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パレートの法則(2:8の法則)とは? 具体例や類似した法則を解説

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CS(顧客満足)やマーケティングの施策を考えるうえで、優良顧客の見極めは重要なポイントとなります。その際に知っておくと便利な法則が「パレートの法則(2:8の法則)」です。そこで本記事では、ビジネスシーンにおける具体例なども交えながら解説します。

今回のキーワード パレートの法則(2:8の法則)

パレートの法則とは?

パレートの法則のイメージ図(グラフ)

「社会の富の半数以上は、ごく少数の富裕層が握っている」という話を耳にしたことはありませんか?

 これは、19世紀にイタリアの経済学者ヴィルフレド・パレートが、さまざまな国や時期の国民所得配分について調査したところ、「人口の20%が、富の80%を所有している」ことを発見したことに由来する法則です。

 いわゆるこれが、ビジネスの世界で有名な「パレートの法則」です。別名「20%対80%の法則または80対20の法則」「ばらつきの法則」などと呼ばれています。

 パレートの法則に基づいたデータ分析法である「パレート分析」や「ABC分析」などは、製造業や小売業などさまざまな分野で応用されており、業務効率の改善や新商品の販売戦略などに活かされています。

 実は、ビジネス以外の私たちの身近な生活においても、パレートの法則はいろいろなシーンで見ることができますので、いくつか簡単にご紹介します。

【パレートの法則:身近な事例】
●Excel使用者の8割は、Excel機能の2割しか使いこなしていない
●普段着る服の8割を、自分のお気に入りである服の2割で着こなしている

 パレートの法則は、法則というより統計からの分析であり、経験則の類と言えます。そのため、重点的に施策する必要がある商品や事業、顧客を把握したいときに役立ちます。

 また、売り上げに貢献している重要度という視点から分類する手法でもありますので、ぜひ理解しておくべきでしょう。

混同しやすい法則、類似した法則

 パレートの法則から派生したと考えられる法則として、「働きアリの法則」、別名「2-6-2の法則」と言われるものがあります。

 これは、アリの集団を「よく働く・普通に働く・働かない」に分けたとき、よく働くアリが全体の2割、普通に働くアリが6割、そして働かないアリが2割いるというものです。

 その他、パレートの法則とよく混同される法則もあります。代表的なものとして、「ハインリッヒの法則」という労働災害の経験則があり、1件の重大な事故が発生したとき、その背景には29件の軽い事故が起きており、さらに300件のヒヤリ・ハット(ひやりとした・はっとした経験)があるという法則です。

 この法則の解釈としては、300件のヒヤリとした出来事の段階で、危険の芽を摘んでおくことが重要だということが示されています。

ビジネスにおけるパレートの法則【具体例を紹介】

トップビジネスマンのイメージイラスト

 ビジネスシーンでパレートの法則を参考にした取り組みがあります。ここでは具体例をいくつか取り上げて解説していきます。

具体例(1)訪問販売の売上高の8割は、全顧客の2割のAランク顧客によって占められている

 売り上げ全体を見たときに、その8割が2割の優良顧客によって支えられているのであれば、パレートの法則によって、販売活動における営業推進の方向性と施策を導き出すことができます。

 2割の上位顧客に対して、訪問回数や商談時間の底上げやサービスの拡充、高付加価値商品の提案など、販売施策に厚みを持たせることを検討します。

 一方、上位顧客以外の顧客には訪問頻度を政策的に見直すことやダイレクトメールや電話などを活用した、間接的なアプローチを強化するといった戦略的施策を行います。

>顧客ランクに応じたアプローチ方法のポイントは「RFM分析」の記事をチェック

具体例(2)新規顧客の8割は、全社員のうちの2割が開拓している

 パレートの法則に照らし合わせて営業の実態をひも解くと、新たな課題や人事評価の見直しなどが見えてきます。

 まず、2割の社員が新規顧客数の8割を生み出している状況は、この2割の社員たちが企業経営の永続的な発展の大部分を支えていると言えます。この点をふまえて、正当な人事評価を設計すること、2割の人材がさらに成果を出せるような環境整備が必要です。

具体例(3)会議の打ち合わせ資料の2枚は重要資料とし、残り8枚の資料はそれなりにまとめる

 パレートの法則は営業や製造の分野だけでなく、社内のさまざまな業務に活かすことができます。

 会議で使用する資料を作成するときには、「重要な2割にスポットを当て絞り込む」という考え方でまとめていくと効率的に作業を行うことができます。

 2割の重要な内容には集中的に時間をかけ、イラストや図表など工夫を凝らす一方で、残り8割の内容については、ある程度のレベルを維持しつつスピーディーに作成すれば、成果を生み出しやすく読み手も理解しやすい資料を、効率よく仕上げることができます。

 仕事には肝要な部分が2割あり、重要度が低くほかの業務に支障を及ぼさない部分は8割あるものです。この2割の重要な部分に集中し、全体の業務を組み立てるということをパレートの法則から学ぶことができるのです。

状況に応じてロングテールの法則も活用する

ロングテールの法則のイメージイラスト

 パレートの法則に異を唱える考え方として、ロングテールの法則があります。この法則はインターネットの普及とともに成長してきた、ネット通販のビジネスを象徴するものです。

 たとえば、実店舗では商品棚や在庫高などに制約があるため、2割の商品が売り上げの8割を占める状態になります。

 しかし、ネット通販は無店舗であり、在庫や流通コストの低減が可能であることから、1年にわずか1個しか売れない商品でも展開することが可能な業態です。そのため、1億種類以上の商品を取り扱う大手ネット通販サイトでは、1個しか売れない商品の売り上げが大きな塊になり、巨大な収益として生まれ変わります。

 少量しか売れない「死に筋商品」も品揃えに加えることで、販売機会のロスが大幅に減少し、ネット通販ビジネスは大きな業界に発展してきたわけです。

 ロングテールの意味は、売り上げ順位に商品ごとの売り上げを並べるグラフを作成すると、1点しか売れない多数の「死に筋商品」が、まるで恐竜の尻尾(テール)のように長く見えることから名付けられました。

このように、WEB領域やBtoCの企業と消費者の取引において、ロングテールの法則はかなり有効であると言えるでしょう。

パレートの法則は経済活動の分析に有効

 パレートの法則はひとつの経験則ですが、その本質的な概念は営業やマーケティング戦略の策定、在庫管理の見直しなどの有効手段となります。そして、日常生活においても、パレートの法則は無駄をなくし実用的な暮らしをする上で役立つのではないでしょうか。

 パレートの法則を上手に活用して、理論や慣習にとらわれることなくビジネスを楽しんでください。