特集

CS推進は「顧客」の満足・幸せを創造する仕事!“期待に応える”効果的な方法を紹介【武田哲男のCSお悩み相談室 #4】

連載「武田哲男のCSお悩み相談室」第4回

CS(顧客満足)やES(従業員満足)に関する疑問・お悩みを解決していく連載コラム「武田哲男のCSお悩み相談室」。著書100冊以上、40年以上にわたり現場重視のCS(顧客満足)経営コンサルティングを手がけてきた武田哲男氏が、みなさんから寄せられた質問に答えていきます。
>連載「武田哲男のCSお悩み相談室」記事まとめ(全6回)

第4回目のお悩み
専門の部署でCS推進をしていて、年に1回調査と各地域フランチャイズへ結果の落とし込みをしているものの、惰性になってしまっている気がしていて、厄介者のように思われ、かつ上手くいっているのかもわからず、私のモチベーションも上がりません。どのようにしたら良いでしょうか。

投稿者データ

年齢

30代

業種

不動産

職場での立場

課長

主な仕事内容

CS推進

職場のおおよその人数

300人

CS・CSM活動は「顧客」の満足・幸せを創造する仕事

幸せそうな人々

 こんにちは、武田哲男です。第4回目は、CS推進を担当されている方からのご相談です。今回はCS推進の重要性について。また、併せて成果を生むヒントをご紹介したいと思います。

 最初に明らかにしておきたいことは、不動産業において「お客さま(以下、顧客と表現)は誰か」ということです。

 まず挙げられるのは「社外顧客」。借りる、購入する、建てるなど、直接的にサービス等を活用する消費者・生活者はもちろん、その仲立ちをする取引先、地域社会、株主、金融関係者なども該当します。細分化するともっと多くなり、相対的には「カスタマー・ステークホルダー」と表現します。これらは「社外顧客」が、サービス等の満足・幸せを評価することになります。

 次に「社内顧客」が挙げられます。直接的に顧客と接する営業担当者をはじめ、そのサポートをする営業事務・総務等の仕事に携わるバックオフィスの人たち。非正規・派遣社員を含む全従業員も大切な“顧客”であり、従業員の満足(Employee Satisfaction/以下、ES)、幸せ創造は非常に大切です。

「社外顧客」「社内顧客」の満足を高める活動を、CS(Customer Satisfaction)、CSM(CS Management)活動と言います。CS、CSM、ESはビジネス用語です。ビジネスである限り、結果として業績向上に貢献することが条件ですから以下の3つの要素、すなわち「女神のサイクル」が大切で、CS・CSM活動では顧客満足・顧客の幸せ創造と業績向上活動を目指します。

女神のサイクル
(1)「顧客づくり」=新規顧客開拓・新規需要開拓・新規市場開拓
(2)「顧客つなぎ」=顧客継続率向上・リピーター・リピートオーダー促進・顧客離脱防止策
(3)「顧客つづき」=顧客によるプラスの口コミ・紹介比率向上・顧客との良質で永いご縁の創造

「業績=顧客の支持率」を達成すること、CS推進のやりがい

業績が向上している様子

 顧客(BtoC)に強引に売りつける、騙す、ごまかすなどの行為は、ときに売上げを確保する手段として使われ、その結果、一時的な売上げ確保はありますが、これは犯罪。そこまではいかないまでも、売れば売るほど「2度と購入しない」顧客を増やし続ける行為は、絶対に戒めなければなりません。

 同様に取引先(BtoB)に対する強引な条件変更、たとえば無茶な値引き要求なども陰湿ないじめ行為であり、論外です。「○○会社からは絶対に買わないように」「ひどい目に遭うよ」といったマイナスの口コミを増やすことになり、世間や業界の評判を下げ、従業員の満足・幸せを奪うマイナスの企業ブランドイメージ創造につながります。

 いずれにせよ、これらの行為は時間の経過とともに業績低下、ブランド崩壊を招きます。CS・CSM活動の目的は、女神のサイクルによる社外顧客・社内顧客の満足・幸せ創造によりもたらされる「業績向上」にあるのです。こうした真の意味ややりがいを、社内メンバーが共有することも大切です。

顧客満足に関する「企業」と「顧客」の意識差・ズレ

「顧客」と「企業」とで“満足の捉え方”にはズレがある

 ほとんどの企業はいまだ気づいていませんが、実は「満足度調査」「現状把握型マーケティング調査」の5段階評価によると、顧客の約80%は「4=良い・満足」にマークする傾向にあります。つまり、8割の人たちは何かにつけ満足していて、「3=普通」は「悪い・不満」に分類される時代。100点満点中、80点が現在の普通、世間相場、日本の標準と考えられるというわけです。

 では、普通以上を目指す場合、顧客の隠れた満足、潜在需要を見つけるにはどうしたら良いのでしょうか? その基盤となっているのが、顧客の「不」の要素をキャッチすることです。なぜなら、「不」は顧客が求めていることだからです。

 全企業数の99.7%を占めている日本の中小企業は、「少子高齢化」「各種増税」「収入減少」「支出増加」「コロナ禍」などにより、市場規模縮小、業種衰退、消滅の危機に直面しています。そこで、多くはコストダウン、コストカットを行い、さらに市場規模縮小・業種衰退を招いています。消費者は財布の紐をしっかり締めて、支出を控えています。

 だからこそ、定期的に顧客・個人のイメージや「不・負」の実態、内容、意識をさまざまな方法で把握する必要があります。そうでないと見えないところで顧客を失い続け、業績低下を招くだけです。では、どのようにして顧客の「不・負」の要素を把握したら良いのでしょうか。

顧客の「不満」をキャッチする方法

何かをつかんでいる様子

 そこで、企業が実際に実施し、成果を上げている各種の方法と活動事例をご紹介します。

(1)スタッフ全員が常に以下のようなメモを持参し、気づきをチェックしポイントを記述する

 たとえば、8cm×12cmほどのメモ用紙を全員が常にポケットに入れ、以下の項目を「チェック」し、なお顧客の意識を記載する。

お客さまから寄せられたお言葉をメモする方法の例

(2)気になる「ひと言情報メモ活動」

 毎日、必ず3件の顧客のひと言をメモに記し、定められた箱に入れる。週末に箱からすべてのメモを取り出して一覧表を作成し、各担当者に課題を配布する。課題解決の提案を促し、意見交換とともに全員で解決の方策を練り、解決策が効果を上げたか否かを次の調査と比較する。

(3)はがき大のアンケート票を顧客に渡し、投函していただく

 5段階評価(=不満足度調査の特徴の1つ)のアンケート票を作成。「1=非常に悪い・不満」「2=悪い・不満」「3=普通・どちらでもない」「4=良い・満足」「5=非常に良い・満足」として、自由記入欄を設ける。

不満足調査のイメージ

(4)全社・全部門にわたる本格的なアンケート調査の実施(通常は外注、または専門家のアシストを受ける)

 顧客へのアンケート調査を、Webやメール、紙ベースなどで実施する。調査結果は数値化し、定性情報と併せて因果関係分析を行う。浮かび上がった課題については、どれだけ解決したかの経過も追うようにする。

(5)「定点観測」と「ベンチマーキング」

 定点観測は定期的に行い、結果分析を行う(毎月、3ヶ月に一度、6ヶ月に一度、毎年などケースはさまざま)。最新の結果を基盤(ベンチマーキング)に過去の実態と比較し、変化推移を見る。課題がある場合は、どのようにしたら解消するのか、目標を定め組織全体で取り組みを行う。過去に挙げられたマイナス要素・課題が次第に減少した場合は、成果があったということで社内表彰などを行う。CS担当部門がこれら一連の活動を推進する。

CS活動が本当に「顧客発」となっているか?改めて見直してみよう

 多くの社内CS活動の活性化が顕著でない理由・原因は、「顧客発」になっていないからです。自分たちで考えて課題を設定し、自分たちで解決する行為は「企業中心主義」です。CSはその名のとおり、本質は顧客にあり、業績と直結しています。したがって、売上規模・利益率の向上を目指せば目指すほど、顧客満足・顧客の幸せ創造に力を注ぐことが重要となります。

 しっかりと顧客発のCS推進を行っていけるよう、企業全体で課題に向き合い、ときには専門家からアドバイスなども受けながら取り組んでいくと良いのではないでしょうか。

今回の武田式アドバイスのおさらい

●改めて、「顧客」は誰なのかを考えよう

●CS・CSM活動は、顧客の満足・幸せを創造する仕事

●顧客の支持率が業績に直結する

●顧客の期待に応えるためには「不満」をキャッチせよ

●全社的にCS向上に取り組む

●ときには専門家からのアドバイスを受けるのも○

プロフィール

  • 武田哲男氏

武田哲男(たけだ・てつお)
武田マネジメントシステムス 代表取締役

 服部時計店(現・SEIKOホールディングス)入社後、銀座・和光で小売部門を経験。以来、サービス・CS分野のパイオニアとして、企業規模・業種・業態を問わず、多くの企業活動の実務に参加している。日本初のCS・CSM(CS Management)実務書『CS推進ここがポイント』(日本能率協会)をはじめ、『なぜ、あの企業の「顧客満足」はすごいのか? あなたがサービス・製品を選ぶ本当の理由』、『顧客「不満足」度のつかみ方・活かし方』(ともにPHP研究所)など、著書は100冊以上。CS・顧客サービス研究所、武田マネジメントシステムス代表取締役のほか、豊富なキャリアから一般社団法人エチケット・サービス向上協会 代表理事や、クレーム関係のセミナー・講師なども務める。

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