成長・業績向上に邁進し続けています(一部上場)。

 なぜ成長し続けられているかといえば、それはステークホルダーの高い満足を得ているからです。そして、その前提には、常にあくなき業績向上を目指し、顧客満足・幸せ創造に皆で真剣に取り組む姿勢があります。

 前述したように、同社は業種が異なる連結関連会社30数社で構成されていますが、組織異動・人事異動はその30数社で行います。従ってまったく異なる企業規模・業種体験により各業種の特性や経営を理解でき、そのぶんだけ「アシスト・サポート能力=管理能力」を身につけることができます。そういった体験を積んだ人がグループ会社の管理職となるのですから、それぞれ異なった業種の企業と手を携え、相乗効果と高付加価値を創造し、顧客満足(CS)・従業員満足(ES)を得て顧客に支持され発展し続けているのです。

 たとえば、株式会社穴吹ハウジングサービスは、24時間365日体制の「あなぶきコールセンター」を設置。気軽な相談・問い合わせ対応が、お客さまの信頼を得ています。また、きめ細かな建物診断、修繕計画に基づいた管理品質を保持するメンテナンスの実施など、顧客の満足を叶えるための積極的な取り組みも積み重ね、地域社会に安全・安心・快適・便利を提供している会社として評価を受けています。

CS推進室は、トップと直結した組織にすることが重要!

 では、具体的にCS推進室の設立についてですが、トップと直結する組織が好ましい姿です。

 先にご案内した「管理」の趣旨からすると、トップがアシスト・サポートを行う体制です。下から次第に上に上げていくボトムアップ方式では時間を要し、また往々にして大切なこと、管理職にとって都合の悪いことが途中で消えてしまいトップに届かないからです。トップダウンとボトムアップの好循環が望ましいスタイルなのです。

 CS推進室のスタート時には、まずは調査やヒアリングなどによりステークホルダーの施設に対する率直な意見を知る取り組みをします。また、テナントの困っていること、要望、不満等の意見を調べ、さらなる課題解決活動に取り組むといった場(プラットフォーム)と体制を構築していくのです。

 そこから浮き彫りになる要素が全社活動の課題となり、課題に応じたプロジェクト編成により、取り組み、実活動が進むのです。プロジェクト進捗状況は、普通3ヶ月ごとに数値の伴った報告が組織内でなされるのが一般的。こうした活動実態を年に数回施設側に伝えることで、それがステークホルダー・施設自社の満足とハピネスが場(プラットフォーム)となり、付加価値でつながり(コネクト)、螺旋状の発展・上昇機運へと進み続けることができるのです。

●上意下達の指示・命令方式、ミスを犯さないための「管理」はNG。

●貴社の管理・運営の任務は、地域社会を含むステークホルダーの満足・幸せ創造による商業施設の発展、成長、業績向上のためのアシスト・サポート。

●CS推進室を作る前に、まずは真のCS、CSM(顧客マネジメント)を全社で理解しましょう。そのためには、勉強会の開催がオススメ。

●CS推進室は、トップと直結した組織にすることが重要。

●推進室が立ち上がったら調査などから要望、不満等を浮き彫りにして、課題に取り組むための体制を整え、実践的に解決しましょう。

●進捗状況は、3ヶ月ごとに数値の伴った報告が組織内でなされるのが一般的。

※第3回目は、11月20日掲載予定!
 以下の応募フォームより、ぜひ疑問・お悩みをお寄せください!

プロフィール

武田哲男(たけだ・てつお)
武田マネジメントシステムス 代表取締役

 服部時計店(現・SEIKOホールディングス)入社後、銀座・和光で小売部門を経験。以来、サービス・CS分野のパイオニアとして、企業規模・業種・業態を問わず、多くの企業活動の実務に参加している。日本初のCS・CSM(CS Management)実務書『CS推進ここがポイント』(日本能率協会)をはじめ、『なぜ、あの企業の「顧客満足」はすごいのか? あなたがサービス・製品を選ぶ本当の理由』、『顧客「不満足」度のつかみ方・活かし方』(ともにPHP研究所)など、著書は100冊以上。CS・顧客サービス研究所、武田マネジメントシステムス代表取締役のほか、豊富なキャリアから一般社団法人エチケット・サービス向上協会 代表理事や、クレーム関係のセミナー・講師なども務める。

>武田マネジメントシステムス 公式ホームページ(外部リンク)