コラム

これで失敗しない!「顧客の声」を活用し、成果につなげる方法【CS推進 一年生 #7】

連載「CS推進 一年生」第7回目

CS(顧客満足)推進のプロセス・考え方をイチから解説する連載コラム「CS推進 一年生」。40年にわたり日本産業の成長を支援する総合コンサルティングファーム・日本能率協会コンサルティングに在籍するコンサルタントが、全15回にわたって顧客満足向上に向けた基礎を紹介します。“CS初心者=一年生”はもちろん、「改めてベースから振り返ろう」という方にも適していますので、ぜひご活用ください!
>連載「CS推進 一年生」記事まとめ

第7回目のテーマ
顧客の声の収集・活用時のポイント
講師
日本能率協会コンサルティング(外部リンク)

1.顧客の声が活用できていない陥りがちなパターン

 連載第4回「コミュニケーションを通してお客さまを知る!顧客の声・評価の収集方法と使い分け」でお話ししたように、今日ではなんらかの方法で顧客の声を収集している企業がほとんどです。しかし、目的に応じて行うインタビューとは違い、日々大量に寄せられる顧客の声は有効活用できていない企業も少なくありません。なぜでしょうか?

<陥りがちなパターン>
●人の手で読み込んでいくと時間がかかるので腰が引けている
●活用できる声が少ないと嘆いている
●分析がうまくできず、潜在ニーズを踏まえた開発ができていない

 今回はこれらの壁を乗り越え、顧客の声を有効活用するポイントをお話しします。

2.【ポイント】「割り切って」効率・効果的に声を読み込む

 定量的なデータと違って、顧客の声を分析すること、すなわち人の手で読み込んでいくには時間がかかります。顧客の声が大量にある場合、なんらかの考え方で読み込む対象を絞り込むという割り切りが必要になります。その手段としては、大きく2つ。「(1)サンプリングで読み込む声を一定数に絞り込む」、「(2)テキストマイニングソフトで広く浅く読み込む」という方法があります。

 人が読み込む場合は(1)の割り切り方があります。もちろん、「全数読まなくていいのか?」という疑問や心配、あるいは経営からの要望があると思います。たしかに、声の活用で重要なことの1つは「価値あるひと言」の発見です。量的に多く寄せられている声はおおよそ周知の内容であり、大きな発見はありません。たった1人だけど我々に示唆をもたらす内容だな、という価値あるひと言をすくい上げることに意義があります。

 そうなると、いよいよ全数に目を通さなくていいのか?となりますが、もちろんそれができるのであればベストだといえます。しかし、実際には投入できる人的リソースには限界があります。その現実の中で、サンプリングで数を絞り込み、その代わりに深く読み込むという割り切りの考え方です。

 テキストマイニングソフトを使えるのであれば、その機能を使って全数読み込むことが可能です。これが割り切り方(2)です。テキストマイニングソフトとは、テキスト情報を読み込んでキーワードランキングなどをアウトプットしてくれるソフトです。価値あるひと言の発見は人でなければ難しいのですが、その代わりに到底人では読み込めない量をスピーディに分析してくれます。「人の手」と「先端技術(ソフト)」では、強み・弱みが異なります。うまく使い分けることもポイントです。

「人」と「ソフト」による分析手法の強み・弱み

3.【ポイント】顧客接点部門のスキルアップで使える声を増やす

 以前は、顧客の声をどのように集めるか?ということ自体が課題の1つでした。しかし、顧客の声の収集が容易になった今、声の収集における課題は、収集する声の量的拡大ではなく質的向上です。いかにして「活用できる声」を集めるか。そのためにオススメしたいのが、連載第4回でも少しお話しした「顧客接点部門による声の収集」です。

 顧客に声の発信を委ねると、「このコメントってどういう意味だろう?」「寄せられた声について、もっと詳しく知りたい」と、“不完全”で終わってしまうケースが多く見受けられます。「今度の新商品、ヤバいです!」と書かれても、果たしてその商品が良いのか、悪いのかわかりませんよね。それに対して、(営業やオペレーターなど)顧客接点部門の担当者による声の収集は、スキルアップをすれば質の良い声を収集することが可能になります。求められるスキルは大きく2つです。

顧客接点部門に求められる2つのスキル

●インタビュースキル
→質問・意見・要望・苦情の背景にある出来事や理由などを聞き出すスキル
 インタビューといっても長い時間をかけるわけではないので、お互いの事情が許せばちょっと聞いてみるという感覚でOKです。しかし、そのちょっと聞いてみたことが重要です。たとえば、洋菓子売場で「アルコールを使っていないケーキはありますか?」と小さいお子さま連れのお客さまに聞かれたら、アルコールを使っているケーキをご紹介するだけでなく、「アルコールの何を気にされていますか?」といったことを聞けると、開発や改善にとって有益な情報になります。

●ライティングスキル
→インタビューした内容を記録するスキル
 書き残したほうが良いことは、インタビューで聞き出した背景にある出来事や理由です。言動はなるべく丸めずに具体性を残して記録しておくことがポイントです。

 これらによって、顧客の声を宝の山に近づけていきましょう。

4.【ポイント】「期待変換」で潜在ニーズをつかむ

 顧客の声はいろいろな表現がとられます。代表的には、「お褒め」「要望」「苦情」「質問」といったものです。顧客の表現ごとに異なった活用をするケースが多く、前出の代表例だと「お褒め=表彰」「要望=開発」「苦情=お詫びや改善」「質問=Q&A」というような活用の仕方がよく見られます。

 しかし、どんな表現をとられていても、その奥には「期待」があるはずです。お褒めは期待に応えることができ、苦情は期待を踏みにじったのでしょう。要望は期待にちょっと届かないことがあり、質問は期待を実現するために聞いてきているのではないでしょうか。潜在ニーズをつかむポイントは、顧客の声から期待を見抜くことです。

 ここで、例を見てみましょう。ある温泉旅館で、お客さまがアンケートに以下のように書いていきました。

子ども用の浴衣がなかった

 この対応として、子ども用の浴衣がそもそも旅館になかったのであれば準備すべきですし、子ども用の浴衣自体はあったにもかかわらず手配できなかったのであればオペレーションを見直すべきでしょう。

 しかし、もう一歩踏み込んで顧客の期待を考えてみましょう。おそらく、この声を発したのは親御さん。たとえば、大人用の浴衣を着て動きづらそうな子どもを見た親御さんが、「せっかくの温泉旅館なんだから、子どももリラックスさせてやってくれよ」と感じたことが想像されます。そうであれば、検討すべきは「大人用で子どもに我慢させている(そのほかの)ものはないのか」というテーマではないでしょうか。

 そうなると、「子ども用のスリッパはあるのか?」「食事は?」「アメニティは?」と着眼点が広がります。あるいは、「普段浴衣を着る機会がないから、思い出として浴衣の写真を撮りたかった」という期待かもしれません。そうであれば、準備する浴衣やその他のサービスも発想が広がります。

顧客の声には、必ず「期待」がある

 潜在ニーズとは、文字通り顕在化していないので、仮説を立てることにほかなりません。当然、当たりはずれもあります。経験知や周辺情報を合わせて仮説のヒット率を高めていきたいですが、少なくとも顧客の声から得たいのは答え(=ウォンツ)だけでなく、ヒント(=潜在ニーズ)なのではないでしょうか。期待を読み取ることで潜在ニーズのヒントをつかんでいきましょう。

 顧客の声の重要性は多くの人が認めるところです。しかし、実際には、「社内イントラ上のデータベースにアップしているが、あまり見ている人がいない」といった社員の関心の低さ、「顧客の声を集めろと言われているが、何に使われているのかわからない」といった顧客接点部門の嘆き、「目からうろこが落ちるような声は少なく、タイミング的にも顧客の声を開発に活かすのは難しい」といった開発部門の悩みなど、風土や組織体制面でもさまざまな問題が横たわっています。より深い顧客洞察が求められる今、声活用の目的を明確にして取り組むことが重要です。

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日本能率協会コンサルティングについて
 日本能率協会コンサルティングは、1942年に設立された社団法人 日本能率協会の中核として70年以上、企業が抱えるさまざまな課題解決の実行支援を行っている。1991年には日本で初めて「CS経営」を提唱、数百社以上のCS向上支援を行っている。現場主義のコンサルティングスタイルであり、一過性の流行に流されない真の顧客起点での課題立案・対策推進を支援している。
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