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顧客満足度とは?CS向上の具体的事例や調査方法を解説

顧客満足度とは?

 昨今、商品やサービスにおいて、頻繁に聞かれるようになった「顧客満足度」「CS」という言葉。しかし、「なぜ重要なのか」や「そもそもどういう概念か」など、正しく理解している人は少なくないはず。ここでは、「顧客満足度(CS)」の概要や向上につながる考え方、企業の具体的な取り組み事例をご紹介します。

―この記事でわかること―
・顧客満足、顧客満足度とは何か
・顧客満足度を経営に活かす方法
・顧客満足度調査の具体的なステップ

監修
鈴木秀男氏(慶應義塾大学理工学部教授/内閣府 上席科学技術政策フェロー・非常勤)

  • 鈴木秀男氏 (慶應義塾大学 理工学部教授)

すずき・ひでお/研究分野は、応用統計解析、品質管理、マーケティング。同氏が率いる鈴木研究室では、統計的手法や機械学習法の開発、サービス品質評価や消費者行動分析などの応用研究、さらにTQM、CRM、スポーツ経営に関する調査研究など、データ解析をベースに幅広く研究している。著書に、『顧客満足度向上のための手法−サービス品質の獲得―』(日科技連出版社)、『サービス品質の構造を探る―プロ野球の事例から学ぶ―』(日本規格協会)など。2023年4月には内閣府 科学技術・イノベーション推進事務局参事官(インフラ・防災担当)付上席科学技術政策フェロー(非常勤)就任。2024年現在、オリコン顧客満足度(R)調査のテクニカルアドバイザーも務めている。

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顧客満足度とは?

「顧客満足度」とは、顧客が何らかの商品購入やサービス提供を受けたときに得られる顧客満足を数値として表した指標です。英語では「Customer Satisfaction(カスタマーサティスファクション)」といい、一般的には「CS」と呼ばれています。企業収益性や従業員満足度と密接に関係しており、顧客満足度向上は企業の持続的な成長に欠かせない経営指標となっています。

「顧客がどれだけ満足したかどうか」を表す「顧客満足」は、個人の主観によるところが大きく漠然としていますが、その満足の度合いをアンケートなどの調査によって統計的に数値化し、客観的に評価できる指標として可視化されたものが「顧客満足度」です。

 消費社会が高度化した現代においては、サービスや商品の品質、コストだけで差別化を図ることは難しくなってきています。 また、マスメディアを利用した広告宣伝だけで、購買につなげることも容易ではありません。そういった状況下で、消費者がどのサービスや商品を求めるのかを決める際に、新たな評価軸として注目されてきたのが顧客満足度で、企業にとって自社の付加価値を測る手段として活用されています。

顧客満足度の重要性を説く人

顧客満足度とは?品質と価格の事前期待値が重要

顧客満足度の重要性と向上によるメリット

 “マネジメントの父”と称された経済学者のピーター・ファーディナンド・ドラッカーは、著書『現代の経営』(1954年)のなかで、「企業の目的は利益を追求することではなく、顧客を創造することである」と定義付け、企業には基本的な機能として「マーケティング」と「イノベーション」と述べています。

「マーケティング」とは顧客の欲求を理解することであり、「イノベーション」とは今までになかった顧客の欲求を創出し、社会や市場を変容させるほどのインパクトをもたらすことを意味します。そして、顧客の欲求を満足させる商品やサービスを提供することが、“顧客創造”につながると説いています。つまり、企業経営において重要なのは、新たな顧客を獲得することと既存の顧客にさらなる付加価値を提供する「顧客創造」であり、「顧客志向」を実現するための顧客満足にほかならないのです。

顧客創造の解説図(顧客の欲求を理解・創出することが顧客創造となる)

顧客創造の解説図(顧客の欲求を理解・創出することが顧客創造となる)

 では、顧客志向を徹底して顧客満足を追求することは、企業活動においてどのようなメリットをもたらすのでしょうか。

企業価値の向上につながる

 顧客志向というと、「お客様第一」「お客様は神様」といった思考になりがちですが、そればかりではありません。仮に利益追求型の企業活動があったとすれば、無理なコストダウンや販売行為などによって顧客の不満をまねき、企業価値の損失につながると言えるでしょう。

 昨今では「企業の社会的責任=Corporate Social Responsibility」(以下、CSR)が求められており、環境対策や法令遵守(コンプライアンス)、社会貢献など、CSRに関わる活動が顧客満足に影響することも見逃せない視点となっています。そして、それらが企業価値を高め、結果的に企業利益を生むといっても過言ではありません。

顧客ロイヤルティが高まる

顧客満足の向上が顧客ロイヤルティを高め、企業の収益性を高めることにつながることを説明した解説図

顧客満足度と収益性向上の関係性

 顧客が商品やサービスを提供する特定の企業に対して、愛着や忠誠心を抱くことを「顧客ロイヤルティ」と呼びます。顧客が商品やサービスに満足すれば、リピーターや常連客となる確率は高くなり、おのずと顧客と企業との結びつきも強固になっていき、顧客ロイヤルティは高まっていきます。

 また、ほかの人に薦めたり、長く愛用したりすることで、結果的に企業の収益性にも大きく寄与します。つまり、顧客満足の向上が、顧客ロイヤルティを高め、企業の収益性を高めることにつながると言えます。

CS経営の狙い

 顧客満足が重要視される背景には、満足度の向上が企業の収益と密接につながっており、企業が持続的な成長をしていくために欠かせない要素となっていることが挙げられます。このCS経営と呼ばれる経営手法について説明します。

CS経営の構造

顧客満足度経営の狙い

顧客満足度経営の狙いは持続的な成長

 顧客満足(CS)経営では、顧客の満足向上や不満削減といったことを課題に取り上げ、ビジネスサイクルに取り入れていきます。つまり起点となるのは既存顧客で、既存顧客に対するアクションが長期的にみると企業の成長につながっていくというものです。

 既存顧客の満足度が高くなれば、その顧客は再購買をしたり、購入頻度を早めたり、購入額を増加させたり、企業にとって優良な顧客になり得ます(このようなユーザー属性はRMF分析の解説を参照してください)。さらに満足度の高い顧客は、自分以外の他者に対してレコメンドを行うことにより新たな顧客を呼び寄せる役割を果たしてくれます。

 このように満足度が向上すると、既存顧客による売上が増え、コストをかけずに既存顧客の行動によって新規顧客を開拓することができるため、事業を行う上で非常に重要なことがお分かりいただけると思います。

 さらに、既存顧客の不満を解消してくことができれば、それまで製品やサービスに不満を持ってしまい、離反してしまっていた顧客群をつなぎとめることができます。例えば、サブスクリプションサービスは有料会員の純増数が重要になりますが、解約率がもしもゼロになったとしたら、その収益性や成長率のカーブが大きく改善されるであろうことは容易に想像できます。

CS経営で需要な指標となる顧客満足

 CS経営の取り組みには指標管理が必要です。どの企業でも、高い顧客満足を目指すことに反対意見はないでしょう。しかし、スローガンだけになってしまっては経営とは言えません。満足度の高い企業を目指すのであれば、その計測を定期的に行い、課題の特定、解決策の実行というサイクルを回し、改善が見られているのかをチェックします。

 日本で初めてCS経営を提唱した日本能率協会総合研究所では、CS経営で見るべき指標は「満足度」「他者推奨意向」「継続利用意向」を三大指標として挙げています。これらの違いを理解し、経営に落とし込んでいくことが重要となります。
 
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>CS経営における“三大KPI”とは?

顧客満足と不満足が生まれる仕組み

顧客満足と不満足が生まれる仕組み

顧客満足と不満足が生まれる仕組み

 顧客満足をもう少し深く見ていくと、商品やサービスに対して顧客が満足したかどうかは、「期待水準」「知覚水準」がどれほど一致したかどうかによって決まると考えられています。

「期待水準」は顧客が事前にその商品やサービスから得られると期待していた水準のことを言い、「知覚水準」は実際に商品やサービスを体験して得られた水準のことを指します。

 つまり、「知覚水準」が「期待水準」を上回れば満足、逆ならば不満足となります。また、「知覚水準」には商品やサービスを主観的に評価することで表れる「知覚品質」とコストパフォーマンスを表す「知覚価値」があり、顧客がこれらを総合的に判断した結果、満足または不満につながるのです。

 仮に顧客側が満足を得られると、友人や家族などにその製品やサービスを薦めたり、ブログやSNSなどで紹介したりするなど、いわゆる「口コミ」が発生します。この口コミによって、新たな顧客を生むことは多々あります。

 一方で、不満足を感じた場合には、口コミでネガティブな感想が大きく広まることも考えられます。場合によっては企業に対して「苦情」という形で伝わることもあります。顧客を失う恐れもありますが、ネガティブな意見を改善することができれば、「顧客満足」に変えることも可能となります。

顧客満足度を測る指標の種類

 顧客満足度を測定する指標は複数あり、何をKPIとし目標に置くかによって、その指標も変わります。ここではいくつかの指標の特徴と違いを解説していきます。

オリコン顧客満足度

 調査会社のオリコンが実施している「オリコン顧客満足度ランキング」で利用されている満足度指標です。約200の産業ごとに調査する満足度項目が最適化されており、業界特有の満足度因子を測定でき、同業他社との比較がしやすいことが特徴です。

JCSI(日本版顧客満足度指数)

 日本生産性本部が調査する満足度で、アメリカのACSIの日本版です。すべての業界が同じ項目で調査されているため、業界を横断した比較がしやすいことが特徴です。

NPS(ネットプロモータースコア)

 NPSは、正確にいえば他者推奨意向を算出するものです。顧客に対して「製品やサービスを他者にどの程度おすすめたいか?」という質問をし、「0から10」までの11段階で評価してもらいます。0~6点を批判者、9~10点を推奨者として、「推奨者の割合−批判者の割合」で算出されたものがNPSです。シンプルで分かりやすいのが特徴です。

顧客満足度を向上させるには? 考え方と具体的な取り組み

はしごを登る人

 顧客満足という言葉があたり前になりつつある昨今、顧客の「期待水準」はますます上昇し、以前ならば満足してもらえた商品やサービスでも、「こんなものだろう」と満足感が薄れることも少なくありません。

 そうしたなかで、顧客満足を得るためのヒントがあるとすれば、客観的な顧客満足度データに基づき、商品やサービスが顧客からどう評価されているのかを知ることは重要です。

 そこから、ターゲットを絞った商品企画や開発、サービスのカスタマイズなど既存の「期待水準」に当てはまらない新たな価値を創りあげることが、顧客満足、その先の「顧客感動」につながると考えられています。

 では、どのようにすれば顧客満足を高めていくことができるのでしょうか。以下のような取り組みを実践することが、顧客満足の向上において有効だと考えられます。

●顧客満足度調査(CS調査)で顧客の声を知る
●サービスコンセプトを明確にする
●表層機能で差別化を図る
●オペレーションを最適化する
●従業員満足度を向上させる
●ツールを導入する

顧客満足度調査(CS調査)で顧客の声を知る

 顧客満足の向上を実現するためには、まず顧客の声を知る必要があります。アンケートを中心に以下のような調査を実施し、顧客ニーズを可視化しましょう。

(1)自社の商品・サービスについて自社内で調査
(2)調査会社に依頼して調査
(3)第三者機関による公平・公正な調査

 なお、これらの調査には、それぞれにメリット・デメリットがあります。自社の目的に応じて、複数の調査を組み合わせるなどして、多角的に分析をすると良いでしょう。

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>顧客満足度調査(CS調査)の効果的な手法|指標やアンケート調査・分析のコツ

サービスコンセプトを明確にする

 顧客の期待値をマネジメントするためには、自社のサービスが「どのターゲット」に「どのような価値」を「どのように届ける」といった、サービスコンセプトを明確にしなければなりません。

 アパレル業界で高い顧客満足度を実現している、「西松屋」というベビー用品・子供服を販売する小売店を事例に考えてみましょう。

 郊外に立地する店内はベビーカーでもすれ違うことができる広さをとり、並べられた多様なデザインの服は、畳まれた状態ではなく、すぐ手に取って確認しやすいハンガー掛けになっています。また、スタッフが過剰に接客をしないスタイルをとっているため、ベビーカーで訪れる顧客も手を煩わせることがなく、じっくり店内を見ることができます。さらに、西松屋のスタッフも最小限の顧客対応で済ませることができる仕組みになっています。

 これにより、「サービス品質を高めながらコストを抑制する」という高収益化と高い顧客満足度を実現することができています。

表層機能で差別化を図る

 サービスコンセプトを明確にする際のヒントとなる考え方が、「本質機能」と「表層機能」です。「本質機能」とはそのサービスを享受することで当たり前に得られると認識している価値です。また「表層機能」とは当たり前ではないが、あると嬉しい付加価値です。

 本屋を例にとってみましょう。本屋の本質機能はシンプルで「本が置いてあり、レジで購入することができる」ことです。しかし表層機能はさまざまです。

 たとえば、「蔦屋書店」には、多くの場合スターバックス コーヒーが併設されており、買いたい本を試し読みできることに加え、顧客はスターバックスのサードプレイスとしての顧客体験価値を得ながら過ごすことができるのです。

 高い顧客満足度を実現するためには、そのサービスから得られる最低水準の便益を満たしつつ、表層機能において、いかに突出するかが重要になります。

オペレーションを最適化する

 サービスコンセプトのなかでも、企業側の努力によって改善できる余地が大きいポイントが「どのように届けるか」という業務オペレーションです。

 質の高いサービスを提供しようとすると、過度に分業化して人件費が増えてしまうということになりがちです。たとえば、「帝国ホテル」のようなラグジュアリーホテルであれば、ドアマン、受付、案内など、それぞれのポジションで人員を配置しており、顧客はそれに見合う対価を支払っていますが、ビジネスホテルで同じことをすれば経営が成り立ちません。また、顧客もビジネスホテルにはそうした対応を求めてはいないはずです。提供するサービスに適したオペレーションの「最適化」が必要だといえます。

 身近なところでは、ラーメン店や牛丼チェーン店の券売機の導入、回転寿司店で皿ごとに異なる価格を自動で計算してくれるシステムへの投資も、「顧客が求めていない価値」を簡略化する試みです。従業員の負荷も軽減され、後述する従業員満足度の向上にもつながります。

従業員満足度を向上させる

一致団結している人たち

 顧客満足を実現している企業や組織は、「従業員満足=Employee Satisfaction」(ES)を実現しているところも多いようです。従業員が適材適所で働き、労働に見合った報酬を得ることで、商品、製品、サービス品質の向上につながります。さらに、それによって顧客の満足につながり、顧客ロイヤルティが高まることで収益性も上がり、従業員もさらに満足する。こういった好循環が続くことは、企業としての理想型と言えるでしょう。

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>従業員満足度(ES)とは? 向上によるメリットや具体的な取り組み、企業の成功事例を紹介

ツールを導入する

 管理や測定を行うためのツールを導入することも効果的です。顧客満足度は1年に1回の健康診断のように測定するのが良いですが、日々のオペレーションを改善するためには、PDCAを回せるような環境が必要です。

 例えば、CRM(顧客関係管理ツール)やSFA(営業活動支援ツール)を導入することで、どのような顧客がいて、どのようなモチベーションなのか、何に興味があるのか、最後にいつコンタクトを取ったのかなどを把握することで、個別の顧客に最適化された提案やサポートができる可能性が高まります。

 また、簡易なアンケートが可能なアンケート調査ツールも存在する。個人情報などの取り扱いやセキュリティの確認は必要だが、「Googleフォーム」、「Questant」、「SurveyMonkey」など無料の範囲でも使用できるツールも多くあります。

顧客満足度の向上を実現している企業の事例

 オリコンでは、第三者の立場で顧客満足度調査を実施しています。同調査のなかでも高い評価を得ている企業の事例を紹介します。

事例1.住友林業ホームサービス

 マンション売買等の不動産仲介業を手掛ける、住友林業ホームサービスは、「仲介品質を上げる」という視点で顧客と向き合い、社員1人ひとりの「人間力」を高めることで、他の大手企業をしのぐ満足度の高さを実現しています。

 同社は“人財(人材)”を基盤とした体制づくりを徹底。トップ営業マンの成功事例や新入社員の悩みごとなどを掲載した冊子等を作成し、全社員に共有することで、スキルアップや社員間のコミュニケーション促進し、サポートしています。

 顧客満足度と密接な関わりを持つ、従業員満足度の向上にも目を向け、業界内で初となるフレックス制度の採用、育児休暇や評価制度の変更などを実施しました。営業成績を最優先ではなく、従業員の能力やESを高め、顧客にきめ細かなサービスを提供している点が、高い満足度につながっていると言えます。

>関連記事:住友林業ホームサービス、顧客満足度No.1の舞台裏

事例2.株式会社ブラス

 続いて前項でも例に挙げた、ハウスウエディング事業を展開する株式会社ブラスの取り組みについて紹介します。

 同社は、1990年代の時間や効率を重視した、画一的なスタイルの結婚式に疑問を感じたことから、事業をスタート。「それぞれの新郎新婦にとって最高の結婚式を創る。」をポリシーに、顧客のニーズに向き合った独自のサービスを展開しています。

「完全貸切型のゲストハウス」や、ご案内から結婚式当日まで1人のプランナーが担当する「ウエディングプランナー一貫制」、披露宴会場から調理パフォーマンスが見える「オープンキッチンスタイル」など、直接の顧客だけではなく、出席者も楽しめ、ここで式を挙げたいと思わせる工夫が凝らされています。

 スタッフOB会や結婚式を挙げたカップルが集まるイベントなど、地域特化型の企業ならではの工夫で、従業員、顧客との一体感を創出し、顧客満足が売上を拡大していくサイクルが仕組み化されています。

>関連記事:ブラス・河合達明社長が語る「最高の結婚式」の原点

顧客満足度調査の方法とステップ

目的を整理する

 顧客満足度を測定する上で欠かせない施策が、顧客満足度調査です。調査方法はさまざまあり、目的や予算によって使い分けることが重要です。

 例えば飲食店では、テーブルに任意のアンケート用紙が置いてあることがあります。接客や店の清潔さなどの関して消費者の記憶があるうちにアンケートを書いてもらうことで、鮮度がの高い正確な情報を獲得することができます。しかし、紙のアンケートは1つ1つの記入内容を保存や管理するのに不便であったり、俯瞰的に見ることが難しかったりします。昨今では会員アプリなどデータ分析も可能な形で満足度調査をしている企業も多くなっています。

 インタビューによる満足度調査は、マーケティングリサーチ同様に、消費者が抱えている自社サービスへの本当の期待を深堀することができます。ただし多くのデータが取得できなかったり、品質がインタビュアーのスキルに依存してしまうデメリットもあります。

 このように、満足度調査の方法は多様であり、満足度調査をすることによって何をしたいかという目的を整理することが大切です。

調査方法を決める

 調査方法は大きく分けて2つあり、1つ目は記入式のアンケート調査で、2つ目はインタビューによる調査です。

1.アンケート調査
 アンケート調査は、紙またはWEBを利用した調査方法があります。特徴は定量と定性の情報を収集できる点です。満足度を5段階や10段階などで評価してもらうことで十分な回答数が得られれば、自社のサービスの平均的な満足度評価が把握できます。総合満足度と、細分化した項目(例えば接客、店舗の清潔さ、など)を取ることで、どの項目が総合満足に影響するのかを分析することができます。また、定期的に数値の推移を追ったり、他社についての満足度と比較したりすることで改善点を発見しやすくなります。

2.インタビュー調査
 インタビュー調査は、消費者と直接コミュニケーションをとる調査方法です。特徴は定性的な情報を詳しく具体的に収集できる点です。アンケート調査では定性的なテキスト情報も収集できますが、簡易な回答になりがちです。インタビュー調査では質問に対する答えに対して、追加で質問をすることができるため、消費者も気が付いていなかったポイントが浮かび上がってくることがあります。

調査結果を分析する

 調査した結果をそのまま眺めるだけでは施策に落とし込むことはできません。調査結果を集計、分析することでサービス改善につなげることができます。

1.満足度の集計・比較・分析
 消費者ごとの満足度の回答が得られたら、結果を集計して分析を行います。総合満足度と細分化された項目を比較して、何が総合満足度に影響しているのかを相関分析したり、特定のセグメント(例えば20代、30代などの年齢別)に分解してセグメントごとに満足の違いがあるのかを分析します。

2.テキストマイニング
 定性的なデータもテキストマイニングという手法で分析が可能です。例えば頻出するワードを浮き彫りにして、満足度や不満に影響している可能性を探ります。定性情報だけではなく、定量的な数値データと見比べながら分析するケースが多いです。

顧客満足に関するよくある質問

売上や利益につながるの?

 ハーバード・ビジネス・スクールののジェームス・L・ヘスケット教授は、顧客満足、従業員満足、企業の収益の関係が連鎖するサービス・プロフィット・チェーンを提唱しています。これによれば、顧客満足の向上が利益につながる一方通行の関係ではなく、利益が従業員の報酬につながり従業員の満足を向上や設備投資を行うことで、サービスや接客の品質が高まり顧客満足に影響を与えます。顧客満足は再購買などロイヤルティにつながり、この一連の連鎖関係が総合的に企業の収益を生み出すのです。

サービスプロフィットチェーンのイメージ

サービスプロフィットチェーンの考え方

カスタマーサクセス(CS)とは違うの?

 同じくCSと略され、また近しい関係ではあるため勘違いやすいのですが、顧客満足のCSとは異なります。カスタマーサクセスは主にSaasビジネスで重視される行動で、企業側が顧客に能動的にアクションを行うことで解約率(チャーンレート)を低減したり、アップセルやクロスセルといった購買単価の向上を図るものです。またカスタマーサポート(CS)とも異なります。カスタマーサポートはコールセンターなどが顧客からの電話・メールでの問い合わせやクレーム対応する受け身のアクションです。それぞれ、顧客満足に影響する活動ですが、意味が異なるので使い分けが必要です。

デメリットは何かある?

 顧客満足との向き合い方を短期的に見てしまうと、「利益」を上げるという企業としての経済的な目的を達成できなくなる可能性があります。例えば今まで1000円で販売していた商品を500円で販売していたとします。顧客は嬉しいと感じ、短期的には満足度が高まる可能性があります。しかし、企業は健全な収益を挙げられていない可能性があり、品質の低下につながるかもしれません。CS経営は長期目線が重要で、付加価値を上げられるような満足度の向上を目指すことが求められます。

オリコンの顧客満足度調査データとは?

 さまざまなサービスの満足を情報化することが目的のオリコン顧客満足度では、実際に各商品やサービスを利用したユーザーのアンケートから多項目にわたる満足度を調査し、収集したデータの分析および提供を独自に実施しています。調査結果は、「オリコン顧客満足度ランキング」として公表し、消費者に還元することで、社会全体の暮らしの満足度向上に貢献することを目指しています。

 また、長年にわたって音楽ランキングをリードしてきたアイデンティティを基に、第三者の中立的な立場で、精度の高い顧客満足度指標を作成しています。 さらに、全サービスの調査データは、さまざまな形でレポートや資料として提供可能です。調査データを活用することで、自社と競合を分析し、差別化・訴求ポイントを明らかにすることができます。

 詳細な資料やデータ内容、活用方法は下記を参考にしてください。

>オリコン顧客満足度が調査を行っている業界・ジャンルについて

>【活用事例】パナソニック ホームズや東京海上日動キャリアサービスなど、調査データの活用企業インタビュー