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【RFM分析のステップとポイント】デシル分析との使い分け、成果につながる活用方法

RFM分析のヘッダー画像

顧客分析の1つとして知られる「RFM分析」。顧客ランクに応じたアプローチ方法を導き出したい場合などに有効な分析手法です。しかし、マーケティング初心者にとっては「うまく使いこなせるのだろうか?」とハードルの高さを感じるかもしれません。そこで本記事では、RFM分析のステップやポイント、類似した分析手法である「デシル分析」との使い分けなどについて、具体的に解説します。

今回のキーワード RFM分析
解説 日本能率協会コンサルティング(外部リンク)

RFM分析とは?

 RFM分析とは、R=Recency (直近いつ利用したか)、F=Frequency (利用頻度はどれくらいか)、Monetary (利用金額はいくらぐらいか)の3つの視点で顧客を分類する分析手法です。

 これらの視点から顧客を分類することで、関係強化すべき優良顧客を抽出したり、顧客タイプ別の施策立案が可能になります。

 したがって、CRM(顧客関係管理)LTV(ライフタイムバリュー)を高める施策立案のための分析視点といえます。では、RFMそれぞれの視点をさらに詳しく見ていきましょう。

(1)Recency=直近いつ利用したのか
 たとえば、過去5年の利用金額が同じでも、最後に利用したのが4年前の顧客と先月の顧客では、どちらのロイヤルティが高いと考えられるでしょうか? RFM分析では、より直近で利用している顧客ほどロイヤルティが高いと考えます。逆に、しばらく利用していない顧客は、「休眠顧客」と呼ぶこともあります。

(2)Frequency=利用頻度はどれくらいか
 利用金額の基本式は、「利用頻度×利用単価」なので、ロイヤルティを測る視点として利用頻度は重視されます。もちろん、利用単価や総額としての利用金額を併せて見ていくことになりますが、利用頻度の視点だけで言えば、頻度が高い顧客が優良顧客と考えられます。

(3)Monetary=利用金額はいくらぐらいか
 前述のように、利用頻度×利用単価の結果としての利用金額は、当然重要な視点です。たとえば、10万円の商品を1回購入した顧客も、1万円の商品を10回購入した顧客も同じ10万円ですが、利用頻度は異なります。RFM分析では、頻度や金額を組み合わせて分析していきます。

 つまり、これら3つの視点は、以下のようなロイヤルティの視点であるともいえます。

●直近に利用している顧客ほど優良である
●利用頻度が多い顧客ほど優良である
●利用金額が多い顧客ほど優良である

 また、RFM分析では、これらの視点を使って顧客をランク分けします。いくつに分けてもよいのですが、RFMそれぞれ5区分程度にすることが一般的です。

 たとえば、RFMそれぞれを5区分にしたとすると、5×5×5=125に顧客を分けることになります。ランク5が一番よいとすると、R5×F5×M5の顧客が最優良顧客となります。

RFM分析のランク分けの図

 各区分を比較すれば、利用金額や利用頻度がどれくらい違うのか、といったことが可視化されます。LTV(ライフタイムバリュー)で言えば、R5×F5×M5の顧客とR1×F1×M1の顧客ではどれくらい違うのか、といった比較検討もできます。

【具体例で解説】RFM分析のステップとポイント

ポイントを示唆する女性

 実際にRFM分析を行う際には、以下のようなステップで進めます。

●ステップ1:データの収集・統合・整理をする
 RFMそれぞれのデータを収集し、統合して分析できるようにします。
●ステップ2:ランク分けの基準を決める
 RFMそれぞれ、どこでランク分けをするか、その基準を決めていきます。
●ステップ3:顧客をランク分けする
 ステップ2で決めた基準に沿って顧客をランク分けします。

 それでは、各ステップについて、フィットネスクラブを例にとって詳しく見ていきましょう。

ステップ1:データの収集・統合・整理

 まず、分析に必要なデータを考えます。直近利用日や利用頻度を見るためには、フィットネスクラブであれば・利用日(ジム利用日、パーソナルトレーニング利用日、ショップ利用日など)のデータが必要になります。

 また、利用金額を見るためには、年会費、施設利用料、売店利用金額、パーソナルトレーニング利用料といったデータが必要になります。

 次に、データの収集・統合・整理を行います。すでに取得しているデータでなければ、まずは収集するところから始めることもあるでしょう。データがあっても各所に点在していたり、場合によっては手書きなどでデジタル化されていないものもあるかもしれません。

 そして、金額の単位や日時表記のルールが統一されていなければ、それらをそろえていく必要があります。このように、データを分析できるように収集・統合・整理していきます。

 その他、分析期間を決める必要があります。たとえば、過去1年間を分析するのであれば、1年間のデータが必要になります。これでデータの準備は完了です。

ステップ2:ランク分けの基準を決める

PCで分析する女性

 RFMそれぞれについて、ランク分けの基準を決める必要があります。ランク分けの基準をどう設定するかはとても重要です。参考になる基準設定の考え方として、大きく2つあります。

■基準1:データを見て決める
 実際のデータを見て、意味がある(ありそうな)区切りを見つけてみましょう。Rであれば、ヒストグラムなどで直近利用日のバラツキを見てみます。バラツキが少ないようであれば期間を均等に分け、バラツキがあるようであればそのバラツキに応じて区切りを設定してみる、といった考え方です。

 Fであれば、パレート分析などで区切りを検討しましょう。一般的には、2:8の原則のように頻度の多い上位2割で売上の8割を構成している、といった構図になります。

 逆に頻度だけを見れば、頻度の少ない顧客が多くを占める指数的な分布になりがちです。Mについても、パレート分析などで区切りを検討しましょう。Fと同じく指数的な分布になることが一般的です。

■基準2:ポリシーで決める
 もう1つの考え方は、戦略的な目標や収益性の視点から区切りの基準を考える方法です。もちろん、基準1のようなデータを参考にしつつ、「この区分の顧客を増やしたい」「これくらいの金額を目指したい」といった意思を重視して区切りを設定する考え方です。

 フィットネスクラブの例であれば、「利用頻度が下がると退会傾向が高まる」といったデータがあったとします。その場合、重要な区切りになるのは、「この利用頻度を下回らないようにする」といったことです。

 RFMそれぞれの基準を作成したら、区分ごとの人数を確認してみましょう。極端に少ない区分があれば、基準を見直して調整することもあります。

 いずれにしても、区分の基準は業種、商品・サービス特性、顧客特性、戦略目標などによって検討する必要があると言えます。仮の基準を設定してスタートし、見直していくこともあります。

ステップ3:顧客をランク分けする

 ステップ2で決めた基準を使い、顧客をランク分けします。RFMと3つの視点があるので、そのうちの2つを組み合わせたり、3つすべてを使ったりしながら分析します。

 まずは、RFMのランク分けを以下のような表で整理してみましょう。

RFM分析顧客ランク分けの図

 これによって、それぞれどのくらいの顧客数がいるかがわかります。また区分ごとのRFMの平均値なども見ることが可能になります。

そして、必要に応じてランク分けグループをもう少し括っていきます。実際に、この例のように125グループに分けて施策を考えることは現実的ではありません。その時、グループに意味合いを持たせていくとわかりやすくなります。

 たとえば、以下のような括り方が考えられます。

●最優良顧客…RFMすべてが5
●優良顧客…RFMの2つ以上が5、かつ残りの1つが4
●休眠優良顧客…M5、かつF3以下
●フレンドリー&低利用客…RとFが4以上、かつM3以下
●退会予備軍客…RFMすべてが2以下

 こうすることで施策の方向性も見えてきます。

RFM分析の活用:結果から施策を考える

ひらめいたサラリーマン

 分析結果を活用して、CRMやロイヤルティマネジメント、LTV向上といった施策を立案していきます。代表的な施策には、以下のような内容があります。

優良顧客との関係強化

 最も重要な顧客グループである優良顧客に対して、関係強化策を打ちます。フィットネスクラブであれば、年会費などの各種割引、利用予約の優先といったことが考えられます。

 また、フィットネスクラブのような対面サービスであれば、スタッフ全員が最優良顧客のプロフィールを覚えているといった、ハイタッチなサービスが求められます。さらに、他者推奨を促したり、モニターとして定期的にご意見をうかがうメンバーとして選ぶといったこともあります。

利用は多いが金額が低い顧客へのアップセル・クロスセル

 直近利用や利用頻度の評価はよいが、金額が低い顧客グループに対しては、クロスセルアップセルの施策が一般的です。アップセルは、現状よりも高価格帯のラインアップを用意してそちらへの誘導を図る方法で、クロスセルは別のサービスをセットで利用してもらう方法のことを指します。金銭的な制約がある顧客も多いですが、可能な限り利用金額を高めるアプローチをします。

 フィットネスクラブであれば、ジムだけを利用し続けていて、パーソナルトレーニングやショップ利用をしないといったペルソナが考えられます。こういった顧客に対して、トライアルキャンペーンやトレーニング効果を高めるグッズの紹介などを行います。また、アンケートなどで利用しない理由を把握し、問題解決に取り組みます。

休眠顧客の掘り起こし

 かつては利用金額も多かったのに最近利用が落ち込んでいる、といった顧客グループです。これに対しては、利用促進策を打ちたいのですが、同時に「なぜ、利用が遠のいているのか?」を把握することが必要です。

 自社で対策可能な理由と対策が難しい理由があります。フィットネスクラブであれば、「トレーニングしてもダイエット効果が感じられない」、「仲間ができない」といったことであれば、対策可能でしょう。一方で、「親の介護が必要になった」といった理由は、直接的には対策が難しいですが、一定期間の休会措置など、継続利用促進策などを検討します。

退会予備軍の見極め

 RFMがすべて1といった顧客は、早晩いなくなるかもしれない退会予備軍のグループといえます。この場合、利用促進策を打つか、最低限のコストをかけることにとどめるか、といった見極めが必要になります。

 このように、ランク分けや顧客グループに対して、それぞれに応じた施策を打っていきます。

RFM分析の注意点

 RFM分析によるアプローチを考える際、いくつかの注意点があります。

利用頻度の低い商品・サービスに向いていない

 住宅や車、ピアノといったような、長期間であっても購入・利用回数が限られるような商品・サービスに対して、RFM分析はあまり向いていません。RFM分析は購入・利用頻度が高く、ブランドスイッチ(競合他社への乗り換え)が容易な特性を持つ商品・サービスに向いています。

期間を限定する影響を考慮する

 RFM分析は、ある一定期間を区切って分析します。したがって、その結果は「その期間における状況」を表しています。子ども関連、シニア・介護関連、定年に伴うビジネスグッズなど、顧客のライフステージの影響を受ける商品・サービスなどは、そのタイミングで急激な利用変化をする可能性があります。こういった場合、RFMだけでなく、期間を限定することで、影響する要因について考慮する必要があります。

購入・利用内容がわからない

 RFM分析では、「何を購入・利用したか」の視点がありません。必要に応じて、購入・利用した商品・サービスを把握しましょう。たとえば、ラグジュアリーブランドでは、優良顧客になりやすい購入アイテムがあります。また、購入アイテムによってクロスセルやアップセルのアプローチにも影響してきます。

結果はわかるが理由はわからない

 RFMに限らず、定量的な結果データは、その背景にある出来事や理由はわかりづらいことが一般的です。前述の施策立案例のところでもお話ししましたが、なぜこうなっているのか? 何があったのか? といったことは、さらなる調査・分析が必要です。

RFM分析の簡易版「デシル分析」との使い分け

2つの選択で迷う男性

 RFM分析を簡易にしたものにデシル分析があります。デシルとは「10等分」という意味です。みなさんが小学生の頃に算数で習った「デシリットル」は「1/10リットル」でしたよね。あの「デシル」です。

 デシル分析の考え方・方法はシンプルです。顧客を購入・利用金額ごとに並べて10等分し、各デシルの全体における比率などを確認します。

デシル分析の図

 こうすることで、利用金額における重要顧客を抽出できます。一般的には、2:8の原則に近くなることが多いので、上位2割の顧客=デシル1〜2で、全体売上の80%になることが多いのではないでしょうか。これがデシル分析です。

 このように、デシル分析はシンプルなので、分析しやすいというのがよい点です。また、利用金額しかデータがない場合でも、ある程度の顧客のランク分けができます。したがって、「簡易に顧客をランク分けしたい」、「利用金額データしかない」、「利用頻度や直近利用日にあまり違いはないので、利用金額で分析すれば問題ない」といった場合には、デシル分析が活用できます。

 一方で、利用金額だけでは、「1回高額利用しただけ」、「この期間の初期は高額利用だったが、最近は利用がない」といった人が混在してくる可能性があります。より詳細な分析はRFMで行うことになります。

RFM分析でツールを選ぶ際のポイント

 データ量が少なく、データも整備されていれば、表計算ソフトでもある程度は分析できますが、データ量が多くなってきたり、収集チャネルが複雑になったりする場合には、RFM分析ツールの導入も検討しましょう。

 その際には、自社が求める機能が備わっているかを確認しましょう。ここでは、選ぶ際の一般的な視点を挙げておきます。

●レポートやダッシュボード機能があるか、自社のニーズに合っているか
●データベース作成機能が必要な場合、備わっているか
●カスタマイズしたい場合、どの程度可能か
●その他、必要な機能が備わっているか

 導入後に、「使いづらい!」といったことにならないために、導入検討時に自社のやりたいことを明確にしておきましょう。

RFM+αでより効果的な施策につなげる

 これまで見てきたように、RFMは条件が当てはまれば有益な分析手法です。一方で、どんな分析にも言えることですが、効果や限界はあります。当然のことながら、分析結果として「こうすればよい」という施策が出てくるわけではなく、いかに効果的な施策につなげるかが最も重要な点です。必要に応じてRFMに新たな視点を追加したり、理由を探ったりしながら、仮説検証を含めて、より効果的な施策を導きましょう。

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